2度目のワールドカップ制覇を遂げたスペインphoto by JMPA
ワールドカップ決勝とは、すなわち、世界一決定戦である。
ともにこれまで7試合を戦い抜き、決勝に勝ち上がってきた両雄の間には、しかし、予想以上に力の差があったと言わざるを得ない。
スペインvsアルゼンチンの頂上決戦は、互いに無得点のまま、延長戦までもつれ込んだ。勝ったスペインの得点は、フェラン・トーレスが決めた1点のみ。スコアの上では、1-0の接戦である。
しかし、アルゼンチンがこの試合で放ったシュートは、わずか2本。枠内シュートはゼロだ。しかも、その2本はいずれも延長戦に入ってからのもの。つまりは、正規の試合時間である90分の間には、1本のシュートも打つことができなかったのである。
アルゼンチンは、いかにスペインの猛攻にさらされていても、どこかでリオネル・メッシがチャンスを作り出し、試合を決めてしまうのではないか。
そんな期待(スペイン側に立てば、不安)とともに試合を見ていた人は多かっただろう。だが、結果が出た今となっては、それは単なる幻想(スペイン側に立てば、杞憂)にすぎなかった。
スペインはただボール保持率が高いだけではなく、敵陣でのボール奪回も早く、アルゼンチンにチャンスを作らせるどころか、ほとんど前進を許さなかったからだ。
スペイン代表を率いる、ルイス・デ・ラ・フエンテ監督が語る。
「コーチ陣がすばらしいプランを立ててくれた。アルゼンチンを完璧に研究し、プラン全体が理想的に機能した」
結果的に、後半アディショナルタイムの90+3分に、アルゼンチンのエンソ・フェルナンデスが2枚目のイエローカードを受けて退場となったことが、試合の流れを決定づけたかのようにも見える。しかしそれ以前から、アルゼンチンは何も起こせずにいたというのが現実である。
「相手の強みは数多くあるが、それを最小限に抑え、自分たちの強みを最大限に活かす必要があると理解していた」
そう語るデ・ラ・フエンテ監督は、「相手GKの活躍がなければ、ほぼ完璧な試合だったと思う」と、誇らしげに続けた。
今大会は、出場国数が32から48に増えたことにより、優勝するためには前回大会よりも1試合多い、8試合を戦わなければならなかった。
その点、常にボールを保持し、自らが主体的に試合を進めるスペインは、心身両面での消耗が他国よりも抑えられていた可能性は高い。
一方で、アルゼンチンは決勝トーナメントに入って以降、これが3試合目の延長戦。それ以外の2試合も、最終盤まで勝負の行方がわからない、いかにも消耗が激しい試合を強いられてきた。
しかも、決勝が行なわれたニューヨーク・ニュージャージースタジアムには屋根がなく、キックオフ時はピッチ全面が直射日光に照らされていた。ようやくピッチの半分ほどが日陰になったのは、延長戦に入ってからのことである。
15時キックオフという暑さのなかで迎えた決勝戦において、それぞれのサッカースタイル、そして勝ち上がり方を比べたとき、スペイン優位は明らかだった。
それほどにスペインは、徹底してボールを保持してパスを回し、常に敵陣でサッカーをし続けた。それは相手がどこで、どんなサッカーをしてこようとも、今大会を通じて貫かれた、スペインの確固たるスタイルである。
ただし、現在のスペインは、ユーロ(2024年)とワールドカップを連覇したものの、まだまだ未完成の、どこか危うさを感じさせるチームでもある。実際、ボールポゼッションを高めて敵陣深くまで攻め込みながら、絶対的なセンターフォワードを持たないチームは、点を取ることに苦労する試合が珍しくない。今大会のグループリーグでも、得点するのにてこずる試合が目立った。
その意味で言えば、フランスに何もさせずに効率よく2点を奪った準決勝より、ボールを保持し続けるものの、もたつきも目についた決勝のほうが、今のスペインらしさが出ていた、と言えるのかもしれない。
裏を返せば、ユーロ、ワールドカップの二冠を制してもなお、現在のスペインはさらに強くなる余地を残している、とも言えるだろう。
デ・ラ・フエンテ監督もまた、こんな言葉で決勝を振り返っている。
「もっとよい結果を残せたかもしれないが、このチームの歩み、努力、そしてハードワークは、将来私たちをより強くしてくれると確信しているので、とても満足している」
今大会のスペインは、グループリーグ初戦でカーボベルデとスコアレスドローに終わり、不安な船出となった。
だが、大会が進むごとに調子を上げると、最後は優勝候補のフランス、アルゼンチンを立て続けに手玉に取った。
終わってみれば、スペインの強さばかりが際立った、16年ぶり2度目の世界制覇である。
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