大鶴義丹が演出を手がけ、渡辺大を主演に迎える演劇公演「下谷万年町物語」が、11月1日から11月10日までの10日間(予定)、都立明治公園みち広場に特設される「紅テント」で上演される。
「下谷万年町物語」は、終戦直後の東京・下谷万年町を舞台に、混沌のなかで生きる男娼たちの狂騒を幻想的に描いた唐十郎の傑作戯曲。当時、唐が旗揚げし、紅テントを建てて新宿・花園神社境内などで舞台公演を行った劇団「状況劇場」が令和の時代に甦る。本公演では、唐を父に持つ大鶴が、当時の熱気をそのままに、自身初となるテント公演の演出を担当する。
また、主演を務める渡辺の父・渡辺謙は、1981年に行われた本作の初演において、研究生ながら主演に抜てきされ、記念すべき舞台デビューを飾った経歴を持つ。かつて父が演じた役を、45年の時を経て今、息子の渡辺大が受け継ぐことになる。
上演決定にあたり、大鶴、渡辺がコメントが寄せられた。
【演出 大鶴義丹】
唐十郎の芝居について問われると、私は「問答無用の感動だ」と答える。特有の難解な物語に翻弄されながら、最後には、なぜか誰もが涙してしまう。そんな芝居だと。
私が唐十郎作品を演出する機会を得るなら、『下谷万年町物語』と決めていた。その演劇世界に幼い頃から身を置き、数々の唐作品に出演してきた経験から、この作品こそが、エンターテインメント性と文学性の均衡が最も美しく保たれた一作だと確信していたからだ。
自ら劇団を立ち上げ、演出と制作を担う覚悟を持つまでには、劇団・新宿梁山泊で2014年から10年以上にわたり、唐十郎作品に出演し続ける時間が必要だった。
そして2026年。母・李麗仙が最期まで掲げ続けた「状況劇場」の旗を受け継ぐ決意をした。その象徴である紅テントを自ら手に入れ、同じ演劇空間を生きてきた仲間たちも力を貸してくれた。
父が書き、母が演じた芝居を、今度は私が創る。その意味は、おそらく父や母が胸にあっ
たものとは少し違うのだろう。しかし私は、二人の最も近くにいた「子供」であると同時に、誰より近くで舞台を見続けた「観客」でもあった。だからこそ、演じる側には見えなかったものを知っている。その視点だけは、父や母から受け継いだものではなく、自分自身の財産なのだと思う。
私が立ち上げる「令和状況劇場」は、もちろん唐十郎作品の感動を現代の観客へ届けることを第一の使命とする。しかし、それと同じくらい大切にしたいことがある。それは、唐十郎作品が俳優を消費して燃え尽きさせる場所にしてはいけないということだ。
唐作品は俳優に膨大なエネルギーを要求する。しかしその経験が一度きりの「伝説」として消費されてしまうのでは意味がない。俳優たちの次へとつながっていくものであってほしい。
【主演 渡辺大】
六平直政さんは僕に会うと、いつもこの作品の稽古にうちの父を自転車の後ろに乗せて連れて行った当時の思い出を楽しそうに話してくれます。どんな思いで父がこの舞台に立ったのか、この作品と向き合ったのかを知るのが今から楽しみです。エネルギーがほとばしる作品にしたいと思います、どうかよろしくお願いします。
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