日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。実在したドイツ人女性の証言に基づいた驚愕の物語。***
『ヒトラーの毒見役』
評点:★3点(5点満点)
©2025 Lumière & Co. / Tarantula / Tellfilm / Vision Distribution
「ヒトラーの毒見役」の女性がたどった数奇な運命2012年、自分がかつて「ヒトラーの毒見役」として選ばれた女性グループの1人で、かつ唯一の生存者だと語ったマルゴット・ヴェルクの証言が世界を驚かせた。
というのも、これまでそのような「毒見役」の記録は見つかっておらず、また告白にあったような「毒見」のルーチンについての史料も存在しなかったからだ。
だが彼女の証言を否定する史料もまた存在しないし、ヒトラーのような人物に「毒見役」はつきものである。
ヴェルクの苦難は「毒見役」に抜擢されたことにとどまらない。
彼女はSSの将校に強姦され、大戦末期、からくもベルリンへ脱出するも逃亡者として追われ、侵攻してきたソ連兵の手に落ちて子供が産めない身体にされた。
95歳という高齢のヴェルクが痛ましい記憶を語った決意と、そこに至る逡巡は理解できる。
彼女の告白以外に史料や証言がないということは、彼女が語らない限り、それが永遠に「なかったこと」にされるということでもある。
本作はヴェルクの告白を基にした小説の映画化で、丁寧な時代考証に基づき「毒見役」のミクロな世界を描くことでマクロな「悪」を浮かび上がらせる。
血で汚れているのは本当は誰の手なのか?と問いかけながら。
STORY:1943年、第2次世界大戦末期。ベルリンの爆撃を逃れ、ポーランドの田舎町で戦地にいる夫の帰りを待つローザ。ある日、ローザらはヒトラーの毒見役に任ぜられ、苦悩に満ちた日々が始まる......
監督・脚本:シルヴィオ・ソルディーニ
出演:エリーザ・シュロットほか
上映時間:123分
全国公開中
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