8月2日、バレーボールネーションズリーグ(VNL)決勝ラウンドの3位決定戦。日本はスロベニアにセットカウント1-3で敗れ、銅メダルを逃した。予選ラウンドを怒涛の12連勝で首位突破。史上初の金メダルも期待されたが、準々決勝では中国との接戦を制すも、準決勝でアメリカにフルセットの末に敗れていた。
ロス五輪でのメダルを目指す日本男子バレーボール代表だが、現在地はどこにあるのか――。
スロベニアに敗れ、ネーションズリーグを4位で終えた日本 photo by FIVB
「失意のマニラ」
昨年9月の世界バレーボール選手権で、半ば呆然とした選手たちを現地で取材した光景は、そう形容をするのがふさわしかった。ランキング下位のトルコ、カナダにセットカウント0-3と2試合連続ストレートで敗れ、メダルどころか、2試合で敗退が決定。相手が日本の強さを警戒して研究、対策を施すと、流れを押し返せなかった。
「(勢いに)乗りきれなくても、(相手の勢いを)乗り返せるか」
キャプテンである石川祐希は丁寧に説明し、糧にすべきことを、こう続けていた。
「ランキングが低い国でも、選手たちがイタリアやポーランドなど強いリーグで結果を残し、代表に戻って活躍して強くなっている傾向を、個人的に感じました。ここ数年は日本が成長してきたチームであることは間違いなく、僕たちが"強いチーム"と見られているのを感じましたね。追う立場から、追われる立場になって初めて臨む1年目で......」
パリ五輪後、難しさを抱えたリスタートで、日本代表は苦難を経験した。
だが今年のVNLでは、日本はたくましく成長した姿を見せている。予選ラウンドは無敵の12連勝。フルセットに持ち込んでも(あるいは持ち込まれても)、それをことごとく勝ち取る勝負強さを見せた。
「試合のなかでの適応力」
それが昨シーズンとの差と言える。日本の戦力は確実に底上げされたことは間違いない。
決勝ラウンドの準々決勝で、日本は"格下"の中国(その時点での世界ランキングは日本4位、中国は35位)の奇襲に苦しみながら、セットカウント3-1で勝利を収め、進化の最たる部分を見せている。
【見えた「劣勢を押し返す力」】1セット目の日本は中国にペースを奪われた。圧倒的アウェーという環境のなか、日本は選手の特徴を研究され、フローターのサーブで崩され、ミドルの高さに手を焼いた。2本のサービスエースを奪われるなど、レセプションにも乱れが出た。スパイカーの得意なコースを読まれ、シャットされないまでも、タッチを奪われて拾われていた。結局、このセットを23-25で失った。
しかし、一時は12-18と大量リードを許したことを考えれば、よく差を詰めたと言える。反撃の狼煙を上げたのはミドルブロッカーのエバデダン ラリーだった。2本連続ブロックに成功。20-19と一度は逆転し、結局は落とすことになったが、逆転への橋頭保を築いた。
今年2月に行なったインタビューで、ラリーは決意を語っていた。
「これからは"日本バレーの顔"になるのは絶対条件だなって思っています。できなくても、それは口に出さないといけない。西田(有志)さんも『口にして責任感を持つのは大事』って言っていますよね。だから、自分もちゃんと言います。日本バレーのミドルの顔になります!(そんなこと)今、初めて言いました」
彼は控え目な性格で、「自信がない」とこぼすが、心境の変化はプレーに表れていた。この日は、両チームを通じて最多のブロックポイント5点を記録。躍動感のあるクイックでも得点し、髙橋藍の21得点に次ぐ13得点だった。
石川がVNL日本ラウンドで、「僕だけでなく、みんな新しい立場、新しい場所、新しいクラブチームでプレーし、成長しないはずはない。それが結果に表れていると思います」と語っていたように、この1年で、選手ひとりひとりのプレーの幅が広がった。それが劣勢を押し返す、「乗りきれなくても、乗り返せる」という逆転の方程式につながったのだ。
第2セット途中からは、首に問題を抱えていた石川に代わって入った富田将馬が、レシーブ力の高さで堅牢な守備からチームを立て直した。いい守りからのいい攻めで中国を完全に凌駕。ボールがしっかりとセッターの深津英臣に返ると、髙橋、西田のスパイクが次々に火を吹いた。富田自身もアタックで9点を挙げ、60%以上の決定率を誇った。
第3セット、第4セットでチームに活力を与えたのは西本圭吾だった。ミドルとしては小柄ながら、神出鬼没の機動力で高さに対抗。中国を幻惑し、咆哮した。
「大事な場面で決めきれるか」
髙橋はそう語っているが、その覚悟がチーム全体に伝播していた。
「(ロラン・)ティリ監督も『全員がボールをほしがるように。大事な場面で引かずに、自分たちから攻めていけるようにしよう』と言っていますが、本当にそうだなって思います。自分自身が決めきる、この試合を終わらせる、というマインドでやっていますね」
日本は13連勝という、ひとつの成果を叩き出した。
準決勝、強豪のアメリカ戦でも、日本は1セット目を失いながら2、3セット目を取り返し、地力の強さを見せた。相手がサイドへの防御を固めてきたら、ラリーや山内晶大がクイックで反撃。深津英臣が相手の急所を突くようなサーブで崩すと、髙橋や小川智大が粘り強くボールを拾い、ラリーに持ち込んで、石川が技ありの一撃を決めた。
ファイナルセットは序盤からリードを許したが、宮浦健人の一撃で12-11と逆転。コートの全員が関わるラリー戦をものにし、フルセットで無敗の「不屈さ」を感じさせたが、相手のリリーフサーバーに連続ブレイクを許し、最後は13-15で力尽きた。
その敗因は検証する必要があるが、西田の「少しの差ですが、これがバレーボール」という言葉が今はすべてだろう。スロベニア戦もその延長だった。日本はこの1年で確実に成長したが、僅差で栄光を逃した。それ以上でも、以下でもない。それが現在地だ。
「今シーズン、大事なのはロス五輪出場がかかったアジア選手権」
その目標はチームに共有されている。VNLでメダルを逃した無念さも糧に。9月、福岡・北九州市で開催されるアジア選手権が山場となる。
小宮良之●文 photo by Yoshiyuki Komiya
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