米パラマウントによるワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)の買収をめぐる反トラスト訴訟が、新たな局面を迎えた。パラマウントは、1100億ドル規模の取引について、2027年6月1日、または訴訟の本案判断が下されるまでのいずれか早い時点まで完了しないことで、原告側と合意した。米Deadlineが報じた。
この発表を受け、両社の株価は時間外取引で下落。合併に反対する12州の司法長官や全米脚本家組合(WGA)、活動家らは、今回の合意を一定の成果として歓迎している。
カリフォルニア州のロブ・ボンタ司法長官は声明で、今回の合意を「観客、映画館、そして芸術、ニュース、エンタテインメントを生み出す人々にとって素晴らしいニュース」と評価。「この違法な合併を決して日の目を見ないものにするため、引き続き法廷で主張していく」と述べた。
Zoomで行われた記者説明会では、合併反対運動を展開するCommittee for the First Amendmentのアンジュリ・クロンクハイム・カッツ事務局長が、「これは完全な勝利ではない」としながらも、「まだ決着した話ではない。人々が組織化すれば、資金力に対抗できることを示す重要な兆しだ」と強調した。
WGA Westの会計書記ピーター・ムリエッタは、合併によって脚本家の報酬が押し下げられ、映画やテレビシリーズの製作本数が減少する可能性があると批判。一方、パラマウントは合併を「ハリウッドにとって有益」と説明し、労働者に悪影響を与えるとの主張に反論している。
市場は今回の発表に敏感に反応した。パラマウント株は52週安値をつけた後、8.21ドルで通常取引を終え、時間外取引でも小幅に下落。WBD株も通常取引中に約1%下げ、その後も下落した。
パラマウントは、9月30日までに取引を完了できなかった場合、WBDの株主に1日あたり720万ドルの「ティッキング・フィー」を支払うことを約束している。さらに取引が破談となれば、WBDに70億ドルの違約金を支払う必要がある。
反トラスト法を専門とする弁護士アビエル・ガルシアは、裁判官が取引を一時停止する差止命令を出し、その期間を延長したことを受け、パラマウントが「状況を明確に読んだ」のではないかと分析する。
裁判官は、パラマウントが訴訟でストリーミング市場の効率性を主張の根拠にできない可能性を示したほか、ティッキング・フィーの発生は審理を早める理由にならないとも指摘していた。司法長官側が次の段階となる仮差止命令を勝ち取れば、パラマウントにとってさらに不利な印象を与え、合併反対派を勢いづかせる恐れがあった。
ガルシアは、パラマウントが今回の合意によって「持ちこたえるための時間を確保し、訴訟日程の主導権を失わないようにした」との見方を示している。
訴訟の長期化は、買収されるWBDにも大きな負担となる。同社はこの10年間で4度目となる企業所有構造の変更に備えているが、取引の先行きが見えない状況では、大規模な経営改革にも、パラマウントとの統合準備にも着手しにくい。
ナリー教授は、WBDが「当面、宙ぶらりんの状態に置かれる」と指摘。買収が不成立となった場合に備えた事業再編を進めることも、成立を前提とした統合作業を始めることもできず、いずれの結果になっても事業が打撃を受ける可能性があると分析している。
わずか2週間前まで、規制当局の審査を異例の速さで通過し、完了間近に見えていた大型買収。しかし、ハリウッドの勢力図を塗り替えるはずの取引は、ここにきて長期の停滞期に入った。
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