黒木メイサ、11年ぶりの連ドラ単独主演作でアクションシーンのためにキックボクシングやノースタントにチャレンジ

黒木メイサ、11年ぶりの連ドラ単独主演作でアクションシーンのためにキックボクシングやノースタントにチャレンジ

7月23日(木) 9:00

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映画「渇き。」や「ヘルドッグス」シリーズなど、映像化された話題作が数多くある深町秋生の作品群。そのなかでも、5作のシリーズとなっている人気作が東京・上野を舞台にした警察⼩説「組織犯罪対策課 ⼋神瑛⼦」シリーズ。上野中央署組織犯罪対策課の刑事・八神瑛子を主人公に、昭和のころから多種多様な人々が共生する街で起きる裏側を描き、累計発行部数50万部超えの大人気シリーズとなっている。

そんな原作小説を映像化したのがHulu オリジナル「⼋神瑛⼦ -上野中央署 組織犯罪対策課-」だ。瑛子を演じたのは、11年ぶりの連ドラ単独主演となる黒木メイサ。瑛子の魅力、撮影の苦労を彼女に聞いた。(取材・文/よしひろまさみち)

――原作小説はご存知でしたか?

黒木:存じ上げていました。本作の出演オファーをいただいたときに脚本を先に読み、そのあと原作を拝読しました。瑛子はとにかく強いですよね。ただ強いだけじゃなくて、何かを抱えながら戦っていくというキャラクターで、すごく興味が湧きました。もともとこういう女性像が好きだったこともあり、魅力的に感じています。

――マル暴だけに抱えているものが大きいですよね。

黒木:正攻法ではどうにもならないことに立ち向かうだけに、情報取りにはいろいろな手段を使うんですが、その相手は反社組織や中国マフィア。本来警察組織とは敵対関係にある相手だけど、相手の懐に入るのも上手だし、双方憎しみを抱いていない関係性を築き上げているんです。このドラマは、そんなキャラクター設定のうえに、過去にあった夫の死にまつわる復讐が入ってくるんですが、ただの復讐劇にならずに、彼女が孤立無援な仕事をしていることや死別の哀しみを携えていることなど、どこか陰を持った人物として丁寧に描くことができるといいな、と思いながら脚本と原作を読み進めました。

――それは監督ともご相談されて?

黒木:はい。廣木(隆一)監督とは撮影前からこの話をさせていただいて考えを共有し、瑛子の内面に集中してやらせてもらいました。現場での廣木監督からは、特別な指示はあまりありませんでした。

――ということは、黒木さんが監督にとって正解のお芝居をされてたのでは?

黒木:あ、もちろん指導はあったんですよ(笑)。「ここにちょっと座り込んでみて」とか、何を目的にしているのかは説明せずに、とにかくやってみて、っていうことは。それが私にとっても新鮮で、「今日は何が出てくるんだろう」っていう楽しみになってました。

――かなりアクションシーンが多いですが、トレーニングは?

黒木:脚本の時点から瑛子のアクションが多いことは分かっていたので、事前に準備ができました。もともと私は普段からワークアウトをしているんですが、それは健康維持のためのこと。ちょっとウェイトトレーニングをする程度なんです。でも、瑛子はかなり人を相手にしたぶつかりあいがあることが分かったので、基礎体力をアップさせるためにキックボクシングを取り入れました。動ける筋肉をつけたい、と考えたときに、一番効率的なのが全身の筋肉を動かすキックボクシングだ、とアクションチームと相談して決めたんです。

――スタントを使わなかった理由は?

黒木:スタントを使わないことを決めたのは……なりゆきですかね(笑)。スタントを使う使わないという話はなくて、稽古期間中に動きをつけていく中でやってみたらできてしまい、「これなら大丈夫だね」ということになってしまったんですよね。ノースタントを狙った作品ということではないんですよ。

――ここまで動く役、『ルパン三世』以来じゃないですか?

黒木:あ、そうかも。峰不二子役のときはボディメイキングもしながらだったから本当に大変だったんですよ(笑)。

――キックボクシングはワークアウトのプラス要素ということですが、普段からやってるトレーニングもハードなんですか?

黒木:とにかく「毎日やる」ことを目標にしているので、全然やる気がない日も、1分間でもいいからトレーニングする、ということを大事にしてます。ギチギチに詰め込んだルーティンを作ってしまうと続かないですしね。昔は気分悪くなるくらいに追い込んで運動してた時期もあるんですが、追い込むのはあまり得意じゃないので、今はそのときにできる範囲内で毎日なにか運動するということを続けています。

――今回のフィジカルの準備期間は?

黒木:撮影前3か月くらいですね。まあまあきつかったです。

――その甲斐あって……というか、そのせいでスタントがなくなり(笑)。

黒木:そうなりますよね(笑)。

――とはいえ、実際のアクションシーンの撮影は緊張されました?

黒木:緊張する暇がなかった……ですね。廣木監督はカットをあまり割らずに撮影されることを決めていたので、一発で撮れるようにアクションチームがコーディネートしたんですけど、第1話でナイトクラブに乗り込むシーンをやってみたら一発オーケーが出てしまい。すごく嬉しいしありがたかったんですが、本当に一瞬で終わっちゃったんです。練習もセットや振り付けの作り込みもかなり綿密にやっていたのに一瞬だったから、OKがでたときに「え、うそでしょ」って思ったのが正直なところでした。

――それとともに瑛子はめちゃくちゃ走りますよね。

黒木:常に誰かを追っかけたり、追っかけられたりしてましたね。じつは走るの嫌いなんですけど。

――え?

黒木:いや、ほんとに(笑)。でも、この作品のいいところじゃないですか。実際に上野でロケができたので、瑛子が走ることによって、上野の多国籍感はもちろん本物のロケーションが持っている雰囲気を映し出すことができるんです。実際の物語の舞台で撮影できたことで、お芝居の上でも役に立ったと感じてます。

――東上野〜御徒町あたりのカオスは、そうそう他の場所にはありませんよね。

黒木:お店もそうですが、街を行き交う人たちも「日本人いる?」ってくらいに多国籍ですよね。コリアンタウンの焼肉とか行ってみたかったですけど、そんな余裕はありませんでした。

――なかなか見られないな、と思ったのはUFOキャッチャー。あのシーンは後半部なので詳細は避けますが。

黒木:あれ、本気でやったんですよ(笑)。ちょっとだけ取りやすい位置に動かしてもらってますけど。ほんっと、あれを得意にしている人たちが信じられない。だって、あんなにアームが弱くて取れるわけがないじゃないですか。でも、たまにやりたくなってゲームセンター行きますけどね(笑)。

――マジですか(笑)。ではバイクは?

黒木:走行シーンはスタントの方がやられてますけど、駐車するところは自分でやってます。普段バイクは乗らないから、体重移動とか姿勢とかは現場で教えてもらいました。

――共演の皆さん、皆さん強めのキャラでしたが、影響を受けられました?

黒木:それはもう。りょうさんはインリーにしか見えませんでしたし……中国語の発音は大変そうでしたけど。あと組長役の奥田瑛二さんですね。以前共演しているので、撮影に入られる前はニコニコお話していただいていたんですが、カメラの前にいくと……目の奥が笑ってない。それで一気に空気が締まるんですよ。あの経験はすごくいい刺激になりました。

――上司役の池内博之さんも共演歴ありますよね。

黒木:10年以上前に一度ご一緒してますが、ほんっと渋くなられて。上司感がすごいんですよ。共演したときの爽やかなイメージがあったので、ちょっとびっくりしました。オフカメラの場所では以前と変わらないムードメーカー的な存在だったんですけどね。

――同僚役の高良健吾さんは?

黒木:私と一緒のシーンでアクションが多かったんですが、こう見せたほうがいい、と提案されてましたね。とにかくディスカッションが大事だって感じましたし、プロフェッショナルな姿勢は刺激になりました。

――瑛子が戻れない道を歩んでいく決意表明をするシーンがありますが、黒木さん自身「あ、もう引き返せない」って感じた経験は?

黒木:それ、毎回のお仕事で感じてます。この作品もそうですけど、やるって言ったからにはやるんですが、やっぱりある程度プレッシャーがあるし、「もう絶対逃げられない」って感じてます。瑛子と違うのは、仕事だと絶対に終わりがあるからやりきれる(笑)。

――ちなみに瑛子を演じるために、原作以外の参考にしたものはありましたか?

黒木:監督から韓国ドラマの『マイネーム:偽りと復讐』をすすめられました。この作品と同じく、女性の復讐劇ということで、何かの参考になるかも、と。

――あ、マル暴ものじゃなかったんですね。

黒木:ですね。警察もので個人的に好きだったのは「孤狼の血」。あの作品で役所広司さんが演じてる刑事も、瑛子と同じく、うまく進まないから警察だけど敵側の懐に入っていくキャラクターですし。

――そしてどっぷり浸かりすぎて破滅するのが「孤狼の血」ですね(笑)。ソレに対して瑛子はマジ強い。ブレない。

黒木:それはきっと大切なものを失った喪失感から立ち直るために、真実を追い求めていく中、歯止めがきかず怖いものがなくなってしまってるからでしょう。その危なっかしさだけじゃないのが瑛子の特徴かな、と思うのが、インリーとリカのシーンですね。華僑裏社会に通じているインリーは瑛子の協力者のひとりですが、彼女達といっしょにいるときだけは、他では見せない気を許した表情をするんですよ。本来の瑛子はこっちなんだろうな、と思いながら演じていました。

――瑛子に共感したところはその部分ですか?

黒木:そこにも共感しましたし、真実を追い求める姿は理解できます。ただ、瑛子は権力側のひとりなのに手段を選ばずにやっちゃうから、全面的に共感できるかというとそうではないんですけどね。共感というよりは応援したくなるキャラクターです。

――権力組織のなかだけでなく、敵対組織に対しても奮闘する女性のかっこよさに惹かれますよね。一昔前にこの手のキャラを描いたら男をねじ伏せるのが通例でしたが、瑛子は男をねじ伏せたり利用したりもしない。

黒木:人気があるキャラクターというのがうなずけますよね。私、これまでのキャリアを振り返ってみたら、警察側の役を演じてることがけっこうあったんです。そのなかでも瑛子はグレーゾーンを生きているキャラクターなので新しいチャレンジになったと感じてます。

――そういえば警察側の役多いですよね。もっとやりたいですか?

黒木:この作品をやってみて真逆の役やってみたくなりましたね。

――悪役ですか。りょうさんが演じたインリーみたいな?

黒木:インリーは悪いことをしているかもしれないけど、その一方で人助けしていて人間味があるんですよね。そうじゃなくて、絶対悪みたいな……感情を失った殺し屋とか(笑)。

――それ、見てみたいですね(笑)。恋愛ものはもうやらないんですか?

黒木:え、それ観たいですか?

――いやいや、観たいでしょ。

黒木:うーん……いるかな、そういう人。悪役以外でやってみたいのは、沖縄が舞台になっている作品ですね。沖縄の方言でお芝居をしてみたいんですよ。

――言われてみればないですよね。

黒木:そうなんです。このお仕事を始めたばかりのころは、沖縄のイントネーションを抜いて標準語でお芝居するのに苦労したんですよね。一度台本を頭の中で沖縄の言葉にして感情を入れてから標準語のお芝居をする、といった手順で。外国語のお芝居に近いかもしれない。だから、デビュー当時から沖縄の言葉のままでお芝居したらどうなるんだろう、っていう興味があるんです。

――これまた観たいジャンル。では最後にこの作品をこれからご覧になる方へ。

黒木:シリーズ作品で5話ありますが、一度見始めるとあっという間。なんとなくでもいいからプラットフォーム上で選んでいただけたら、絶対に期待以上のものを見られると思います。

【作品情報】
八神瑛子上野中央署組織犯罪対策課

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