現在「マンガSPA!」で保護犬との暮らしを描いた『The Dogfather ドッグファーザー』を連載中のつの丸氏と、昭和のおもちゃが現代のおじさんを救うギャグ漫画『令和のおもちゃ ウーピン』を連載する大石浩二氏。8月4日には、上記2作品の第1巻が同時発売された。
つの丸氏は『マキバオー』シリーズ、大石浩二氏は『いぬまるだしっ』など、『週刊少年ジャンプ』連載陣だったことでも知られる両氏に、過酷すぎる当時の週刊連載について振り返ってもらった。
出会いは10年前の手塚賞・赤塚賞
──お二人はかねてから親交が深いんですよね。先日も大石先生がXに投稿した、つの丸先生の写真がネットで大きな話題になっていました。
大石:
偶然なんです。新人ギャグ漫画の審査会である手塚賞・赤塚賞の受賞者と撮った写真をXに上げたら、諸事情で「消してくれ」と言われまして。だから偶然写り込んだつの丸先生をダシに「先生に許可を取らずに勝手に上げてしまったので消しました」と。
つの丸:
あれ、俺がクレーム入れたみたいになってるの!?
大石:
そしたら、「つの丸先生、こんなにイケオジだったの」って話題になっちゃって。
つの丸:
そうそう。5年に1回くらい、俺のイケメンが見つかっちゃうんだよね(笑)。
──お二人が最初に出会ったのは、いつだったんですか?
大石:
10年ほど前の手塚賞・赤塚賞の審査会です。僕は小学4年の頃から『モンモンモン』のファンだったので、まさかこうして話せる関係になるとは思っていませんでした。
つの丸:
俺は漫画を全然読まないから、審査員をやるまで大石の作品も知らなくて。
大石:
正直、つの丸先生は怖い人だと思っていたので、初対面は緊張しました。他の漫画作品につの丸先生本人が登場したことがあるんですが、チンピラみたいで。
ただ、会ったら全然怖くないし、気さくなんですよ。つの丸先生の声かけで、審査会後の飲み会が定番になり、一度、井上雄彦先生も来られましたよね。
つの丸:
俺、先輩でもがんがん誘っちゃうからね。
入院しても原稿を描く連載作家の怒濤の日々
──週刊連載時、どんな日々を過ごしていましたか。
つの丸:
忙しすぎて、全然記憶になくて。一日100歩も歩かない日もざらで、漫画のことしか頭になかった。
大石:
原稿を渡した瞬間、机の下や玄関で翌日の夕方まで寝ていることも多かったです。
つの丸:
当時は原稿を落としたら連載打ち切りだったから。
──アシスタントさんも手伝ってくれるんですよね?
つの丸:
ただ、俺が段取り通りに進められないと、アシスタントを待たせることになる。それもプレッシャーだった。
大石:
以前、『ONE PIECE』にも関わっているアシスタントさんに来てもらった際、僕の原稿が全然終わってないけど、尾田(栄一郎)先生を待たせるわけにはいかない。だから、編集も「こっちはいいから、もう『ONE PIECE』に行け!」って送り出しちゃう。
つの丸:
ひどい話だな(笑)。
大石:
原稿を出した後も、週刊連載だとすぐに次のネタを考えないと間に合わない。何もない爽やかな状態が、連載中は一秒もなかったです。
つの丸:
爽やかなのは、原稿を渡して寝るまでの一瞬だけ。何年間も物語の世界から一度も出られない感じだよね。
大石:
だから、ストレスや不摂生で体はボロボロでしたね。
つの丸:
『マキバオー』の連載中は、便秘や下痢、不眠が慢性化したし、失神も何度かした。一度、トイレから立ち上がれなくなって、救急車で搬送されて。結果は虚血性大腸炎で即入院だった。
大石:
僕も『いぬまるだしっ』の連載中、ヘルニアで入院したんです。でも、原稿は絶対落とせないから、病院でネームだけ描いて、アシスタントに過去のデータから絵を差し込んでもらいましたね。
つの丸:
前に大石たちギャグ漫画家たちと人間ドックに行ったら、大脳の血管が詰まる虚血性白質病変だと言われて、余命10年の宣告も受けたな。でも、今は根詰めて仕事してないからか、8年たつけど全然元気!
読者アンケートとの向き合い方
──『ジャンプ』は読者アンケートを重要視すると聞きますが、精神的ストレスは?
大石:
ギャグ漫画は上位になるジャンルじゃないので、そこまでプレッシャーはなかったです。
ただ、順位は執筆の参考にしてました。順位がいいと「このキャラがいいのかも」となるし、自由にやって順位が下がると反省する材料になる。
つの丸:
俺は全然気にしなかったな。ただ、『サバイビー』のときは順位が悪くて、担当編集に「テコ入れしないと打ち切りだよ」と、方向性を変えるか連載を終わらせるかを迫られて。
でも、納得できない作品は描きたくないから、一度連載は終わらせて、その後納得いく形で完結させるため、コミックス用に一人で描き続けた。原稿料も出ないし、今までで一番大変だったな。
大石:
すごいですね。普通、そこまでやらないですよ。
つの丸:
連載で無理やり終わらせた漫画って、なんかわかるから。何年か後にコミックスを読んだ人に「こいつはまとめきれなかったんだな」って思われたくなかったんだよ。
今は「落としてもいい」くらいの気持ちでやってる
──ウェブ漫画サイト「マンガSPA!」で、つの丸先生は保護犬との暮らしを描いた『The Dogfather ドッグファーザー』を、大石先生は昭和のおもちゃが現代のおじさんを救うギャグ漫画『令和のおもちゃ ウーピン』を連載中で、8月4日には単行本が発売されましたね。紙と比べて、ウェブは締め切りには追われない環境ですか。
つの丸:
そう、今は自由!落としてもいいやぐらいの気持ちでやってるので気が楽。
大石:
隔週更新で、締め切りも緩くてありがたいですね。……ただ、つの丸先生、最近『ドッグファーザー』の更新がすごい遅いですよね(笑)。
つの丸:
締め切りが緩いと思うと、ついね……。でも、自分なりに「前回から1か月もたっちゃったから、そろそろやらなくちゃ」っていうプレッシャーはあるのよ。結局、仕事を始めたら自由ではいられないと痛感するよね。
取材・文/藤村はるな撮影/荒熊流星
【つの丸】
1970年生まれ。千葉県出身。『週刊少年ジャンプ』で『モンモンモン』『みどりのマキバオー』などを連載。『ドッグファーザー 1』が8月4日発売
【大石浩二】
1982年生まれ。熊本県出身。『週刊少年ジャンプ』で『いぬまるだしっ』『トマトイプーのリコピン』などを連載。『令和のおもちゃ ウーピン 1』が8月4日発売
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