(写真撮影/片山貴博)
8月7日(金) 7:00
2026年7月11日・12日の2日間、東京ベイブリッジを真正面に望む東京湾岸の絶景スポット「晴海ふ頭公園」で、約2万1000人が参加して「晴海ふ頭公園盆踊り大会2026」が開催されました。
主催したのは、公園に隣接する居住人口約1万2000人の巨大な街「HARUMI FLAG(晴海フラッグ)」(東京都中央区)の「HARUMI FLAG自治会」。近隣町内会や地元行政・中央区との連携、併せて交通、美化、防災といったさまざまな課題を解決する活動などを行い、HARUMI FLAGのコミュニティ形成に取り組む、20数名で役員を務める住民組織です。盆踊り大会は昨年2025年7月に次ぐ2度目の開催。今年は出店数や協賛企業を増やすなどスケールアップし、大成功のうちに幕を閉じました。
HARUMI FLAG自治会が発足してまだわずか2年。にもかかわらずこうした大きなイベントの運営実績があるほか、防災、防犯、季節行事などさまざまな取り組みにも積極的に挑んでいます。HARUMI FLAG自治会はどのような活動を行い、成果をあげているのでしょうか。自治会長の荒瀬勇太(あらせ・ゆうた)さんに取材しました。(取材日:2026年7月1日、追加取材7月13日)
HARUMI FLAGは2021年の東京オリンピック・パラリンピックで選手村として使われた、中央区晴海5丁目の土地を再生した大規模複合プロジェクトです。東京ドーム約3.7個分に当たる約18haの広大なスペースに、4つの住宅街区と1つの商業施設棟「三井ショッピングパーク ららテラス HARUMI FLAG」、計24の住宅棟(店舗棟含む)を配置。さらに、保育施設、介護住宅、マルチモビリティステーション、公園、小・中学校などもそろう、まさにひとつの街です。2024年1月に入居が開始され、同年5月に正式に街開き。現在、約5000世帯が暮らしています。
通常のマンション同様、HARUMI FLAGにも管理組合がありますが、自治会はそれとは異なる組織。前者が建物の維持管理というハード面を担うのに対し、後者の自治会は、住民が主体となり、行政や周辺地域、周辺自治会との間の窓口としての役割や地域コミュニティの形成や親睦を深めるソフト面の充実を目指して活動しています。荒瀬さんに自治会立ち上げの経緯をうかがいました。
「HARUMI FLAGの4つの住宅街区のうち、分譲マンション棟である『SUN VILLAGE(サンビレッジ)』『PARK VILLAGE(パークビレッジ)』『SEA VILLAGE(シービレッジ)』の3つの管理組合。そして賃貸マンション棟の『PORT VILLAGE(ポートビレッジ)』と商業棟の『三井ショッピングパーク ららテラス HARUMI FLAG』の建物所有者。この“総計5者”が会員となって構成されるのが、HARUMI FLAGの自治会です。
中央区および開発者が協議を行い設計し、住民向けの自治会役員を募集しました。そこに集まったのは24名。2024年7月に設立を宣言することで、自治会が発足されました。役員内で行われた会長選では、僕が『新しい街、新しい伝統』というスローガンを掲げて会長に就任し、今に至ります」
その後、役員の入れ替えはあったものの、現在も体制は24人のまま。役員はできるだけ特定の住宅街区に偏らないようにしているそう。
「役員になるには、まずオブザーバーとして月1回の自治会役員会に参加し、マッチするようであれば就任いただくプロセスです。正式就任は年1回の総会での承認が必要になります。活動の財源は、会員からの会費で、1年総額約730万円になる自治会費と、中央区からのコミュニティ業務委託としていただく年約100万円、計約830万円です」
規約では、会長の任期は2年で最大2期まで。年代は30~40代の現役世代が中心。会長は立候補制であり、荒瀬さんは自治会設立時から今に至るまで自治会長を務めています。立候補した動機は、「せっかくHARUMI FLAGという話題の新しい街に暮らすのだから、何らかの貢献をしたかった」とのこと。
「ここに入居する前、勤務先で従業員を代表して会社の上層部と交渉する経験をしまして、パブリックな取り組みに協力することは、人生において有意義な活動なのだと認識していたんですね。
また、そのころ、ハーバード大学の論文(「ハーバード成人発達研究(Harvard Study of Adult Development)」)で見た、幸福度と相関が高いものは、年収、地位、学歴といったものではなく『今あなたが属するコミュニティの中で頼り頼られる存在であると感じること』というくだりに感銘を受け、『これってまさに自治会だよ!』と感じたことも自治会長としての活動を継続している理由のひとつです。
今は、盆踊り大会直前ということもあり、平均すると1日2時間くらい自治会活動に時間を充てていますが、自分の幸福度を高める直接的な活動だと考えていて、苦にしていません」
HARUMI FLAG自治会のこれまでの活動についてうかがいました。
「役員からHARUMI FLAGの課題や問題点と感じているトピックを挙げてもらい、それに特化したプロジェクトチームを立ち上げて取り組むスキームを導入しています。
ただ、その課題、問題点を解消するに当たり、
① リーダーを担う人がいるか
② 具体的にそのプロジェクトが完了するのはいつが目標で、どのような状態なら完了と言えるかを明確にできるか
③ ②を達成するために、1カ月先はここまで、半年先はここまで、といった短中期的なToDoリストを作成できるか
以上の3つが明確になっていないものは、プロジェクトの遅延や、継続可能性の低下が考えられるため採用しないことにしています。これは僕個人の仕事の領域で経験したことに基づいて提案し、自治会で運用されています」
現在、HARUMI FLAG自治会で進められているプロジェクトは約10とのこと。
「防犯、防災、美化、交通、住民間コミュニケーションの促進、駐車場・駐輪場不足問題、季節のイベントといったところが代表的なプロジェクトです。
例えば防犯では、2026年6月に、人の往来が多い街の主要ポイント2カ所に防犯・交通カメラを設置しました。総額約200万円でしたが東京都の助成金を活用して、自治会負担約10万円で設置でき、直近の大きな成果となりました」
多彩なプロジェクトが順調に進んでいるのは、役員全員がエネルギッシュで、なおかつ多様な才能、経験があり、それを存分に活かしてもらっているからこそだと荒瀬さんは言います。
「例えば弁護士資格を持っている人、IT企業経営者、保険会社勤務、マーケター、アセットマネージャー、ファイナンスのエキスパートなどなど多士済々(たしせいせい)です。自ら仕事を動かしている人も多いので、HARUMI FLAGという資産性のある街の価値向上という共通の思いを持ち、それぞれの得意分野や、興味関心の強い分野で活動いただけていると思っています」
タスクの山にくじけず、ゼロから築いた伝統の土台では、いよいよHARUMI FLAG自治会主催の「晴海ふ頭公園 盆踊り大会」について。まずは昨年2025年7月に第1回を始めた理由をうかがいました。
「結論から言えば、“コミュニティを世代を超えてつなげていくため”です。親子で楽しめる、年に1回多くの住人が集まれる、役員、ボランティア、協賛企業など全員で同じ目的に向かって汗をかける、といったたくさんの魅力がある“盆踊り大会”は、住人、自治会役員がしっかり縦につながれる絶好の機会です。防災、防犯、美化などももちろん大切ですが、ここに盆踊り大会が加われば、仕事は増えるけれど、やはりやりがいもあるだろうと」
とはいえ、昨年はすべてが初めてだっただけに、とまどうことも多かったそう。
「これは今だから言える話です。2025年は7月12・13日開催だったのですが、7月に入ったころ『いっそのこと大雨で中止にならないかな……』と考えてしまうくらい不安でした(笑)。2月くらいから準備を始めなければと思っていたのですが、結局着手できたのは3月で、協賛企業を集め始めたのは4月。その時は屋台を出せるかまだ見えていなくて、晴海ふ頭公園の真ん中に盆踊りのやぐらを組んで、その周囲にキッチンカーを配置するくらいが無難な線かな…と弱気になっていたんです。事務局のサポートはあるものの、タスクがあまりにも多い上に、未経験の分野ばかりで作業が切り分けできず、スムーズに運びませんでした」
そんな時、コミュニティデザインの仕事に関わっている知人から助言を受けたとのこと。
「『第1回目がショボいと続かないよ』とハッパをかけられまして、やっぱりそうだよなと。改めて気を入れ直して、保健所との折衝、電源の確保、企業への声掛け、来場者の誘導・整理、駐輪場、ベビーカー置き場、屋台のレイアウト、やぐらを設営するためのダンドリ、ボランティア募集、ゴミ処理の仕方、などなど、さまざまなタスクに臨みました」
画期的なPR配信実施!SNS世代に響いた認知拡大策その結果、第1回の盆踊り大会は、定番の屋台グルメから縁日のゲームブースまで30超の屋台が出店、2日間で約2万人が訪れる大盛況に。来賓の中央区長から「HARUMI FLAGの全住人がここに来ていますか?」との挨拶が飛び出すほどだったとか。
「本当に皆さん良い笑顔で楽しんでくださいまして、僕ら自治会もやって良かったという達成感と『これからも続けていこう』というモチベーションを得ることができました。2回目の今年は、第1回で得た運営のノウハウ、反省点、課題などをふまえて、“チャレンジ”を試みます。HARUMI FLAGの住人サークルの皆さんに出店してもらうのです。アルコール販売はしない、保健所の指導によりひとつの屋台で異なる二つ以上の商材を売らない、といった条件のもと食べ物の販売もOKとします。昨年、1時間待ちの屋台もあったりして皆さんにご不便をかけてしまったので、前回の屋台数30から大幅に増やして今年は47にする計画です。第3回目以降も、何かしら新しいチャレンジを毎回試みて、年ごとに盆踊り大会をブラッシュアップさせていきたいと思っています」
そして、HARUMI FLAG自治会のもう一つの工夫は、第2回盆踊り大会の告知に国内大手のプレスリリース配信サービス「PR TIMES」を使ったこと。PR TIMESは、メーカーや企業、団体などが新商品、新サービス、イベントなどの新情報をメディアやエンドユーザーに届けるプラットフォームです。自治会や町内会のイベント告知、集客の手段としては、チラシ配布、SNS活用が一般的。マンション自治会主催イベント告知でPR TIMESのようなメディアを使う例はほぼありません。
「HARUMI FLAGの盆踊り大会の知名度をより高めていきたいという思いでこのプラットフォームを使ったところ、数カ所から情報提供や出店、グッズの無償提供などの打診があり、効果を実感しました。PR TIMESの担当者によると、盆踊り大会リリース後2~3週間で1300ビュー、PR TIMESが提携している多数の大手Webニュースサイトへの掲載・転載は65サイトだったとのこと。通常は300ビューくらい、掲載も普通は20未満だそうで、かなりの成果があったと思います。また、スマホとPCの閲覧割合は、通常は9対1でほとんどPCなのだそうですが、盆踊り大会はスマホの割合が3割以上だったそうです。一般のユーザーさん同士が連絡し合って見ていただけたようで、 “HARUMI FLAG”のブランド力を再認識しました」
41名のボランティアの「役に立てた実感」が今後の糧にそして迎えた2026年7月11日・12日の第2回 晴海ふ頭公園盆踊り大会は、冒頭で述べたとおり2日間で約2万1000人が訪れ、大盛況となりました。終了後、改めて荒瀬さんにイベントを振り返ってもらいました。
「自治会役員や運営メンバーに対して、HARUMI FLAGの住民の方々から『昨年よりもさらに規模が大きくなり、子どもたちが本当に楽しそうだった』『準備から片付けまで本当にありがとう』といった感想や、温かいねぎらいのお言葉を多数いただきました。また、一般の来場者からも、『ロケーションが最高で、また来年も絶対に来たい』『昨年より出店数が増えていて、行列が少し解消していた』といったうれしいお声をいただきました。
さらに、盆踊り大会への出店ではなく、純粋な運営ボランティアとして多くの住民の皆さまにご参加いただけたことも大きな収穫でした。最終的に41名の方々におそろいのポロシャツを着ていただきまして、事前設営支援、会場内櫓(やぐら)周辺の案内、ゴミステーションでの分別サポート、駐輪場の整理、事後片付け支援などを担ってもらいました。一部の方からは『役に立てた実感があり、とても満足している』といった声を頂戴しまして、今後の自治会活動にプラスの効果をもたらすはずだと考えています」
集客については、先述のPR TIMESに加えて、6月下旬のチラシのポスティングなどの事前広報活動が奏功したそう。
「想像以上の盛況で一部の店舗で待機列が乱れたなど、会場レイアウト上の課題も発生しましたが、2日目の朝にはボランティアの皆さんと協力して、手持ちの資材で可能な限りの動線整理を講じ、臨機応変に対策を講じることができました。一方で、機材の燃料補給に伴う一時的な営業中断の回避/ゴミステーションの処理能力向上/来場者ピーク時の安全な動線確保/猛暑対策の強化、といった課題も出てきたので、第3回に向けた重要な検討項目として、次回の運営へ確実に活かしていくつもりです」
自治会では今回「KPI」として、アンケートやシールを用いて「外部来場率」を確認しました。外部来場率、すなわち、HARUMI FLAGの外から晴海ふ頭公園盆踊り大会に来場した人の割合です。
「僕たちは、住民はもちろんですが、外部からもたくさんの方に盆踊り大会に来ていただき、街の認知度をさらに高めていくことを目標としています。大会に参加するために初めてHARUMI FLAGに来て『ここってこんなにきれいなマンションが建っているんだ!』『眺望が良くて公園もすばらしい、住みやすそうじゃない?』などと思ってくださる人を一人でも多く増やすことを志向しています。そういう人の数だけHARUMI FLAGの価値が上がることになりますからね」
結果はどうだったのでしょうか。
「外部からの来場者は約50%とかなり高い数値を示しました。中には港区の南麻布の方からいらした方もいて、口コミや事前の告知が広範囲に届いていることを実感しました。また、SNSに投稿された映像や感想からも、外部から多くの方が訪れてくださった形跡をはっきり確認することができました」
最後に今後の展望をお聞きしました。
「ゼロからのスタートだった第1回目は、大会を実施するにあたって必要なタスクを切り分け、それぞれにスタッフを配置して効率的に準備を進めることができず、非常に苦労しました。しかし第2回は初回の経験があったのでやるべきことが見えていて、WBS(Work Breakdown Structure作業分解構成図)をつくって抜け漏れを極力防止し、担当者を明確にして、精度の高いスケジュールに基づいて動くことができました。かなり“型”ができてきた感触があるので、第3回は今年よりもっとスムーズに、さらに内容を充実させて大会を運営できると思っています」
荒瀬さんが会長に就任する際、方針として掲げたスローガン、「新しい街、新しい伝統」。それになぞらえて、荒瀬さんはHARUMI FLAGの未来をこう表現します。
「大みそかの紅白歌合戦や春夏の甲子園大会を『来年もやるんですか?』って聞く人、いませんよね。伝統って“次があるのかどうか”を誰も気にしない、存続することが当たり前の無形の存在であり、僕は盆踊り大会も同じように継続させていきたいんです。僕たちの街がある中央区には、銀座とか京橋、日本橋といった伝統ある街が集まっています。HARUMI FLAGはまだまだ若い街ですが、少しずつ独自の伝統を根付かせていきたいですね」
●取材協力
HARUMI FLAG自治会
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