瀬戸康史が主演を務め、有村架純と共演する舞台『キュー』が、11月~12月に東京・大阪にて上演される。白井晃の演出のもと、3つの時間軸が交錯する複雑な世界観の本作で9年ぶりに共演を果たす瀬戸と有村に、本作、そして舞台で演じることの魅力を聞いた。
【写真】瀬戸康史&有村架純、大人な佇まいの2ショット!
◆演出家・白井晃の存在が出演の決め手に
芥川賞作家・上田岳弘による長編小説『キュー』は、テクノロジーが発達し続ける人間社会の中で、「人間とは何か」「“わたし”とは誰なのか」を問いかける作品。第二次世界大戦期、現代、そして700年以上先の未来という3つの時間軸が交錯し、AIやネットワーク技術の進化によって、現実と情報の境界が曖昧になっていく世界の中で、人間の記憶や存在の意味を描き出していく。
そんな壮大な物語を白井晃が舞台化。原爆投下の記憶を内包する少女との出会いを通して、戦後の日本を生きる私たち人間が、どこから来て、これからどこへ向かうのかという問い(=Question)を、現代を生きる我々に投げかける。瀬戸、有村のほか、石田ニコル、井内悠陽、加治将樹、田中哲司ら実力派キャストが顔をそろえる。
――本作のどんなところに興味を惹かれて出演を決められましたか?
瀬戸:まず第一に演出が白井さんというところです。10年くらい前に一度ご一緒したことがあって(『マーキュリー・ファー Mercury Fur』)、それからお会いするたびに「また何かやりたいですね」とお話していたのがやっとこの作品で叶います。
それからこの『キュー』の原作を読ませていただいたのですが、難しいんですよ。でも、難しくて分からないって思っている自分がすごく悔しくなったと同時に、読んだ時に何かこうスッキリするみたいなところもあって。その後に上田さんと白井さんが上演台本にしてくださったものを読むと、とても分かりやすくて「あぁ、なるほど」と思ったんですよね。稽古はまだまだ先ですが、一歩一歩前に進んでいる感じで、ぼやけていたものが徐々に鮮明になっていっている感覚があります。
有村:最初に企画書とプロットをいただいて読ませていただいたのですが、ちょっと分からなさすぎて(笑)。でも、分からないからやらないじゃなくて、一度白井さんにお話を聞いてみようと思ったんです。
白井さんには12年前に『ジャンヌ・ダルク』という作品でお世話になって以来だったのですが、白井さんは熱量の高いお方なので、「現在の世の中を見て危機感みたいなものを覚えるし、今は何か節目の時なんじゃないかと思う」とすごく熱く語ってくださいました。お話を聞いていくと、この物語が言いたいことや、一貫しているテーマみたいなものが見えてきて、そういう物語なのか、なるほどと思えました。
ただ、私はまだ舞台は3回目ですし、そこで3役をやらせていただくというのが、自分の中では荷が重い部分もあるかなとも思ったのですが、瀬戸さんもいらっしゃるし、白井さんの演出だし、身を投げてみようと思い挑戦させていただくことになりました。
――まだお稽古開始前ですが、今回演じられる役どころについて教えてください。
瀬戸:僕が演じるのは、立花徹という産業医です。仕事はしてるんだけど、世の中に流されて、なんとなく生きている人の象徴のようなキャラクターですね。物語も立花の視点を軸に進んでいくので、観劇してくださる方も彼目線で観る人も多いのかなと思います。僕自身も、「自分にももしかしたらそういうところがあるかもしれない」と感じる瞬間があるので、とても共感しやすい役です。
そんな彼が時を超えたり、いろんな人と関わったりすることで、どう成長して、どういう考え方を見つけ、どう行動するのかという彼のストーリーでもあります。
――有村さんは3役を演じられると伺いました。
有村:厳密にいうと、戦時中の椚節子、現代の38歳の渡辺恭子と高校時代の渡辺恭子、そして未来の人造人間・女型のRejected Peopleを演じます。
渡辺恭子は、椚節子の記憶を持った女性で、いろんな人とコミュニティーを作ってきたかと言われるときっとそうではなく、自分独自の世界を持ちながら、いろんな人を俯瞰して達観して生きてきたような人の印象があります。
――「私の中には第二次世界大戦が入っているの」というセリフは衝撃的ですし、役作りも難しそうです。
有村:実は輪廻転生する役どころが3度目で、「また私、前世の何かがあるんだ」と思いました(笑)。これはもしかしたら何かあるのかもしれないなとちょっとポジティブに受け取っています。
◆9年ぶり共演の瀬戸&有村お互いの印象を告白
――お二人にとって白井さんはどんな方ですか?有村さんは初舞台の演出家が白井さんでしたよね。
有村:そうなんです。私は観客席に背中を向けて稽古をしてるところから始まっているので(笑)。「有村くん!」とまずそこを怒られた思い出があります。白井さんは、ストイックですし、貪欲で、向上心の塊みたいな方ですね。
――掛けられた言葉で何か印象に残っているものはありますか?
有村:私が出演した『ジャンヌ・ダルク』の初演を、その4年前に堀北真希さんがやられていまして、「堀北くんがやっていたジャンヌは高貴なジャンヌだったけど、有村くんはすごく地に足の着いた、1人の少女が村を変えようと頑張っている庶民派ジャンヌだったよ」と言ってくださったのが、すごくうれしかったです。初めての舞台だったけど、経験も少ない自分がそういうふうに自分なりに見せることができていたんだと自信を持てたのを強く覚えています。
――瀬戸さんにとっての白井さんはいかがですか?
瀬戸:白井さんはちゃんと叱ってくれる人ですね。それはストイックが故にというところはあると思うけど、俳優に愛がないと絶対に怒れないじゃないですか。白井さんのおかげで僕は今も俳優をやれているというくらい、僕の俳優人生を変えてくれた人です。
白井さんは僕の余計なものを全部削ぎ落としてくれたんです。変なプライドとか、舞台でどう動こうとかそんなの芝居には関係ないじゃないですか。でもそんなことばかり考えていたら、「もう自分が思うままにとりあえずやりなさい」と。
有村:頭で考えるんじゃなく。
瀬戸:そう。それを教えてくれた人なんです。
「芝居だけど芝居するな」とも言われました。当時は意味が分からなかったんですけど、段取りとかいろんなことを含めて馴染めということなんだろうなと思って。それは今もいつも頭の片隅に入れて仕事をしています。
――お二人は映画『ナラタージュ』以来、9年ぶりのご共演となります。お互いにどんな印象をお持ちですか?
瀬戸:僕の中にはピュアで真面目なイメージがあります。それこそ、ストイックですよね?
有村:昔よりはちょっと肩の力が抜けるようになったと思います。
瀬戸:それは多分、いろんな作品を経験して、いい意味での余裕が出てきたんじゃないですか。
有村:瀬戸さんは、飾り気がないというか、本当にずっとこのまま。佇まいもそうですし、雰囲気とか全然変わってなさすぎて、9年前とはとても思えないです。
長く一緒の時間を過ごすのは今日が久しぶりなんですけど、ちょっと時間が空くと関係性がリセットされることもありますが、全然リセットされていなくてあの頃のままだと感じました。
◆瀬戸と有村にとって舞台とは?
――お二人は映像も舞台も両方挑戦されていますが、舞台と映像の違いはどんなところに感じられますか?
瀬戸:映像でも舞台でも、お芝居するというところでは割と一緒なのかもしれないと思っています。劇場によって声をちょっと大きくしたほうがいいなとか、ここの立ち位置だと見切れるなとか考えることはありますけど、僕はあまり自分の中で切り替えているみたいなことはないですね。
有村:舞台は使う部分がプラスアルファという感じがしています。瀬戸さんもおっしゃるように、ベースは心を使いながら動かしていくものですけど、空間の使い方や、3人の芝居だったら狭い空間でのやり取りでいいところを、さらにその奥にまで届けなきゃいけないのでエネルギーの放出の仕方をプラスするといいますか。自分が持ってる可動域を広げるというか、アニメで言うとなにかすごいビームがいっぱい出るようなイメージ(笑)。
瀬戸:なるほどね。そんなイメージで芝居してるんだ。舞台上で「あ!今、ビーム出てる!」って感じるのを楽しみにしていよう(笑)。
――お二人にとって舞台とはどんな存在ですか?
瀬戸:ものすごい筋トレみたいな感じですね。考えるとか想像するということの楽しさと、何もないところからみんなで作っていく楽しさ、そこにはもちろん苦しみもあるんですけどやめられない。
――有村さんは「舞台への挑戦を続けていきたいと考えていたタイミング」だったとコメントされていましたが、それは何かきっかけがあったのでしょうか?
有村:単純に自分の技量をもっと上げたいと思ったんです。
自分にとって舞台とはっていうのは、私にはまだ語れるものがないのですが、前回出演した舞台『友達』は、加藤拓也さんの演出で、加藤さんの頭の中を1回覗いてみたいと何度も思った稽古期間でした。
「加藤さんが書かれる台本には全部裏台詞があるから」と言われて、その通りに言っちゃいけないんだ、このセリフの思惑はなんだ、と紐解いていく作業がすごく難しかったんですけど、舞台ならではの“イコールにならない”何か複雑な魅力を感じました。
◆2人の前世は?
――今回、共演者の皆さんも個性的な皆さんがそろわれています。
瀬戸:有村さんや哲司さん、井内に加治さんと共演経験のある方もいるので心強いですね。哲司さんとは舞台をご一緒するのは初めて。哲司さんの表現力って、映像で観るよりも舞台で観るともっと大きく見えるんですよ。その不思議さってなんなんだろう?と気になっているので、稽古を通して探ってみたいと思います。
有村:届けようってビームが出てるからかもしれない(笑)。
瀬戸:確かに!(笑)
有村:今回は人数も少ないのでアットホームな稽古場になりそうですよね。
――作品では「AI」もキーワードとして登場しますが、お二人は日常生活でAIを活用されていますか?
有村:体調がちょっと変なんだけどどうしたらいい?とか人に聞くまでもない質問を聞いたりしたことはあるんですけど、普段はそんなに使わないですね。
瀬戸:絵をデジタルで描くので使ってるといえば使ってるんですけど、何かお話したり、意見を求めたりみたいなことはやってないです。
――この機会に触れてみようというのは…?
瀬戸:興味はあります。何を聞けばいいんですかね。今こういう気分だから、今日夕飯どうしたらいいかな?とかかな。まだ僕のことを何も知らない状態からどんどん学習していくんですよね。何も知らないころはなんて答えてくれるんだろう?
有村:家具などの写真を撮ったらお家のレイアウトをしてくれるって聞いたことがあって。そういうのをデザイナーさんに発注しなくてもやってくれるんだったら、お金がかからなくて便利かもしれない(笑)。
――もう一つ。「前世」というキーワードも出てきますが、お二人は前世を占ってもらったことはありますか?
瀬戸:2回ぐらいあります。若い頃はブルガリア人って言われました。最近は僧侶(笑)。
――言われてみて、「あ!」と思い当たる節は…?
瀬戸:まったく(笑)。ブルガリアにどこが繋がるのか分からないです。
有村:私は占ってもらったことはないんですけど、なぜか昔から北欧がすごく大好きで。どうして好きなのか分からないんですけど、なぜか好きなんです。スピリチュアル的な思考で言うならば、何かあるのかなって思っています。
(取材・文:渡那拳写真:高野広美)
舞台『キュー』は、11月15日~29日東京・東京芸術劇場プレイハウス、12月4日~6日大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演。
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