7月16日(木) 22:10
不動産売買で「現状渡し」とは、基本的に売主が建物を修繕せず、現在の状態のままで引き渡すことを指します。
例えば、壁紙の汚れや設備の古さ、小さな傷などを修理しないまま売却するケースがこれに当たります。売主にとっては修繕費を抑えられ、買主にとってもリフォームを前提に購入しやすいというメリットがあります。
しかし、現状渡しだからといって、売主がすべての責任を免れるわけではありません。
民法では、契約内容に適合しない不動産を引き渡した場合、一定の条件のもとで売主が責任を負う「契約不適合責任」が定められています。契約内容と異なる状態だった場合には、買主から修補請求や代金の減額請求のほか、状況によっては損害賠償請求や契約解除を求められる可能性があります。
そのため、「現状渡し」という言葉だけで安心するのではなく、契約書にどのような内容が記載されているのかを確認することが大切です。
契約不適合責任とは、売却した不動産が契約内容に適合していなかった場合に、売主が一定の責任を負う制度です。
重大な雨漏りやシロアリ被害、建物の傾きなど、契約内容に適合しない不具合が見つかった場合には、買主から対応を求められる可能性があります。ただし、契約内容や免責特約などによっては、売主が責任を負わないケースもあります。
例えば、契約書に建物の状態が詳しく記載され、買主がその内容を理解したうえで購入している場合や、契約不適合責任の範囲について当事者間で合意している場合には、責任の内容が限定されることがあります。
また、個人間の売買では、契約によって契約不適合責任を免責または制限する特約が設けられるケースもあります。ただし、売主が知っていた不具合を故意に隠していた場合などは、免責が認められない可能性もあるため注意が必要です。
売却後のトラブルを防ぐためには、建物の状態をできるだけ正確に買主へ伝えることが重要です。「給湯器の調子が悪い」「過去に雨漏りを修理したことがある」「シロアリ駆除を行ったことがある」といった情報は、分かる範囲で事前に伝えておくことが望ましいでしょう。
また、不動産会社では、売主が建物の状況を記載する「物件状況報告書(告知書)」や「物件状況確認書」などの作成を求められることがあります。この書類を正確に作成することで、引き渡し後の認識違いを防ぎやすくなります。
さらに、建築士などの専門家によるホームインスペクション(建物状況調査)を利用すれば、建物の状態を客観的に把握しやすくなります。必須ではありませんが、古い住宅や長期間空き家だった物件では、買主の安心につながることもあります。
「分からないから書かない」のではなく、「分かっていることは正確に伝える」という姿勢が、トラブル防止につながります。「現状渡し」であっても、建物の状態を正確に伝え、契約内容を明確にしておくことが、売却後のトラブルを防ぐ最も有効な方法といえるでしょう。
相続した空き家を現状のままで売却すれば、修繕費をかけずに済む可能性があります。しかし、「現状渡し」と記載されていても、契約内容によっては売却後に一定の責任を負うケースがあるため、注意が必要です。
安心して売却するためには、建物の状態を正しく伝え、契約書にどのような条件が定められているのかを十分確認することが重要です。特に、契約不適合責任の範囲や免責に関する内容は、契約前に不動産会社へ確認し、不明な点があれば説明を受けておきましょう。
修繕するかどうかだけで判断するのではなく、契約内容まで理解したうえで売却を進めることが、売主・買主双方にとって安心できる取引につながります。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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