7月16日(木) 6:00
「年収800万円もあれば、老後はかなり多くの年金を受け取れるはず」と思う人は少なくありません。しかし、公的年金は現在の年収だけで決まる仕組みではありません。
会社員が受け取る老齢年金は、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2階建てです。老齢基礎年金は国民年金の加入期間などに応じて支給され、老齢厚生年金は厚生年金への加入期間と、その間の給与や賞与をもとに計算されます。日本年金機構では、この給与などに応じて決まる部分を「報酬比例部分」としています。
そのため、定年前の年収が800万円でも、若い頃から同じ水準だった人と、昇進などで後から年収が上がった人では年金額が異なります。また、厚生年金への加入期間が短ければ、高収入でも受給額はそれほど増えません。年金は生涯の働き方を反映する制度であり、現在の年収だけで決まるわけではないのです。
年収800万円の会社員が、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせて月18万円程度を受け取ることは、十分にあり得ます。
老齢厚生年金は、加入期間中の「標準報酬月額」や「標準賞与額」をもとに計算されます。標準報酬月額とは、給与を一定の幅で区分した金額で、実際の月給がそのまま使われるわけではありません。また、標準報酬月額や標準賞与額には上限があるため、年収が高くなっても年金額が同じ割合で増え続ける仕組みではありません。
例えば、年収が400万円から800万円へ倍になったとしても、将来受け取る年金が2倍になるわけではありません。公的年金は現役時代と同じ生活水準を維持する制度ではなく、老後の生活を支える基礎的な収入として設計されています。
なお、厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険(第1号)の老齢給付を受給している人の平均年金月額は、老齢基礎年金を含めて15万1142円です。これと比べると、月18万円は平均を上回る水準であり、高収入だった人として特別に低い年金額とはいえません。
また、月18万円が額面の場合、所得税や住民税、健康保険料、介護保険料などが差し引かれ、実際の手取り額は少なくなることがあります。老後の生活設計では、額面だけでなく手取り額も確認しておくことが大切です。
年金額を考える際は、年収だけで判断しないことが重要です。
厚生年金は加入期間が長いほど受給額が増えやすくなります。そのため、同じ年収でも、会社員として長く働いた人と、自営業などで厚生年金に加入していない期間がある人では、受け取れる年金額に差が生じます。
また、公的年金は原則65歳から受給しますが、60歳から64歳までに繰り上げて受け取ると年金額は減額され、66歳以降に繰り下げると増額されます。受給開始時期は老後の生活に大きく影響するため、健康状態や貯蓄額なども踏まえて慎重に判断しましょう。
将来の年金見込額は、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できます。特にねんきんネットでは、受給開始年齢を変更した場合の試算もできるため、老後の資金計画を立てる際に役立ちます。
年収800万円でも、年金が月18万円ほどになることは決して珍しくありません。公的年金は退職前の年収だけでなく、厚生年金への加入期間や生涯の報酬をもとに計算されるためです。
老後の生活では、公的年金だけで十分とは限りません。まずはねんきんネットなどで見込額を確認し、毎月の生活費と比較して不足があるかを把握するとよいでしょう。
そのうえで、退職金や預貯金、企業年金、iDeCoなども活用しながら準備を進めることが大切です。早めに老後の収支を確認しておけば、将来への不安を減らし、自分に合った生活設計を立てやすくなるでしょう。
日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 年金用語集 は行 報酬比例部分
厚生労働省年金局 令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 II. 厚生年金保険 (2)給付状況 表6 厚生年金保険(第1号) 受給者平均年金月額の推移(8ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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