「八つ墓村」脚本家が明かす、“令和版”の制作秘話映画業界を志す学生へ特別講義

「八つ墓村」脚本家が明かす、“令和版”の制作秘話映画業界を志す学生へ特別講義

7月25日(土) 10:00

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過去に何度も映像化されてきた巨匠・横溝正史のミステリー小説を完全新作として映画化する「八つ墓村」(9月18日公開)。その学生向け特別試写会が、7月23日に日本大学芸術学部で行われ、同校卒業生で本作の脚本を手掛けた尾ヶ井慎太郎と映画評論家の樋口尚文が登壇した。

現在、非常勤講師として同校の映画学科で教鞭をとっている尾ヶ井と、映画評論家であり映画監督の樋口の二人が、いつもの授業とは異なる形で、特別講義として映画を学ぶ約150名の現役学生たちに向けて新作の魅力と“令和版”制作の裏側を語った。

本作の企画の始まりは2023年。脚本を手掛けた「わが友」で、若手脚本家の登竜門である城戸賞を受賞した尾ヶ井のもとに、松竹のプロデューサーから連絡が入ったという。「最初はプロットの制作依頼から始まり、プロデューサー陣と打ち合わせを重ねるうちに、脚本もお任せいただけることになりました。しばらくして、清水崇監督がメガホンをとられることが決まりました。二人きりで丸一日打ち合わせをする機会をいただき、完成していた脚本に、清水監督ならではの新しいアイディアを加え、今の形に仕上げていきました」と完成までの道のりを語った。

一方、映画評論家の樋口は、原作小説や映像作品に触れる機会がなかったという20代の学生たちを前に、「映画を勉強している皆さんには特に『八つ墓村』という作品は面白い教材だと思います。これまで様々な監督が映像化してきたけれど、映画化作品にはそれぞれ全く異なるアプローチがある。同じ原作でもすべて異なる味わいがあるのが本作の興味深いところ。1977年に公開され大ヒットとなった野村芳太郎版は、実際に屋敷を燃やしたり、3年ぐらいかけて日本中の鍾乳洞で撮影したり、ド派手な撮影を敢行した華やかさが売りだったのに対して、市川崑版はもう少しスリムでわびさびを強調した感じで、作品によって雰囲気が全く異なります。映画ファンとしては、どうしても77年版の野村版と比較しがちだけれど、本作は本来の横溝作品のサイズに合わせて練られた脚本に、清水崇監督ならではのフレーバーが追加され、まさに新解釈を用いて“現代に描くこと”の意義がある完全新作になっている。今、この時代に映画化するならば、まさにこの形だったのではないかと思う」と解説した。

また、樋口は、劇中に登場する名家・田治見家の撮影に使われた広兼邸を実際に訪れたことがあるというが、「過去の映画化作品もすべて同じ岡山県高梁市の広兼邸というお屋敷です。銅山で一儲けした一族が本当に住んでいた民家なのですが、今回の『八つ墓村』が一番あの邸宅をうまく使っています。と言うのも、昔は大きなフィルムカメラで撮影していたので、入り口だけ広兼邸を使用してその中はセットということもありました。しかし、時代が変わりカメラが小型化して小回りがきくようになり、さらに今回はドローンも使っているので、あの広兼邸の魅力を余すことなく堪能できます」と、今ならではの贅沢なロケーションの魅力を紹介した。

令和の時代に「八つ墓村」を映画化することについて尾ヶ井は、「現代的にアレンジするのが本作で一番難しいポイントだった」と打ち明け、「最初は、時代を感じられるようにスマホやタブレットを登場させるなどして試行錯誤していましたが、八つ墓村に文明が登場すると“らしさ”が壊れてしまうんです。何度も議論を重ねて、結果スマホの登場は最低限として、それでもあまり違和感がないのは“閉鎖的な村”というミステリーの設定自体が大きな役割を果たしているんだと思う」と述べ、スマホ世代の生徒たちも納得の表情を浮かべていた。

一番こだわった点について尾ヶ井は「もちろん主人公は金田一耕助で、映画のジャンルはミステリーなのですが、辰弥の成長に焦点を当てることを大事にしました。個人的に本作のテーマは“愛”だと考えていて、幼いころに親と離れ愛を知らない辰弥が八つ墓村で自分の出自に関する事件と向き合い、人間として成長していく姿を描きたかった。そこを軸にして物語を展開させていきたいという考えは、最初に清水監督にもお伝えし、“やりましょう”と背中を押していただきました」と、本作ならではのこだわりを明かした。

最後に、樋口は「『八つ墓村』は、本当に色々な想像力を刺激して、様々なイマジネーションを生むものなので、小説を読み、本作の清水崇監督版を入り口に、野村監督版、市川監督版へもアクセスしてみると、それぞれの異なる味わいが非常に面白いと思う。日芸の学生として、自分が作り手だったら作品をどのように料理するか考えてみるのも勉強になると思う」と映画学科で学ぶ学生たちへメッセージを送り、イベントを締めくくった。

【作品情報】
八つ墓村

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©2026「八つ墓村」製作委員会 ©Yokomizo Seishi/KADOKAWA
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