”いじめ”や”仲間はずれ”などという言葉を聞くと、つい学校での出来事だと思ってしまいがちですが、実は大人社会でも普通に目にする悲しい現実があります。むしろ、より陰湿で過激なケースも少なくありません。
今回、その当事者に話を聞くことができました。淡々と当時の辛い日々を話してくれましたが、真っ向から立ち向かったその姿勢は立派なものでした。
入社1年を迎えて感じ始めた周囲の違和感
健康食品の製造販売会社に就職して1年が経とうとしている富永さん(仮名・24歳)。仕事ぶりもようやく板についてきた頃、なんとなくランチタイムの周囲の動きに違和感を覚えるようになったといいます。
「最初のうちは週2、3回くらいだったんです。でも気づいたらほぼ毎日になっていて」
入社以来、昼食といえば同期5人でそろってランチというのがお決まりのパターンだったそうです。ところがある時期から、富永さんが「ご飯行こう」と声をかけても、返ってくる答えはいつも「今日はランチミーティングがあるから」のひと言。
最初は仕方なしと受け入れていた富永さんですが、それが週を追うごとにほぼ毎日になり、気づけば1人で昼食をとる日々が続くようになったとのことです。
もともと社交的な性格だという富永さん。ひとりで黙々と弁当を食べながら、「自分だけ何か悪いことしたかな」と自問自答を繰り返していたようです。
上司Mによる"選別ランチ"の実態
「ランチミーティングって、いったい何をやってるんだろうって気になって」
と語る富永さんは、ある日思い切って同僚の1人に尋ねてみたそうです。すると、驚くべき実態が明らかになりました。直属の上司・Mが、富永さんを除いた同期4人を毎日外へ連れ出しているというのです。しかも行き先は、ちょっとお高めのビストロやランチビュッフェ。実質的に上司のおごりで食事をしているだけで、ミーティングらしい議題などほとんどないとのことでした。
その同僚は「富永のことを悪く言ってたわけじゃないけど……」と言葉を濁したそうですが、その後から少しずつ富永さんとの距離を置くようになっていったといいます。
「さすがに『これって意図的だな』と確信しました。なんで私だけなんだろうと気になるばかりです。さすがに心が折れそうになりましたね」
問題はランチだけにとどまりませんでした。上司Mは、業務上の報告や相談をしようとしても「今忙しいから」「後で」と適当にあしらうばかり。営業職として動く富永さんにとって、上司への相談は業務の根幹でもあり、このままでは会社にも迷惑がかかると感じ始めたのは、そう遠くない時期のことだったそうです。
意を決して"ハラスメント窓口"に相談を決意
悶々とした日々が過ぎていく中、富永さんが動いたのは、総務部が設けていた『ハラスメント相談窓口』への問い合わせでした。最初は名前を出すことへの抵抗もあったそうですが、意を決して実名で相談したそうです。
「翌日、向こうの担当者から『重要案件として扱いたい』連絡があり、それで改めて面談することになりました」
面談では、上司Mによるランチへの招集から始まり、業務上の無視や同僚との関係が壊れていった経緯まで、富永さんは包み隠さず打ち明けたとのことです。
「最初は赤裸々に話すことに抵抗があったのですが、担当の方が親身になって聞いてくれたので、すべてのいきさつを丁寧に話すことができました。なんか全部話したからか、とてもスッキリした気分になりました」
胸の内を全部吐き出したせいか、富永さんの心中はとても軽やかになったといいます。
掲示板に貼り出された"異動の知らせ"
面談からおよそ1か月が過ぎたある日、社内の掲示板にひっそりとある名前が載っていました。上司M——異動でした。
「正直、ほっとしたというか……やっと、という感じでした」
Mが姿を消すと、同僚4人との昼食も自然と入社当初の雰囲気に戻ったといいます。和気あいあいとしたランチタイムが戻ってきたとき、富永さんはようやく肩の荷が下りたような気持ちになれたそうです。
「Mさんが異動してしばらくたった頃、私の話を聞いてくれた総務課の担当者がいろいろと話してくれました。Mさんいわく、私の営業成績が同期の中で際立ってよかったことが気に入らなかったらしいのです。得意先に気に入られ売り上げが倍に伸びたのですが、元々その営業先はMさんが開拓したものでした。それが気に食わなかったようですね」
なんとも大人気ない理由から端を発した今回の異動。しかし、このようなことは過去にもあったと総務課の担当者は明かしてくれたようです。勇気を出して訴えたことが功を奏した今回の事案。抱え込まず勇気を出して打ち明けることの大切さを改めて痛感させられました。
<TEXT/八木正規>
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
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