7月22日(水) 0:10
Aさんの考えは、「妻が相続したお金を夫婦で住んでいる家のローン返済にあてても問題ないのではないか。すでに相続税を払っているのだから、さらに贈与税が課せられるのはおかしいだろう」ということでした。
まず、妻が相続した財産が誰のものかを確認しておきましょう。そもそも、婚姻期間中に築いた財産は夫婦2人のものです。これは民法で定められています。ですから、万一離婚するとなれば、銀行預金が誰の名義であるかは関係なく、婚姻期間中に築いた財産を夫婦で半分に分けることになっているのです。
ただし、夫婦の共有とならない財産があります。例えば、結婚前から持っていた財産、そして相続によって得た財産もそれにあたります。つまり、妻が相続で受け取った財産は妻固有の財産です。
では、夫婦で住んでいる家の住宅ローンを妻の財産で返済することに問題はあるのでしょうか。それは、誰の家なのか、住宅ローンを返済すべき人が誰なのかによって異なります。
例えば、家が夫婦それぞれ50%ずつの共有名義で、夫婦で連帯債務の住宅ローンやペアローンを組んでいる場合、残債3000万円のうち妻の返済負担分(50%)までは繰上げ返済しても贈与税はかからないと考えられます。
もちろん、それを超えて夫の負担分まで妻が返済すれば、その部分は、妻から夫への贈与があったとされ、贈与税がかかる可能性が高いでしょう。民法では共有財産であっても、税金は税法に基づいて計算されます
Aさんの場合、自宅の土地・建物はAさんの単独名義で、住宅ローンの契約者もAさんです。このようなケースで、妻の財産から住宅ローンの繰上げ返済をすれば、妻から夫への贈与があったと判断され、贈与税が課税される可能性が高いのです。
その場合、相続税はどのくらいになるのでしょうか。仮に3000万円の夫婦間の贈与だとすると、暦年課税の基礎控除額である110万円を引いた2890万円が贈与税の対象となります。税率は50%、控除額が250万円ですので、
(3000万円 - 110)万円 × 50% - 250万円 = 1195万円
贈与を受けた夫に1195万円の贈与税が課税されます。
婚姻期間が20年を超えた夫婦でマイホームなどを贈与する場合は、最高2000万円の配偶者控除を受けられるという特例がありますが、国税庁のホームページでは「居住用不動産または居住用不動産の購入資金の贈与があったとき」とされているので、住宅ローン返済の資金で適用される可能性は低いと思われます。
贈与税がかからないようにするには、110万円の基礎控除を利用して、年に110万円以下を複数年に分けて贈与し、繰上げ返済するという方法があります。
ただ、これで3000万円を贈与するでは、28年かかるので現実的ではありません。どうしても妻が相続した3000万円を繰上げ返済に使いたいということであれば、税理士に相談してみるのがよいでしょう。
Aさんは、妻が相続したお金が夫婦2人の財産と勘違いしていたのですが、説明を聞いてなるほどと納得してくださいました。奥さまにとっては、父親が遺してくれた財産ですから、自分でどう使うかを考えたいという気持ちがあることでしょう。
まずは、奥さまの考えを確認したうえで、少しずつでも住宅ローンの繰上げ返済ができないか相談することをお勧めしました。
国税庁財産をもらったとき
国税庁配偶者への贈与と配偶者控除
執筆者 : 蟹山淳子
CFP(R)認定者
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