7月28日(火) 5:20
75歳以上の人が加入する「後期高齢者医療制度」では、病院の窓口で支払う医療費の自己負担割合は、「1割」「2割」「3割」の3段階に分かれています。この割合を決定するうえで重要なのは、判定基準が「保有している資産」ではなく、「課税所得」であるという点です。
どれだけ立派な豪邸に住んでいても、銀行口座に数千万円、あるいは数億円の預貯金があったとしても、それらは過去に築き上げた「資産」です。後期高齢者医療制度では、個人の預貯金残高や自宅の資産価値そのものを基準として、自己負担割合が決まるわけではありません。
そのため、現在の年金収入や給与収入、事業所得などが基準の範囲内であれば、多額の資産を保有していても1割負担となる場合があります。
どのくらいの所得や収入があると、2割や3割負担になるのでしょうか。
負担の割合が最も高い「3割負担」の対象となるのは、「現役並み所得」と呼ばれる人です。一般的には、課税所得が145万円以上(年収は単身者で約383万円以上、複数で約520万円以上)であることなど、法令で定められた要件を満たす場合に該当します。
「2割負担」の対象となるのは、住民税課税所得が28万円以上で、さらに「年金収入とその他の合計所得金額」の合計が、単身世帯では200万円以上または複数世帯では320万円以上となる人です。
これらの基準に該当しない課税所得が28万円未満の場合は、原則として1割負担となります。
「地主なら家賃収入があるのでは」「資産家なら投資で大きく稼いでいるのでは」と疑問に思う人もいるでしょう。
まず、自宅として所有している土地や建物は、それだけでは所得を生みません。固定資産税などの負担はありますが、自宅に住んでいるだけで所得が発生するわけではないのです。
また、賃貸アパートや駐車場などを経営している場合でも、家賃収入から修繕費や固定資産税、減価償却費などの必要経費を差し引いた「不動産所得」が判定の対象です。そのため、家賃収入が多くても、必要経費が大きければ所得はそれほど高くならないことがあります。
さらに、株式や投資信託などの金融資産は、税制上の仕組みによって判定に影響しないケースも少なくありません。例えば、「源泉徴収あり」の特定口座で得た上場株式などの譲渡益や配当所得は、確定申告をする・しないを選択できる場合があります。
その場合、住民税の申告不要制度などが適用されるケースでは、後期高齢者医療制度の自己負担割合の判定に用いる所得へ反映されないことがあるでしょう。こうした制度上の仕組みによって、多額の金融資産を保有していても、負担割合が1割のままとなるケースが生じます。
豪邸に住み、多くの資産を保有している75歳以上の人でも、医療費の窓口負担が1割となることは珍しくありません。後期高齢者医療制度では、預貯金や不動産などの資産額ではなく、住民税課税所得や年金収入など、制度で定められた所得基準によって負担割合が決まるからです。
また、不動産所得では必要経費が差し引かれ、金融所得も申告方法によっては判定に影響しない場合があります。そのため、見た目には裕福であっても、制度上は1割負担となることが少なくないのです。
医療費の自己負担割合は、資産の多寡ではなく、現在の所得状況に基づいて判定される仕組みです。制度のルールを理解しておくことで、「資産家なのに1割負担なのはなぜか」という疑問も、制度上の仕組みとして納得しやすくなるでしょう。
厚生労働省 医療費の一部負担(自己負担)割合について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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