アヌシー国際アニメーション映画祭2026総括「花緑青が明ける日に」受賞、ふたつの長編コンペ部門の特徴くっきり

「花緑青が明ける日に」

アヌシー国際アニメーション映画祭2026総括「花緑青が明ける日に」受賞、ふたつの長編コンペ部門の特徴くっきり

7月25日(土) 21:00

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世界最大のアニメーション映画祭と知られるフランスのアヌシー国際アニメーション映画祭が、6月27日に幕を閉じた。今年の長編オフィシャルコンペティションは、前年の「ARCOアルコ」やその前年の「かたつむりのメモワール」のように、衆目が一致する有力候補があったわけでない。グランプリであるクリスタル賞の選考にはいくつもの優秀作品が競り合ったのではないだろうか。

下馬評では、審査員賞、観客賞を同時受賞した少年の成長譚「Iron Boy」(ルイ・クリシー監督)を推す声が大きく、宮﨑駿からの影響を公言するオリビエ・クレール監督の記憶をなくした少女の物語「Lucy Lost」も評判が高かった。そのなかで最終的にグランプリであるクリスタル賞に輝いたのは、アービン・ハン、ラウル・ガルシア共同監督によるシンガポール・スペイン・イタリア合作「The Violinist」である。第2次大戦で引き裂かれ時代に翻弄された男女二人のヴァイオリニストを描いた。これまでもアニメーションで描かれる戦争を多くピックアップしてきたアヌシーらしい選択である。

そう考えて今年の長編オフィシャルコンペを眺めると、全体的な保守路線が窺えた。先の「Iron Boy」のルイ・クリシー監督はピクサーで経験を重ねたベテランであるし、「Viva Carmen」は2023年に「リンダはチキンがたべたい!」でクリスタルのセバスチャン・ローゼンバック監督の新作。前作「ユニコーン・ウォーズ」でのキモカワなキャラクターの残虐な展開が注目されたアルベルト・バスケス監督の新作「Decorado」など、質、知名度もすでに整った作品が並んだ印象だ。

今年目を惹いたのは中国から2本のコンペインがあったこと。シンガポールの「The Violinist」と合わせて映画祭のアジア重視を感じさせる。「浪浪山小妖怪」(於水監督)は中国の妖怪をベースにし、2Dアニメーション映画として中国で異例の大ヒットをすでにしている。モンゴル出身の女性音楽家を主人公とした「TANA」(趙霽・朱可児共同監督)は、「ナタ転生」や「白蛇:縁起」などの制作チームの制作。やはり評価が確立された作品からの選出といえる。

日本からは門脇康平監督の「我々は宇宙人」がコンペインした。日本のNOTHING NEWとフランスのミユ・プロダクションズの共同製作。子どもの頃に親友だった二人の少年の出会いと成長を描くストーリーはリアルに寄せたキャラクターデザインと相まって、国内の実写インディーズ映画を彷彿させる。監督の門脇康平は本作が初の長編アニメーション作品、近年の「ひゃくえむ。」や「オッドタクシー」などと同じく、従来の国内アニメ業界とは違う場所からの人材の潮流を感じさせる。監督が登壇した上映では、映画祭ならでは長時間にわたるスタンディングオベレーションが続いた。受賞は逃したが確かな存在感を残した。

日本からはもうひとつの長編オフシャルコンペティションであるコントルシャン部門で、四宮義俊監督の「花緑青が明ける日に」が審査員賞を受賞した。コントルシャン部門は2019年に新設され、当初はオフィシャルコンペとの違いが分かりにくいとも言われてきた。しかし、難解なストーリーがまさに前衛と言うのにふさわしい「The Orbit of Minor Satellites」(クリス・サリバン監督、米国・日本)や個人作家が一人で全編を仕上げた「Spacetime Chronicles」(ステファノ・ベルテッリ監督・イタリア)など個性的、かつ挑戦的な作品が集まった。誰もが納得する良作を並べるオフィシャルコンペに対して、むしろ新しい表現が体験できる場所になっている。

「花緑青の明ける日に」も、日本画家出身の四宮監督が追求したキャラクターと背景が同等の存在となる映像挑戦が受賞理由のひとつであったことは間違いない。コントルシャン部門のグランプリは内向的少年のシュールな家族を描くフランスの「Blaise」(ディミトリ・プランション、ジャン=ポール・ギュイグ共同監督)が受賞。また日本からは「ペリリュー 楽園のゲルニカ」(久慈悟郎監督)、「トリツカレ男」(髙橋渉監督)もコンペインしたが受賞に届かなかった。

長編映画だけでなくアヌシーの多様な他部門も目が離せない。短編部門のクリスタルは米国の巨匠ドン・ハーツフェルトの最新作「Paper Trail」、ここでもオフシャルコンペは誰もが納得する作品との傾向が強まっている。日本からも山村浩二の最新作「春の海」が選ばれていた。短編でもより新しい表現を求めるのであれば、パースペクティブ部門やオフリミット部門にも気を配る必要がある。そのパースペクティブ部門には、日本からは「Bucketman」(ヤカタカナタ監督)と「Rest」(宮嶋龍太郎監督)が選ばれている

また近年、コンペティション作品の本数が増加しているテレビシリーズ部門では、日本から「タコピーの原罪」(飯野慎也監督)が審査員賞を受賞した。また「Candy Caries」(見里朝希監督)「攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL」(モコちゃん監督)「天幕のジャードゥーガル」(山田尚子総監督・アベル・ゴンゴラ監督)「二十世紀電氣目録-ユーレカ・エヴリカ-」(太田稔監督)と多くの作品がコンペインしている。(数土直志)

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花緑青が明ける日に

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