虚偽の告発で逮捕、体重は27キロに…無実の16歳少女を死に追いやった日本の「人質司法」という悲劇

写真はイメージです

虚偽の告発で逮捕、体重は27キロに…無実の16歳少女を死に追いやった日本の「人質司法」という悲劇

7月25日(土) 15:54

提供:
兵庫県の障がい者福祉施設で働く16歳の少女が、利用者からの告発により暴行容疑で逮捕された。未成年ながら留置場で勾留され、自白を迫られる中で摂食障害に。18日後に処分保留で釈放された(その後、不起訴)が回復せず、5か月後に死亡。後に告発は虚偽と判明し、母は国と兵庫県に約1億円の賠償を求め提訴した。

“白ブリーフ判事”こと元裁判官の岡口基一氏は、「兵庫障がい者施設暴行冤罪事件国賠訴訟」について独自の見解を述べる(以下、岡口氏の寄稿)。

無実の16歳少女を死に追いやった、あまりに罪深い日本の「人質司法」

またしても「人質司法」によって、何の罪もない善良な市民が刑事司法制度の犠牲となった。しかも今回は、まだ16歳の幼気(いたいけ)な少女である。

’25年6月、兵庫県の障がい者福祉施設で働いていた少女は、施設の利用者が別の利用者に噛みつこうとするのを制止しただけだったが、争いのあった2人以外の利用者の告発があり、暴行の容疑で逮捕された。

不思議なことに、少女は未成年であったにもかかわらず、なぜか少年鑑別所ではなく警察の留置場で勾留され、少年事件を専門とする家庭裁判所調査官が事件に関与することはなかったという。

身柄拘束後、少女は精神的ショックから重度の摂食障害となり、嘔吐して動けなくなっても軽微な対症療法のみで、まともな治療は受けられなかった。裁判官が勾留を認める際、親族等との面会も禁止したため、家族に連絡を取ることも許されない……。孤独と不安に押しつぶされそうな中、少女は警察官から繰り返し自白を迫られた。

その様子は少女自身がノートに記録しており、「本当はやったんだろう、しょうじきに言え」「少年(院)に行きたいんか」といった生々しい記載が残されている。少女は、身柄拘束が18日間続いた後、突然、理由も明らかにされずに釈放されたが、37.5キロあった体重は27.7キロまで減っていたという。

もう少女には元の生活を取り戻す力は残っていなかったのだろう。摂食障害は回復することなく、釈放から約5か月後に少女は死亡した。悲しいことに、その後ほどなくして、少女の暴行を告発した者が、証言が虚偽だったことを認める。少女は無実だったのである。

悲劇の教訓は、生かされていない

この悲劇は、本欄でも取り上げた大川原化工機事件と重なる。身柄拘束者の健康状態に深刻な異変が生じたのに、適切な治療がされず、取り返しのつかない事態を招いたからだ。大川原化工機事件では、被告の一人に進行がんが見つかったにもかかわらず、検察官や裁判官は誰一人その状況を改善しようとしなかった。今回も、逮捕・勾留の手続には複数の検察官と裁判官が関与し、勾留は二度延長されている。延長を巡る準抗告審でも、3人の裁判官が身柄拘束を追認した格好だ。

悲劇の教訓は、生かされていない。しかも、警察・検察はこの少女の死について一連の経緯を検証することも、再発防止策を講じることもなかった。そのため少女の母は、多額の弁護士費用をかけ、捜査は違法だったなどとして、国と兵庫県に約1億円の損害賠償を求める訴訟を神戸地裁に提起せざるを得なかった。

しかし、この裁判で真相が明らかになるとは限らない。国と県は、請求の認諾によって訴訟を強制的に終了させることもできるからだ。その場合、その損害賠償が、県民や国民の血税から支払われる、お決まりのパターンになる。

日本の刑事司法では、身柄拘束者の身体に深刻な事態が生じても、拘束を続けて自白させることのほうが優先されてしまう。この取り扱いを改めなければ、今後も犠牲者は出続けるであろう。今回の裁判で問題点がきちんと審理され、抜本的な改善につながる判断が示されることを願う。

<文/岡口基一>

【岡口基一】
おかぐち・きいち◎元裁判官 1966年生まれ、東大法学部卒。1991年に司法試験合格。大阪・東京・仙台高裁などで判事を務める。旧Twitterを通じて実名で情報発信を続けていたが、「これからも、エ ロ エ ロ ツイートがんばるね」といった発言や上半身裸に白ブリーフ一丁の自身の画像を投稿し物議を醸す。その後、あるツイートを巡って弾劾裁判にかけられ、制度開始以来8人目の罷免となった。著書『要件事実マニュアル』は法曹界のロングセラー

【関連記事】
女性警官を投げ倒したとされる男性に無罪判決。元裁判官が憤る「防犯カメラ映像に仕掛けられた不自然な加工」
ハラスメントを相談した女性自衛官がなぜか“戒告処分”に。元裁判官が憤る「司法の異常な判断」
無実だったのにがんでも保釈されず…遺族が裁判官37人を訴えた「異例訴訟」を元裁判官が解説
「8畳の応接室に3年3ヶ月隔離」あおぞら銀行の内部通報者いじめ、東京高裁がパワハラ認定。元裁判官が指摘する“裁判官ガチャ”の恐怖
「給与振込直後の口座を全額差押え」徳島地裁が違法認定…元裁判官の見解は
日刊SPA!

生活 新着ニュース

合わせて読みたい記事

編集部のおすすめ記事

エンタメ アクセスランキング

急上昇ランキング

注目トピックス

Ameba News

注目の芸能人ブログ