記念すべき第30回目を迎えた、韓国のプチョン国際ファンタスティック映画祭に7日間参加してきた。今年も世界各国のジャンル映画321本が上映されたが、多くの作品のチケットがソールドアウトに。韓国における映画祭人気を改めて肌で感じることとなったが、映画祭で鑑賞したホラー映画のなかで特に心に残った作品を紹介してみよう。
【写真を見る】ゲイのティーンエイジャー2人が超常現象的存在に襲われる姿を描く『Leviticus』
■『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』のコーズウェイ・フィルムズが放つ新作ホラーがお披露目
オーストラリアのアートハウス・ホラー『Leviticus(原題)』は、今年のサンダンス映画祭でお披露目となり、NEONが北米配給権を獲得したロマンティックなスーパーナチュラルホラー。自分が欲望を抱く相手の姿に化けたバイオレントな超常現象的存在に襲われる、2人のゲイのティーンエイジャーの恐怖を描いたスリリンングな秀作だ。『イット・フォローズ』(14)や『リング』(98)などのJホラーを彷彿とさせる設定だが、静謐でリリカルなトーンは同じオーストラリアの『ババドック~暗闇の魔物~』(14)やロバート・エガース監督の『ウィッチ』(15)を想起させる。製作会社は『ババドック~暗闇の魔物~』や『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』(22) 、『ブリング・ハー・バック』(25)などを放ち勢いに乗るコーズウェイ・フィルムズだ。キャストには、ジョー・バード、ステイシー・クラウゼン、ミア・ワシコウスカらが出演。監督はこれがデビュー作となるエイドリアン・チャレラ。エンドクレジットではフランク・オーシャンの「Self Control」が流れるが、これが映画に非常にマッチしている。
『the EYE 【アイ】』(01)で知られる香港の双子監督、パン兄弟の最新作『The Mage(英題)』もプチョンでワールドプレミア上映された。街で連続して起こる殺人事件を調査するうちに、事件現場にゴミを収集している謎の女性の姿が常にあることを発見した警察官は、彼女が特殊な能力を持ち、殺された者たちの魂を解放し“あの世”に送る役目を果たしていることを知る。やがて一連の殺人事件が謎のカルト的儀式に関連していることがわかり、2人は次の犠牲者として狙われる、というストーリー。香港のホラーらしくアクの強い濃厚でヘヴィでダークな作品だが、不思議な霊能力を持つホームレスの女性を主人公に据え、彼女の悲劇的な過去を交錯させることで重層的でドラマ性も高い作品に昇華されている。主演を務めたのはジョシー・ホー(『ドリーム・ホーム』)とカルロス・チャン(『レイジング・ファイア』)。最近あまり名前を見かけなかったパン兄弟にとって久々の快作だ。
■バラエティに富んだ各国のホラー作品が集結!
ホラー映画の人気が高いインドネシアの注目作も、2本上映された。1本が、韓国の大ヒットホラー『コンジアム』(18)のリメイク、『Korean Haunted Hospital(原題)』。インドネシアのYouTuber集団が、視聴者数300万人を目指して韓国の有名な廃幽霊病院で突撃ライブ配信を始めるが、恐ろしい怪現象に見舞われるという、ストーリーは『コンジアム』とほぼ同じなのだが、オリジナルへのリスペクトなのか韓国を舞台に韓国で撮影された作品。インドネシアのキャストたちが醸し出すユーモラスな空気が緊迫感を和らげるため、スリルに乏しいホラーだが、クライマックスの惨劇の畳み掛けかたは『REC/レック』(07)を彷彿とさせるものがあった。
もう1本が、今年のベルリン映画祭でワールドプレミア上映された『Ghost in the Cell(原題)』。極悪犯罪者が収監された悪名高い刑務所で、目に見えない謎の存在による殺人事件が次々と起こり、犯罪者と看守がタッグを組んでこの怪事件解明に乗り出す、というストーリー。ブルータルなゴア描写がパワフルで強烈なインパクトを残すが、同様にコメディにも心血を注いでおり要所で爆笑を誘う作風は独特だが、これがインドネシア流なのだろう。ユニークなキャラクターが数多く登場するエンタテインメント性の高い力作に仕上がっていた。
今年のカンヌ国際映画祭ミッドナイト・スクリーニング部門でお披露目された、フランスの女性監督マリオン・ル・コロレールによるSFボディ・ホラー『Species(英題)』も上映された。競争の激しい救急救命室で働く若きインターンの女性が、奇妙な症状を訴えて運ばれてくる患者たちを診ているうちに、次第に自身の身体と精神も変化を遂げていく、というストーリー。ボディ・ホラーの祖、デヴィッド・クローネンバーグ監督の初期作品を彷彿とさせながらも、職場の激しいストレスに苦悩する若き女性の変容を描いたスタイリッシュでバイオレントな佳作だが、キャラクター造形も含めややインパクトは薄かった。
これ以外にも、ユソン主演の不気味な集合住宅を舞台にした韓国のホラースリラー『Home A Loan(英題)』や、スペインのフォーク・ホラー『Gaua(The Night)』、マオリ族の女性が主人公のニュージーランド産のゴシックホラー『Marama(原題)』、メキシコのインフルエンサー・ホラー『Don't Follow Me(英題)』、ジェシカ・ロース主演のSFホラー『Imposters(原題)』、NEONがアメリカ配給したアイルランドのスーパーナチュラル・ホラー『Hokum (原題)』、「13日の金曜日」シリーズにオマージュを捧げたジェーン・シェーンブルン監督の『Teenage Sex and Death at Camp Miasma(原題)』、フィンランドのハンナ・ベルイホルム監督のファンタジー・ホラー『ナイトボーン -夜哭-』(8月28日公開)、そして歴史的な大ヒットを記録したカリー・バーカー監督の低予算ホラー『オブセッション 災愛』(公開中)も上映され、バラエティに富んだワールドワイドなホラー映画を堪能することができた。
文/小林真里
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