誰も住んでいない実家を売りたいのですが、雨漏りや設備の故障があります。修繕してから売るべきでしょうか?

誰も住んでいない実家を売りたいのですが、雨漏りや設備の故障があります。修繕してから売るべきでしょうか?

7月20日(月) 0:00

誰も住んでいない実家を売却しようとしたところ、天井や壁に雨漏りの跡があったり、給湯器やエアコン、トイレなどの設備が故障していたりするケースがあります。「不具合をすべて直さなければ売却できないのではないか」「修繕したほうが高く売れるのではないか」と考える人もいるでしょう。 結論からいうと、雨漏りや設備の故障があっても、その状態を買主に伝えたうえで売却することは可能です。必ずしも、売主がすべてを修繕してから売る必要はありません。 ただし、雨漏りを放置すると建物の傷みが広がる可能性があります。また、修繕せずに売る場合でも、把握している不具合を買主に正確に伝え、売買契約書で建物の状態や責任範囲を明確にすることが重要です。 本記事では、雨漏りや設備の故障がある実家について、修繕してから売る場合と、現状のまま売る場合の違いや判断基準を解説します。

雨漏りや設備の故障があっても売却できる

中古住宅は、新築住宅とは異なり、建物や設備に一定の経年劣化があることを前提として取引されます。そのため、雨漏りの跡がある、給湯器が使えない、エアコンが故障しているといった不具合があっても、買主がその状態を理解して購入するのであれば売却できます。
 
例えば、購入後に全面的なリフォームを予定している買主であれば、古い設備が故障していても大きな問題にならないことがあります。建物を解体して土地として利用する買主にとっては、設備を修理する必要自体がありません。
 
一方で、購入後すぐに入居したい人にとっては、雨漏りや設備の故障が購入をためらう理由になる可能性があります。
 
大切なのは、「不具合があるから売れない」と考えるのではなく、どのような買主を想定して、どのような条件で売り出すかを整理することです。
 

高額な修繕をしても売却価格に上乗せできるとは限らない

売却前に修繕すれば、建物の印象がよくなり、買主が安心して検討しやすくなる可能性があります。ただし、修繕にかかった費用を、そのまま売却価格へ上乗せできるとは限りません。
 
例えば、雨漏りの修繕と内装の復旧に200万円をかけたとしても、売却価格が200万円以上高くなるとは限りません。購入希望者が土地の価値を中心に判断している場合や、購入後にリフォームする予定の場合は、売主が行った修繕が十分に評価されないこともあります。
 
また、売主が選んだ壁紙や設備が、買主の好みに合わない場合もあります。買主が購入後に再び設備を交換するのであれば、売却前に行った工事が無駄になる可能性もあります。修繕するかどうかは、工事費用だけでなく、修繕によって見込める売却価格の上昇額や売却期間の短縮効果も含めて判断することが大切です。
 

修繕してから売ることを検討したいケース

すべての不具合を直す必要はありませんが、建物の状態によっては、売却前に一定の修繕を行ったほうがよい場合があります。
 

現在も雨水が入り続けている場合

雨が降るたびに建物内へ水が入っている場合は、売却活動中にも被害が広がる可能性があります。天井や壁の仕上げ材だけでなく、柱や梁、断熱材、床下などに水分が入り込むと、修繕範囲が広がることがあります。カビや腐食、においの原因になる可能性もあります。
 
国土交通省は、空き家は適切な管理が行われないと老朽化や損傷が進み、活用が難しくなる場合があるとしています。
 
すぐに本格的な修繕を行わない場合でも、屋根を養生する、割れた窓をふさぐ、雨どいを補修するといった応急措置を検討しましょう。
 
ただし、雨漏りは水が見えている場所と、実際に水が入っている場所が異なることがあります。内装だけを直すのではなく、専門業者に原因を確認してもらうことが重要です。
 

比較的小さな修繕で印象を改善できる場合

修理費用がそれほど高くなく、修繕によって買主の不安を減らせる場合は、売却前に対応する方法があります。
 
例えば、蛇口の水漏れ、割れた窓ガラス、外れた建具、壊れた照明スイッチなど、原因と修理範囲が明確な不具合です。内見時にすぐ目に入る不具合が少なくなれば、建物全体に対する印象がよくなる可能性があります。
 
ただし、小さな修繕を積み重ねた結果、想定以上の費用になることもあります。修理項目ごとに見積もりを取り、売却への効果が期待できるものから優先しましょう。
 

修繕しないと安全上の問題がある場合

屋根材や外壁材が落下するおそれがある、漏電の危険がある、床が抜けそうになっているといった場合は、売却価格よりも安全確保を優先する必要があります。内見する人や不動産会社、近隣住民に危険が及ぶ可能性があるためです。
 
本格的な修繕を行わない場合でも、危険な場所へ入れないようにする、電気やガスを止める、落下しそうな部材を撤去するといった対応を検討しましょう。
 

購入後すぐ住める住宅として売りたい場合

ファミリー層など、購入後すぐに入居したい人を対象に売却する場合は、雨漏りや給湯設備、水回りの故障が大きなマイナス要因になる可能性があります。建物の立地や間取りがよく、修繕後の中古戸建てとして需要が見込める場合は、必要な部分を修繕してから売り出す方法も考えられます。
 
ただし、どこまで修繕するかは、不動産会社に想定される買主層を確認したうえで決めましょう。
 

現状のまま売ることを検討しやすいケース

不具合があっても、修繕せずに売り出したほうが合理的な場合があります。
 

買主によるリフォームが想定される場合

築年数が古く、内装や設備全体のリフォームが必要な住宅では、給湯器やキッチンなど一部の設備だけを交換しても、売却への効果が限定的になることがあります。
 
購入後に自分好みの間取りや内装へ変更したい買主であれば、売主による修繕よりも、その分だけ価格が抑えられていることを重視する可能性があります。この場合は、「リフォーム向き住宅」「修繕を前提とした価格」として売り出す方法が考えられます。
 

建物より土地の価値が重視される場合

建物が古く、購入後の解体が想定される場合は、設備を修理しても売却価格に反映されにくいでしょう。
 
古家付き土地として売却するのであれば、給湯器やエアコン、トイレなどを新品に交換する必要性は低いと考えられます。ただし、建物を残した状態で売却活動を行う間は、倒壊や部材の落下などが起きないように管理する必要があります。
 

修繕費用が高額になる場合

雨漏りの原因が屋根全体や外壁、バルコニーの防水にあり、大規模な工事が必要になる場合があります。
 
さらに、内部の柱や断熱材、天井、壁などにも被害が及んでいれば、工事費用が増える可能性があります。高額な修繕を行っても売却価格が大きく上がらないと予想される場合は、修繕費用を考慮して売り出し価格を設定し、現状のまま売る方法が考えられます。
 

早期売却を優先したい場合

修繕工事には、業者の選定、見積もり、工事内容の決定、近隣への説明、工事の実施などが必要です。雨漏りの原因を特定できなければ、追加調査や追加工事が必要になることもあります。
 
相続手続きや維持費の負担などを理由に早く売却したい場合は、修繕に時間をかけず、現状のまま売り出す方法や、不動産会社による買取を検討する方法があります。
 

雨漏りと設備の故障は分けて考える

雨漏りと設備の故障では、建物に与える影響が異なります。
 

雨漏りは被害が広がらないように対応する

給湯器やエアコンが故障していても、使用しなければ建物自体への被害が広がらない場合があります。
 
一方、雨漏りは、放置している間にも建物内部へ水が入り続ける可能性があります。そのため、全面的に直すかどうかとは別に、被害の拡大を防ぐ対応が必要です。
 
雨漏りについては、次のような点を確認しておきましょう。
 

・雨が降ったときだけ発生するのか
・現在も雨漏りしているのか
・過去に修繕した履歴があるか
・天井や壁以外にも被害があるか
・原因が屋根、外壁、窓、バルコニーなどのどこにあるか

 
原因が分からないまま内装をきれいにすると、売却後に再び雨漏りが発生する可能性があります。表面を隠すための修繕ではなく、原因と修繕範囲を確認することが大切です。
 

古い設備は無理に新品へ交換しない

給湯器、エアコン、キッチン、トイレなどが故障している場合、必ずしも新品へ交換する必要はありません。設備を交換しても、買主が希望するメーカーや性能、デザインと異なれば、購入後に再度交換される可能性があります。
 
特に、建物全体のリフォームが必要な住宅では、設備の交換費用をかけるよりも、故障していることを明確にしたうえで価格へ反映したほうが、買主にとって分かりやすい場合があります。
 
一方、設備が比較的新しく、軽微な修理で使用できるのであれば、修理して作動確認をしておく方法も考えられます。
 

建物状況調査を利用する方法もある

雨漏りの範囲や建物の劣化状況が分からない場合は、建物状況調査、いわゆるインスペクションを利用する方法があります。建物状況調査では、専門知識を持つ調査者が、目視や計測などによって建物の劣化や不具合の状況を確認します。
 
国土交通省は、空き家を売却する際にインスペクションを行うことで、売却後のトラブルを防ぎやすくなることや、修繕・リフォームの必要性を検討する際の参考になると案内しています。
 
調査結果があれば、どの部分を優先して直すべきか、不具合を価格へどの程度反映すべきかを判断しやすくなります。買主に建物の状態を説明する資料として利用できる場合もあります。
 
ただし、建物状況調査は、住宅に一切の不具合がないことを保証するものではありません。調査できない場所や、調査時には確認できない不具合が残る可能性があります。国土交通省の建物状況調査制度でも、目視できない部分などは調査対象外となる場合があり、すべての不具合を保証するものではないとされています。
 
調査を依頼する際は、調査対象となる場所や設備、費用、報告書の内容を確認しましょう。
 

修繕しない場合も不具合の告知は必要

雨漏りや設備の故障がある住宅を売る場合、売主が把握している不具合を買主へ伝えることが重要です。
 
一般的には、「物件状況等報告書(告知書)」などを使って、雨漏り、シロアリ被害、建物の傾き、給排水管の故障、設備の不具合などを記載します。
 
中古住宅では、現在の状態や引き渡し時の状態を明確にし、買主がその内容を理解したうえで契約することが、引き渡し後のトラブルを防ぐうえで重要とされています。
 
現在の民法では、引き渡された不動産が契約で合意した種類や品質などに適合していない場合、買主が修補、代金減額、損害賠償、契約解除などを求められる可能性があります。これを契約不適合責任といいます。
 
そのため、「現状有姿で売る」と契約書に記載するだけで、売主が必ずすべての責任を免れるとは限りません。
 
少なくとも、次のような内容を不動産会社へ伝えましょう。
 

・雨漏りが発生した時期や場所
・現在も雨漏りしているか
・過去に修繕した内容と時期
・故障している設備
・使用していないため作動状況が分からない設備
・シロアリや腐食など、ほかに把握している不具合
・修理業者から説明を受けた内容

 
相続した実家では、売主自身が住んでいなかったため、建物の状況を把握していないこともあります。その場合は、無理に「問題なし」と記載せず、「不明」「作動未確認」など、分かっている範囲を正確に伝えることが大切です。
 

修繕する場合は工事記録を残す

売却前に雨漏りや設備を修繕する場合は、工事内容が分かる資料を保管しましょう。
 
具体的には、次のようなものです。
 

・修繕前後の写真
・業者の見積書と請求書
・工事内容が記載された報告書
・保証書
・交換した設備の型番や取扱説明書
・雨漏りの原因に関する説明書類

 
単に「修理済み」と伝えるより、いつ、どこを、どのように修理したのかが分かるほうが、買主に説明しやすくなります。過去に何度も雨漏りが発生している場合は、直近の修繕だけでなく、以前の発生状況や工事履歴も伝えましょう。
 

現状のまま売却する主な方法

修繕しない場合でも、売り方を工夫することで購入希望者が見つかる可能性があります。
 

修繕費用を考慮した価格で仲介売却する

不動産会社に仲介を依頼し、雨漏りや設備の故障を明示したうえで、一般の買主を探す方法です。購入後の修繕費用を買主が負担するため、修繕済みの住宅より価格を抑えて売り出すことが考えられます。
 
リフォームを前提とする買主や、建物を自分好みに直したい買主に向けて販売する方法です。
 

修繕を条件として契約する

建物を現状のまま売り出し、購入希望者との合意のうえで、売主が特定の箇所を修繕してから引き渡す方法もあります。
 
買主が求めている箇所だけ修繕できるため、売主が先に不要な工事を行うリスクを抑えられます。ただし、修繕する場所、工事内容、完了時期、費用負担、修繕後に不具合が再発した場合の扱いを契約書で明確にする必要があります。
 

不動産会社に買い取ってもらう

不動産会社が直接買主となる買取では、不具合がある状態でも相談できる場合があります。
 
不動産会社が購入後に修繕やリフォーム、解体などを行うことを前提に価格を算定するためです。ただし、修繕費用や再販売に必要な費用などが考慮され、仲介で一般の買主へ売る場合よりも提示価格が低くなる可能性があります。
 
買取を検討する場合は、仲介で現状のまま売る場合の査定額と、買取価格の両方を確認しましょう。
 

古家付き土地として売る

建物の老朽化が進み、修繕費用が高額になる場合は、建物に大きな価値を付けず、古家付き土地として売る方法があります。
 
買主が建物を修繕して使うか、解体して新築するかを選べる方法です。ただし、再建築の可否や接道状況などによっては、建物を解体すると土地の利用が制限される可能性があります。売却前に解体する場合は、不動産会社や自治体の担当窓口へ確認しましょう。
 

修繕前と修繕後の手取り額を比較する

修繕するかどうかを判断する際は、査定価格だけではなく、最終的に手元へ残る金額を比較することが大切です。
 
例えば、次の2通りで計算します。
 
修繕して売る場合は、「修繕後の想定売却価格-修繕費用-売却までにかかる維持費」です。現状のまま売る場合は、「現状での想定売却価格-売却までにかかる維持費・管理費用」です。
 
仮に修繕後の売却価格が300万円上がるとしても、修繕費用が400万円かかるのであれば、金額だけを見ると現状のまま売ったほうが手元に残る可能性があります。
 
反対に、50万円程度の修繕によって買主の不安を減らし、売却期間の短縮や大幅な値下げの回避が見込めるのであれば、修繕する意味があるかもしれません。
 
実際には、工事中の固定資産税、火災保険料、庭の管理費、空き家管理費なども考慮しましょう。
 

まずは修繕前の状態で査定を受ける

雨漏りや設備の故障があるからといって、不動産会社へ相談する前に修繕を始める必要はありません。
 
まずは現状を見てもらい、次の条件で査定を依頼しましょう。
 

・不具合を残したまま仲介で売る場合
・必要な部分だけ修繕して売る場合
・建物全体をリフォームして売る場合
・古家付き土地として売る場合
・不動産会社に買い取ってもらう場合

 
併せて、雨漏りの修繕業者から見積もりを取り、修繕費用と想定売却価格を比較します。
 
不動産会社によって、リフォーム向き住宅の販売を得意とする会社、土地としての販売に強い会社、買取を得意とする会社など、提案が異なる場合があります。1社の査定だけで判断せず、複数社から査定額と販売方針を聞くことが大切です。
 

まとめ

誰も住んでいない実家に雨漏りや設備の故障があっても、必ずすべてを修繕してから売る必要はありません。
 
購入後にリフォームや解体を予定している買主であれば、現状のままでも購入を検討する可能性があります。また、高額な修繕をしても、その費用を売却価格へすべて上乗せできるとは限りません。
 
一方、現在も雨漏りが続いている場合や、安全上の問題がある場合は、被害の拡大や事故を防ぐため、応急措置や必要最低限の修繕を検討する必要があります。
 
修繕しないで売る場合でも、雨漏りや設備の故障を隠してはいけません。発生時期、修繕履歴、現在の状態などを物件状況等報告書に記載し、売買契約書で修繕の有無や責任範囲を明確にしましょう。
 
まずは修繕前の状態で複数の不動産会社へ査定を依頼し、現状のまま売る場合と修繕後に売る場合の想定価格を確認することが大切です。
 
修繕費用や売却期間、最終的な手取り額を比較したうえで、実家の状態や地域の需要に合った売り方を選びましょう。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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