7月31日(金) 5:00
国税庁が昨年12月に公表した「令和6年分相続税の申告事績の概要」によると、相続税を課税される人の総数や割合は年々増え続けています。
令和6年における被相続人数は約161万人、そのうち相続税を課税された人は約16万6000人で、課税される人の割合は約10.4%でした。前年の約9.9%から増加しており、ここ10年で見ても図表1のとおり、ほぼ右肩上がりになっています。
図表1
国税庁 令和6年分相続税の申告事績の概要 被相続人総数に対する課税割合の推移
さらに、相続財産の金額も増加傾向が顕著です。図表2のとおり、こちらもおおむね増加が続いており、過去10年間で1.5倍以上に跳ね上がっています。
図表2
国税庁 令和6年分相続税の申告事績の概要 相続財産の金額の推移
その内訳を見ると、相続財産の鉄板である土地・家屋などの不動産は増えていますが、それ以上に株などの有価証券や現金・預貯金が2倍近くに伸びているのが目立ちます。特にここ4年ほどで一気に伸びており、最近の大きな株価上昇が相続財産増加の一因になっているのは間違いなさそうです。
「親は貯金もないから相続税は関係ない」という人は多いでしょう。ただ、親がまとまった退職金でタイミングよく投資を始めていた場合、一気に資産が膨らんで、相続税の対象となるケースがないとも言い切れません。
あくまで1つの極端な例ですが、6年前に退職した親が、直後に退職金1000万円を「S&P500」の投資信託に一括投資していた場合を考えてみましょう。円建ての投資信託である「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は、2020年5月時点の価格は約1万1000円でした。
その後、米国経済の活況に円安も相まって、この投資信託の価格は2026年7月時点で約4万5000円まで上昇しており、6年前と比べ約4倍となっています。つまり、1000万円投資していれば、信託報酬などのコストを除くと単純計算で4000万円まで資産が増えていることになります。
相続税には、基礎控除「3000万円+法定相続人の数×600万円」に加え、相続人が配偶者の場合は配偶者控除もあります。控除の範囲であれば相続税は課税されず、特に配偶者控除は金額が大きいですが、いずれは子どもだけが相続人になるときが来るでしょう。
その場合、仮に子ども2人が相続人なら、基礎控除により相続財産総額が4200万円までは非課税です。そのため、相続財産が投資信託4000万円のみであれば、相続税は課税されません。
しかし、投資信託の評価額は今後も上昇する可能性が考えられます。仮に価格上昇ペースをこれまでの「6年で4倍」の半分で2倍と想定しても、6年後には8000万円まで上昇することになります。少し乱暴な想定かもしれませんが、可能性がないと断言することもできないでしょう。
そうなれば、8000万円-4200万円の計算により、この投資信託だけで課税対象額は3800万円です。子ども1人分の法定相続分から課税額は1900万円になるため、図表3のとおり税率は15%となり、1900万円×15%-50万円=235万円もの相続税が課されます。
図表3
国税庁 相続税の税率
さらに、銀行預金がなくても、親の持ち家をはじめとした不動産、タンス預金などほかにも相続財産があるかも知れません。いずれにしても、資産がここまで膨らむようであれば、相続時の対応も考えておく必要はあるでしょう。いずれにしても、親と相続について話す機会をもっておくことが大切かもしれません。
相続税の納付実績などを見ると、相続税の納付対象となる人の総数や割合は年々増加傾向です。また、株価・投資信託の価格上昇などもあり、相続財産の金額も著しく高額化が進んでいます。
相続税には「3000万円+法定相続人の数×600万円」の基礎控除などがあるため、「自分は相続税とは縁がない」と考えている人は多いでしょう。ただ、親が退職金などで得た資産をうまく運用していれば、もしかしたら相続税の対象になるかもしれません。相続税が気になるようであれば、親に確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
国税庁 令和6年分 相続税の申告事績の概要
国税庁 相続税の税率
執筆者 : 松尾知真
FP2級
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