アニメーション映画祭のカンヌと言われ、その熱気はカンヌに勝るとも劣らないアヌシー国際アニメーション映画祭。日本のアニメ作品への世界の注目度も右肩上がりのなか、アヌシーだけで終わらせるのは勿体ないと、今年初めてパリの日本文化会館で、アヌシーとパートナーシップを締結し、日本作品を限定再上映するイベントが開催された。
選ばれたのは長編と短編がともに8本ずつ、さらに4Kリマスターを記念した押井守の「攻殻機動隊」(1995)も上映された。新作長編は、アヌシーの「Contrechamp」部門で審査員賞を受賞した四宮義俊の「花緑青が明ける日に」、廣田裕介の「映画えんとつ町のプペル約束の時計台」、谷口悟朗の「パリに咲くエトワール」、五十嵐祐貴の「リボンヒーロー」、高橋渉の「トリツカレ男」、伊藤智彦の「クスノキの番人」、久慈悟郎の「ペリリュー 楽園のゲルニカ」、そして今年のカンヌ国際映画祭の監督週間部門でもプレミア上映された門脇康平の「我々は宇宙人」。それぞれタイプも映像の趣向も異なり、日本のアニメの豊かさを把握させられる。
とくに「花緑青が明ける日に」の上映では、四宮監督が登壇し、アヌシーで授与されたトロフィーを披露しながら上映後のQ&Aをおこなうと共に、会場のホールを使用して美術ボードや作品の主要舞台となったセットの模型などが展示された。
アヌシーでの受賞効果もあってか、会場は若者層やアニメ制作関係者などが混ざり注目度の高さが伺えた。四宮監督は受賞について、「僕自身というよりも、このように賞として形が残ることは、付き合ってくれたスタッフのためにとても嬉しいです。アニメーションは制作期間も長いですし、この作品はオリジナル・ストーリーなので、出来上がるまで、みんなどんな作品になるか知らない状態で作っていました。それがこのように国を跨いでちゃんと評価して頂けたというのは、スタッフ全員に本当に誇りに思って欲しいと思います。(賞に)選んで頂いて感謝しています」と挨拶をした。
もともと日本画を学びそれをベースに絵画、立体作品、映像制作などをおこなってきた四宮監督は、本作で初めてアニメーション映画に挑戦した経緯について触れ、「日本画というジャンルを選んだのは18歳の頃でしたが、それよりもずっと前からアニメーションを観ていました。自分のなかでアニメと日本画というのがずっとやりたいこととしてあった。それが大人になるにつれ、日本画家としてやっていくことになったんですが、そのなかで、このままだとアニメをやらない人生になってしまうんじゃないか、と一抹の不安を感じました。そこからいつかはアニメを作る監督になれるといいなとずっと思っていたんです。今回ようやく夢が叶って、映画として完成しました」と、その思いを打ち明けた。
なぜ花火をモチーフにしたのか、という観客の問いには、「花火は日本では特別な意味があります。だいたい8月におこなわれますが、それは2つの行事と重なっています。ひとつはお盆と言われるもので、自分たちの先祖を慰霊する日。そしてもうひとつは、第二次世界大戦の日本の終戦は8月だったので、死者に対して思いを馳せること。お祭りだけど宗教的なイベントでもあるというのは、たぶん日本人全員が持っている感覚だと思います。そういった意味で、本作の物語、新しい環境を前にして伝統的なものがなくなっていく、その瞬間に花火が上がるというのが、物語としてドラマティックだと思いました。もうひとつは、1本目の映画を撮るに際して、映画館でなにか自分の手で描いたアナログの力を見せたいと思い、映画館の特性として光と音、それを最大限発揮できるストイックなモチーフとして、花火というものに挑戦しようと思いました」と解説。
さらに色彩や細かい技法についてなど、専門的な質問が出ると、「自分はこれまで背景を描くことが多かったんですが、自分自身の強みは色彩にあると思っていて、今回特殊な例として色彩設計、美術監督、作画監督にも参加しました。キャラクターと背景の色を統一したものにして、オリジナリティを出したかったからです。日本のアニメーションはとても洗練されているので全部分業ですが、今回はすべて自分で決めるということを初期の段階からプロデューサーにお願いしていました」と明かした。
ちなみに本作は、「めくらやなぎと眠る女」(2022)、「リンダはチキンがたべたい!」(2023)などで知られるアニメーションに特化したフランスの制作会社、Miyuプロダクションが参加している。
四宮監督は、「Miyuさんにはストップ・モーション・アニメのシーンを担当してもらいました。アニメーションというのは全部手で描く作業なので、僕らの頭のなかにないものは画面に映らない。僕はストップモーションの技術がないので、Miyuさんに、それも遠く離れたフランスで作ってもらったことで、自分の頭のなかにないものが画面のなかに初めて映り込んだと思っています。それは監督の意図しないものが悪いという意味ではなく、物語の解釈を広げてもらう、自分のなかにはないけれど、誰かの頭のなかを通して新しい解釈が生まれている、まさにそういったところをフランスで作ってもらえたということは、とても意味があったと思います」と評価。
こうした事例は、今後アニメーションの共同制作においても大きなヒントとなるに違いない。(佐藤久理子)
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花緑青が明ける日に
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