特集上映「脚本家 奥寺佐渡子の世界 30年の軌跡 『お引越し』から『国宝』まで」が、京都シネマで9月11日から9月24日まで開催されることが決定した。
本特集は、日本映画の第一線で数々の作品を支えてきた脚本家・奥寺佐渡子に焦点を当て、その創作の歩みをスクリーンでたどる貴重な機会となる。1993年公開の「お引越し」で映画脚本デビューを果たして以降、奥寺は実写映画、アニメーション、文学作品の映画化など、幅広いジャンルの作品に参加してきた。人物の感情を過度に説明することなく、さりげない会話や行動の積み重ねによってドラマを立ち上げる筆致は、多くの観客の記憶に残る映画の時間を生み出してきた。
近年も話題作への参加を通して、その確かな脚本力にあらためて注目が集まっている。子どもの目線から家族の変化を見つめたデビュー作から、最新作「国宝」に至るまで、奥寺がどのように人物を描き、物語を組み立て、日本映画の豊かな表現を支えてきたのか。上映作品は、相米慎二監督による「お引越し 4Kリマスター版」、平山秀幸監督による「学校の怪談」、李相日監督による「国宝」、そして後日発表予定のもう1作品を加えた計4作品。本特集は、その30年にわたる軌跡をまとめて体験できる、映画ファン必見の特集上映となる。
本特集で上映する「お引越し」は、両親の別居をきっかけに揺れ動く少女の成長を描いた作品。子どもの視点から家族の変化を見つめる物語でありながら、単なる家庭劇にとどまらず、ひとりの少女が現実を受け止めていく過程が丁寧に描かれている。奥寺にとって映画脚本デビュー作となった本作には、登場人物の心の動きを繊細にすくい上げる、その後の仕事にも通じるまなざしがすでに表れている。
「学校の怪談」は、1990年代を代表するジュブナイル・ホラーとして、多くの観客に親しまれてきた作品。学校という誰にとっても身近な場所を舞台に、子どもたちが不思議な出来事に遭遇する物語は、恐怖だけでなく、夏休み前の空気や子どもたちの関係性も含めて記憶に残る。怪談という題材の中に、子どもたちの行動や感情の変化を自然に織り込み、娯楽映画としての楽しさと人物描写を両立させている点に、奥寺脚本の確かな構成力を見ることができる。
「国宝」は、吉田修一の同名小説を原作に、歌舞伎の世界に生きる人々の長い歩みを描く作品。任侠の一門に生まれた喜久雄と、上方歌舞伎の名門の御曹司・俊介。出自の異なる二人を軸に、芸、家柄、修業、舞台、師弟関係、ライバル関係が大きな時間の流れの中で描かれる。奥寺は、重厚な原作世界を映画として成立させるために、人物の関係性と時間の推移を整理しながら、壮大な物語を観客に届ける脚本へと結実させている。
さらに本特集では、奥寺のフィルモグラフィを語るうえで欠かすことのできない、もう1作品の上映も予定。作品名は後日発表となるが、「お引越し」から「学校の怪談」、そして「国宝」へと続く流れの中で観ることで、奥寺がいかに多様な題材に向き合い、それぞれの作品にふさわしい物語の形を作り上げてきたかが、より立体的に見えてくる特集となっている。
なお、会期中の9月21日には、奥寺が登壇するティーチインも開催。加えて、特集上映にあわせた作品の魅力をさらに広げる追加イベントも現在準備中だ。
本特集上映開催に向けて、奥寺からコメントが寄せられた。
【奥寺佐渡子】
このたび4作品も上映していただくことになりました。ありがとう、京都シネマさん! デビュー作「お引越し」(原作:ひこ・田中 脚本:小此木聡と共作)の撮影は1992年、京都で行われ、私も見に行きました。デビュー作ですから現場見学も初めてです。夏の京都は暑い。けれど空も雲も町も川も輝いていました。カメラの後ろで、大勢のスタッフが働いているのを見たのも初めてのことでした。これが映画の撮影現場というものか。私はそこに足を踏み入れたんだ! 当時、奥寺26歳。現場の指揮をとる相米慎二監督44歳……44歳? 今の私より、はるかに年下だったの?! それもそのはず、デビューから30年ほど経ちました。才能あふれる監督・キャスト・スタッフと苦楽をともにした、あっという間の30年です。私がどれほど出会いに恵まれたのか、今回上映される4作品をご覧になれば一目瞭然。ティーチインにも、ぜひ足をお運び下さい。口下手ですが、がんばります。
【作品情報】
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国宝
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