【プロ野球】阪神がリーグトップの「死球」について掛布雅之が見解ピッチャーとバッター、双方に必要なこととは?

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【プロ野球】阪神がリーグトップの「死球」について掛布雅之が見解ピッチャーとバッター、双方に必要なこととは?

8月4日(火) 9:50

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掛布雅之インタビュー後編

(前編:掛布雅之が語る「三冠王・佐藤輝明」誕生の可能性森下翔太が好調な理由、立石正広の「気になる」点も指摘>>)



4月には近本光司、7月には前川右京が死球による骨折で離脱するなど、死球数がリーグ最多の47個(8月2日時点。以下同)となっている阪神。長らく阪神の4番を務めた掛布雅之氏に、自らの経験もふまえて死球に関して語ってもらった。

7月17日の広島戦で死球を受けた前川右京 photo by Sankei Visual

7月17日の広島戦で死球を受けた前川右京 photo by Sankei Visual





【野球の変化と死球の関連性】――7月17日の広島戦で死球を受けた前川右京選手は、右肩甲骨骨折で長期離脱。ここまで阪神の野手たちは、リーグ最多47個の死球を受けていますが、どう見ていますか?

掛布雅之(以下:掛布)野球には「危険球」というルールがありますよね。だから、ピッチャーがぶつけにいくということは考えづらいわけです。(4月26日の広島戦での)近本光司に対しての死球も当てにはいっていませんでした。

普通に原因を考えれば、ピッチャーの投げミスや技術不足。それと、バッターの動きも関連してきます。例えば、森下翔太は死球がかなり多い(12個)ですが、彼は踏み込んでいかないと打てませんから、死球を受けるリスクも高くなるわけです。

僕の現役時代では、チームメイトの竹之内雅史さんはすごく死球が多かったのですが、「俺はボールを当てられないと打てない」と言っていましたね。竹之内さんも、森下と同じで踏み込んでいくタイプだったんです。ボールを避けづらい踏み込み方をしていると自覚していたので、当てられても怒りませんでした。

――投げるほうにも打つほうにも、要因があるわけですね。

掛布今の選手は、肘を守るためにエルボーガードを着けるじゃないですか。あのプロテクターがあることによって、インコースのボールに肘を当てにいくバッターもいます。つまり、死球が増えたと言うけれども、避けられるボールに対して当たりにいっているバッターも多いということです。

それと、阪神のバッターだけではなく、インコースに対する反応が一歩遅くなっている選手が多くなっているような気がするんです。やっぱりプロテクターで守られている安心感があるんでしょうし、「(危険球というルールがあって)頭にはこないだろう」という意識もあるんでしょう。

【ピッチャーの球速アップの弊害】――危険球で退場するルールが適用されるようになったのは1982年からです。ルールがあるとないではまったく違いそうですね。

掛布僕らの時代は、頭にボールが来ていましたからね。味方の選手が相手ピッチャーから死球を受けた際、相手の主力打者などに故意にぶつけてやり返す"報復合戦"みたいなものもあったわけですし。

あと、今は150キロ、160キロ近いボールを投げるピッチャーが増えてきていますよね。少しでも速いボールを投げようと追求する姿勢や取り組みはいいと思うのですが、速いボールを投げることでコントロールが乱れやすいピッチャーが多くなってきているのかもしれません。

昔はどちらかといえば、「インコースとアウトコースの投げ分けをしっかりしないとダメだ」という感じだったじゃないですか。とにかくピッチャーはコントロールが肝心という時代。当然、今でもコントロールは大事ですが、速いボールをストライクゾーンにアバウトに投げ込むピッチャーが増えているような気がします。

――先ほど名前が出た森下選手にしても、近本選手にしても、阪神のバッターは踏み込んでいくバッターが多いような気がします。

掛布前川にしてもそうですし、それもあると思います。ただ、やっぱりピッチャーのコントロールは大きいですよ。ボールをコントロールする技術が高かった分、狙ったところに当てることもできたんじゃないですか(笑)。

今の投手は、真ん中付近に思いきり投げ込んでいく感じなので、キャッチャーが大きく動くことがないですよね。阪神の先発ピッチャーでいえば、際どいコースにビシっと投げられるのは髙橋遥人と村上頌樹くらいじゃないですか。彼らは150キロ超えの真っすぐを、インローやアウトローにコントロールできますからね。

【パワーやスピードとともに磨いてほしいこと】――時にはバッターの懐を厳しく突くことも必要ですが、そこにコントロールする技術が足りなければ、当ててしまう可能性が高くなりますね。

掛布そうですね。死球からは話がそれてしまいますが、技術という観点で思い出すのは、今年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)です。WBCやプレミア12のような世界大会で日本が再び結果を残すためには、技術が大事だと思うんです。

今年のWBCでは、明らかに力の差や野球の違いを感じさせられました。そう考えた時、もちろん160キロのボールを投げることも求められると思うのですが、そのうえでやはり日本人独特の技術、"匠の技"が必須なんじゃないのかなと。その部分を忘れてしまうと、アメリカや中南米の国々のパワー野球には通用しないんじゃないかと思うんです。

――勝ち進んだチームはパワーに加えて、スピードも驚異的でした。

掛布走塁や守備範囲など、すべてにおいてスピードがあって度肝を抜かれますね。岡本和真(トロント・ブルージェイズ)も、メジャーに行ったらプレーが変わりましたから。めちゃめちゃ走っているじゃないですか(笑)。

――そういったパワーとスピードの追求は大事だけれども、技術の追求も忘れてはいけないということですね。

掛布ピッチングであればコントロールですが、それはバッティングも同じだと思います。確かにウエイトトレーニングをして、パワーをつけて対応していくこともすごく大事だと思いますが、打つための技術というものがありますから。

僕なんかは、体が大きくないから、ボールを遠くへ飛ばすためには技術を磨いて対応していくしかなかったんです。今はデータを重視しつつ、パワーで答えを出すような野球になっているような気がしますが、そこに技術を加えていくと3割バッターも増えてくると思います。

――死球の対策をするにしても、ピッチャー、バッターの技術の向上も必要そうですね。

掛布ピッチャーがインコースを厳しく攻めるにも技術が必要ですし、一方のバッターには、避ける技術や体を引く意識や技術などが求められますね。根本的な解決策は、技術を高めることなんじゃないですか。



【プロフィール】

掛布雅之(かけふ・まさゆき)

1955年5月9日、千葉県生まれ。習志野高校を卒業後、1974年にドラフト6位で阪神に入団。本塁打王3回、打点王1回、ベストナイン7回、ダイヤモンドグラブ賞6回、オールスターゲーム10年連続出場などの成績を残した。球団初の日本一になった1985年は不動の四番打者として活躍。1988年に現役を引退した後は、阪神のGM付育成&打撃コーディネーター、2軍監督、オーナー付シニア・エグゼクティブ・アドバイザー、HANSHIN LEGEND TELLERなどを歴任。野球解説者や評論家、YouTubeなど活躍の場を広げている。

浜田哲男●取材・文 text by Tetsuo Hamada

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