「ぐるりのこと。」4Kリマスター版の公開を記念したトークイベントが7⽉28⽇にシネスイッチ銀座で⾏われ、出演の江口のりこと、橋口亮輔監督が登壇した。
本作は、一組の夫婦(木村多江・リリー・フランキー)の10年を通して、人と人の間に生まれる希望を見つめる物語。“誰かと生きること”の難しさと愛おしさをすくい上げた名作が、18年ぶりに4Kリマスター版としてスクリーンに蘇る。
トークイベントは公開当時の本作のメイン館であり、今年10月での閉館が先日発表されたシネスイッチ銀座にて開催。直前まで客席で観客と一緒に映画を鑑賞していたという江口は大スクリーンで見る4Kリマスター版の感想を問われると、「めっちゃ面白かったです。公開当時は主人公たちの方が年上だったのですが、今では自分の方が年上になっていて、見え方がまったく変わりました。当時はわからなかった人物の魅力が、今はよくわかる。特にカナオ(リリー)の魅力がわかりました。本当にいい男ですね」と、人生経験を重ねたことで作品の受け止め方が変化したことを明かした。
これを受けて橋口監督は「そういうふうに見えるように作っていますから」と笑いつつ、「企画段階でリリーさんのスケジュールがおさえられないかもしれないとマネージャーに言われた時、目の前が真っ暗になった。ところがすぐにリリーさん本人が『僕の望みは橋口さんが楽しく撮ってくれることですから。スケジュールのことは気にしないでください』と言い切ってくれた。その時、はっきりと『この男は逃げないんだ』と確信して自分の中のカナオ像、そして翔子の人物造形も固まった」と振り返った。
江口が演じたマンションの隣人役は、オーディションを経て掴み取った役。当時の思い出について江口は、「新宿区のビルの一室で5、6人集まったのを覚えています。本番と同じように隣人がうるさい、と言いに来るシーンをやりました」と懐かしんだ。
一方、橋口監督はシナリオを実際に取り出し、「今確認しても隣人の役はたった一行『静かにしてくれません?』のセリフ。よくこれで当時すでに頭角を現されていた江口さんが受けてくれたなと。江口さんというおもしろい俳優さんがいるということはすでに知っていましたから、オーディションの前から結果はすでに決まっていたようなものです」と印象を語ると、江口は「橋口作品ファンだったので、オーディションには嬉々として参加しました」と心の内を明かした。
本作のクライマックスとも言えるのが、江口が登場する「嵐の夜のシーン」。長回しによる緊迫した場面の撮影について江口は、「すでにたくさんのエチュードを積み重ねて関係性が出来上がっている木村さんとリリーさんの二人の間に自分がちょんっと入っていくのはとても怖かった。役者が映画で芝居するって恐ろしいことだなとしみじみ思いましたね。そんなとき、監督が『江口さん、風邪ひいてることにしてくれる?』とおっしゃって、ふっと気が楽になったんです」と当時の苦労や現場の空気を告白。「実はカナオがドアを閉めた後も、江口さん演じる隣人は『ばーか』と悪態ついてドアを叩いてるんですよね」と橋口監督が答えると、江口は「叩いたりしてすべて演じ切った後、階段の踊り場で『あれでよかったんかな』と頭を抱えてました」とこぼした。
撮影当時、主演の木村が役に深く入り込むあまり食が細くなっていったことを橋口監督が振り返ると、江口は感慨深げに「大変、大変ですね」とひと言。すると監督は、「でも江口さんも、一生に一度しかない役だと思ったら、それぐらいエネルギーを注ぎ込むタイプですよね」と問いかけた。江口は「もちろん注ぎ込みます。でも、やっぱり手をつないで一緒に乗り越えてくれる人が必要だと思います。私にとっては、それが監督や演出家の方々です。これは私の勝手な想像ですが、橋口監督がいたからこそ、木村さんはあそこまでたどり着けたんじゃないかなと思います」と、監督への信頼をにじませた。その言葉を受け橋口監督は、「つくづく人とのご縁に支えられて映画を作ってきたなと思います」と締めくくり、公開当時に本作を観た観客に向けても「今だからこそ感じられるものがある作品」と、改めて劇場での鑑賞を呼びかけた。
4Kリマスター版「ぐるりのこと。」は、全国公開中。
【作品情報】
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ぐるりのこと。
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