稲作とマッコリ醸造の歴史、養殖サーモンと労働者…食をテーマに社会を考察「Fire in Water 永田康祐映像作品集」予告

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稲作とマッコリ醸造の歴史、養殖サーモンと労働者…食をテーマに社会を考察「Fire in Water 永田康祐映像作品集」予告

8月1日(土) 16:00

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アーティスト・永田康祐の初の特集上映「Fire in Water 永田康祐映像作品集」が8月22日公開される。このほど予告編(https://youtu.be/Z5b4g68_Ib0)が披露された。

写真、パフォーマンス、インスタレーションと、ジャンルや制度の境界を横断しながら独自の表現を続ける永田康祐。料理を重要な実践の場とし、2020年の個展「イート」では、食べることをテーマに知的で刺激的なイマジネーションを展開。2025年には恵比寿映像祭コミッション・プロジェクトに参加し、映画作家の小森はるか、小田香らとともに新作を発表。現代アートの文脈に位置しながらも、その活動は近年のドキュメンタリー映画や文化人類学のフィールドワークとも響き合う。本特集では、永田の映像作品を包括的に紹介する初めての試みだ。初期作から最新作まで、その思考と実践の軌跡をたどる。

予告編は、「韓国語で酒を意味する「スル」は、水を意味する「ス」と、火を意味する「プル」が組み合わされたものだとも言われている」という永田自身のナレーションから始まる。酒の発酵過程で液面が泡立つ様子が、まるで“液体の中にある見えない火”によって酒が沸騰しているように見えるという現象を表した表題作「Fire in Water」は、日本統治下の朝鮮半島における稲作とマッコリ醸造の系譜をめぐる映像エッセイ。菌や酵母、稲の遺伝情報といった目に見えない存在に着目し、植民地支配の痕跡が現在にまで及ぶ歴史の複雑な絡まり合いを鮮やかに浮かび上がらせる。

プログラムAでは「Fire in Water」に加え、一匹の魚、ティラピアとともに、知られざる歴史の水脈をたどる「Fish of Empire」、第2次世界大戦中、大規模な捕虜脱走事件の現場となったオーストラリア・カウラの土地に幾重にも堆積する記憶を掘り起こしていく「Suddenly This Overview」を上映。

プログラムBでは、料理をする作家自身の映像と、それを食べる人々の姿にナレーションを重ねながら、「食べること」と「主体」の関係を考察する「Purée」。上映作品のなかで唯一のアニメーション作品で、養殖サーモンと労働者の姿を通して、資本主義における生命の価値と尊厳を見つめる「鮭になる」。そして、翻訳と文化生成の創造的な関係を探求する「Translation Zone」を上映する。

一見ばらばらに見えるテーマは、文化や歴史、人間と環境が絶えず影響し合いながら生成変化する世界の姿へとつながっていく。永田の作品は、「わかりやすい物語」から距離をとり、見過ごされてきた存在や関係に光をあて、私たちの認識の枠組みそのものを揺さぶる。しかし、その語り口にはどこか飄々として、心地よいユーモアをたたえている。

8月22日からポレポレ東中野ほか全国順次公開

▼推薦コメント(順不同・敬称略)

■清水知子(東京藝術大学教授/文化理論・メディア文化論)
一匹の魚から世界をたどり、一杯の酒から歴史をひらく。永田康祐の映像では、人とさまざまな生きものが、翻訳、調理、発酵、移
動を通じて、異なる時間を宿したまま交差する。見慣れた風景の奥で、無数の生命と記憶が動き出す。

■三浦哲哉(映画研究・評論)
料理や酒には、無数の過去と由来が溶け込み、混じり合っている。
永田康祐の映像作品が、料理と酒をテーマに出現させたのは、
まったく新しい「混合の倫理学」だ。
フードシーンの見え方を大きく変容させるだろう。

■藤田周(料理の文化人類学)
永田康祐の映像作品について真剣に考えようとするならば、それらの映像の刻印を受けることになる。制御できるはずもない無数
の形態を飲み込もうとして、私は自分が理性を狂わせるものを背負っていることを自覚する羽目になった。

■韓程善(高麗大学校 国際大学 教授)
発酵するマッコリの表面から帝国と植民地支配が残した微細な残痕が立ち上がり、逸脱と反転の中で新たな伝統の気泡が息づく。
火と水が交差し、古い未来を照らす内奥の視覚的旅路が静かに開かれる。
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【上映作品】
▼Program A
「Fire in Water」
2025 年|DCP|41 分|
脚本・監督:永田康祐 撮影:奥祐司 編集:永田康祐 奥祐司 英語字幕編集:佐藤朋子
製作:恵比寿映像祭 2025 コミッションプロジェクト委嘱作品[東京都写真美術館]
日本でも人気のクラフト・マッコリ。その一杯には、知られざる歴史が発酵している。韓国語で酒を意味する「スル」は、「水(ス)」と「火(プル)」に由来するという説がある。泡立つ発酵の様子が、まるで水の中に火が宿るように見えたからだ。永田はこの「水の中の火」というイメージから、日本統治下の朝鮮半島における稲作と酒造の歴史へと分け入っていく。食料増産と税収確保のために導入された技術や制度、米品種、日本式の麹や酵母──。発酵という現象をひとつのメディアとして、遺伝子や微生物、法制度といった目に見えない存在に今なお宿る植民地主義の残響を映し出す。

「Fish of Empire」
2025 年|DCP|15 分|脚本・監督:永田康祐 編集補助:奥祐司 英語字幕編集:佐藤朋子
日本の南進政策とタイの開発政策を背景に東南アジアへ広がった魚、ティラピア。一匹の魚の移動から、生態系の変容と政治権力が交差する歴史の水脈をたどる。

「Suddenly This Overview」
2026 年|DCP|22 分|
脚本・監督・語り:永田康祐 制作協力:岩田智哉 監修:飯笹佐代子 田村恵子 ポストプロダクション:
奥祐司 英語字幕編集:佐藤朋子
第二次世界大戦中、大規模な捕虜脱走事件の現場となったオーストラリア・カウラ。日本人戦争墓地と日本庭園を往還しながら、戦争、植民地主義、和解と、幾層にも堆積した記憶を静かに掘り起こす。

▼Program B
「Purée」
2020 年|DCP|35 分
文・語り:永田康祐 出演:きりとりめでる 佐原しおり 菅原伸也 撮影・仕上げ:奥祐司 監督・編
集:永田康祐 英語字幕編集:佐藤朋子
17世紀フランスで生まれた「ピュレ」は、かつて富と権力を示す料理だった。だが今日では、乳幼児や高齢者を支えるケアの食でもある。その対照的な歴史を手がかりに、「食べる」という営みに潜む政治性を見つめ直す。食器や調理器具、作法、他者との関係のなかで絶えず形を変える「主体」と、人間の共同性について思索を巡らせる。

「鮭になる」
2024 年|DCP|14 分|
脚本・監督:永田康祐 作画・演出:山本悠 音響効果:山形一生 声の出演:遠藤麻衣 製作:十和田市
現代美術館 英語字幕編集:佐藤朋子
サーモン養殖場で寄生虫に感染した鮭と、老いた労働者が静かに時間を共にする。資本主義的な価値と生の尊厳のあいだに横たわる緊張をやわらかな手描きアニメーションで見つめる。

「Translation Zone」
2019 年|DCP|27 分|脚本・監督・語り:永田康祐 音響:山形一生 ポストプロダクション:奥祐司
英語字幕編集:佐藤朋子
「チャーハン」をめぐる各言語の呼称の違いや機械翻訳の限界、分子ガストロノミーを手がかりに、翻訳と文化生成の関係を探る。他国の料理を手持ちの食材で再現したり、異なる言語へと訳するときに生じる「ズレ」を、新たな創造の契機として鮮やかに描き出す。

【作品情報】
Fire in Water 永田康祐映像作品集

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