『否定しない言い換え事典』林 健太郎フォレスト出版
8月10日(月) 18:00
皆さんは誰かと話していて、ついつい否定で返してしまうことはないでしょうか。円滑なコミュニケーションのためには、できるだけ相手を頭ごなしに否定しないことが大切だとわかってはいても、「じゃあどんなふうに言えばいいの?」と考えると、うまく言葉が出てこないという人も多いかもしれません。
そこで今回紹介するのが、林 健太郎さんの著書『否定しない言い換え事典』。つい言ってしまう否定言葉について、「否定しない言葉」に言い換える方法と実践的なフレーズを紹介した一冊です。
林さんによると、「否定はほぼ脊髄反射」だといいます。聞いた言葉や相手の行動に対して、「いや、それは間違っているよ」などと反射的に言葉を返してしまうことが多いため、まずはひと呼吸置いて、頭のなかに浮かんだ「否定的な言葉」を整理し、「否定にならない言葉」に変換してから相手に伝えることが大切になります。そして、「否定しない言い換え」は、「1、反転させる」「2、視点を変える/増やす」「3、承認する」「4、相手の内情を聞く」「5、可能性を提案する」の5つの原則に基づいて考えるのがよいそうです。
その実例を詳しく紹介しているのが、本書の第2章以降。これを読むと、日常生活や家庭、職場などにおいて、「否定しない言い換え」が役立つ場面が多々あることがわかります。
たとえば、部下が何かしらのミスをしたとき。「なんでこんなこともできないの?」「何度も注意したよね」などと、つい口から出そうになりますが、ここで大事なのは「相手の心理的安全性をいたずらに下げることなく、次の行動をどう考えてもらうか」という視点です。この場合、本書で紹介されている効果的な方法は「まずは話を聞かせてくれる?」「わかった。次からどうすればうまくいくと思う?」という問いかけです。
「過去のミスを繰り返し責める言葉よりも、これからどうするかを考えさせる言葉のほうが、否定になりにくく、結果として建設的なコミュニケーションになる」(本書より)
ほかにも、上司から無理な指示を受けたときは、「それは無理です」「ちょっとできません」ではなく、「ひとつ相談(提案)があるのですが、いいですか?」。子どもがなかなか宿題をやらないときは、「なんでやらないの、早くやりなさい!」ではなく、「いつやる予定?」。パートナーとの家事分担でもめたときは、「全然手伝ってくれないよね!」ではなく、「これを一緒にやってくれると助かる」といった具合です。解説を読むと腑に落ちる言い換えばかりで、どれも今日から試せる内容です。
個人的に素敵だと思ったのが、第6章に「自分自身を否定しない言い換え」も載っている点。「どうせ自分なんて......」は「自分はまだ成長の途中だ」、「失敗したら終わりだ」は「失敗も経験のひとつ」というように、自分に向けた否定的な言葉の言い換え方も紹介されています。こうした言い換えを取り入れることができれば、自己肯定感が高まり、毎日をポジティブに過ごすことができそうです。
林さんによると、まずは10回の会話のうち1~2回程度、否定しない言い換えをすることができるだけでも、「この人とは話しやすい」という印象を積み重ねることができるそう。周囲の大切な人たちとの会話を今より少し柔らかくして、よりよい関係性を築きたいと考えている皆さんに、ぜひともおすすめしたい一冊です。
[文・鷺ノ宮やよい]
