【ワールドカップ】優勝候補筆頭のフランスはなぜ敗れたのか 「最強の個」を集めたスター軍団の落とし穴

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【ワールドカップ】優勝候補筆頭のフランスはなぜ敗れたのか 「最強の個」を集めたスター軍団の落とし穴

7月16日(木) 16:00

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ワールドカップ各国のカタチ──現代戦術と代表チームの葛藤

VOL.8:フランス

世界のサッカーは、ポジショナルプレーの普及によるビルドアップの進歩と、それに伴うハイプレスの普及で、全員守備が必須な時代に突入しようとしている。しかし、ワールドカップを戦う代表チームは、それぞれ特別な国民的スターを抱えているために、全員守備に舵を切れない事情がある。

ひとりのスターを残りのフィールドプレーヤーで支える「1+9」か、それともスターを入れない「10」か。強豪国それぞれの現状を探る。

【スター軍団はなぜ敗れたのか】 フランスは優勝候補筆頭だった。個々の能力は傑出していて、結束力もあった。しかし、準決勝でスペインに0-2。「完敗」と報じたメディアも多い。

今大会圧倒的に強く見えたフランスだったが、準決勝でスペインに敗れたphoto by JMPA

今大会圧倒的に強く見えたフランスだったが、準決勝でスペインに敗れたphoto by JMPA



だが、そこまで差のある内容ではない。スペインの先制点はPKによるもので、PKはリュカ・ディニュがボールの代わりにラミン・ヤマルを蹴ってしまったから。それまでは一進一退の流れだった。

スペインの2点目も唐突に決まっている。ペドロ・ポロがダニ・オルモとのワンツーから決めた形は鮮やかだったが、スペインはそれまでさほど決定機を作れていなかった。むしろ、フランスの守備陣が全員ボールウォッチャーになっていて、ペドロ・ポロをフリーにしてしまったミスによる失点である。ふたつのエラーによって落とした試合だった。

ただ、スペインは終始、自分たちのリズムでプレーしていた。FIFAランキング2位、37戦連続無敗はイタリアと並ぶ世界記録、今大会7試合1失点。

どの試合でも同じなのだが、実はスペインにそこまで"強者感"はない。記録ほど圧倒的には見えない。だが、どんな相手でも自分たちのサッカーができる。ボールをコントロールし、試合をコントロールできる。フランスが相手でも、それは同じだった。

フランスはスペインに彼らのサッカーをさせなければ勝てたはずだが、それは"最強の個の集団"であるフランスをもってしても不可能だったわけだ。

スペインに彼らのサッカーをさせない方法は自明で、ボールを保持させなければいい。フランスはマンツーマンで抑え込んでいく構えを見せていた。しかし、キリアン・エムバペやウスマン・デンベレが俊足を生かして追ってもボールの速度には勝てず、スペインのビルドアップを寸断するには至らなかった。

それでも、まだフランスに勝ち筋は残されていた。ブロック守備は強固で、奪ってからのカウンターアタックは世界最高だからだ。スペインは相手に守備を固められ、さらにヤマルを抑え込まれると得点に苦労する。エムバペ、デンベレ、ブラッドリー・バルコラでカウンターを仕掛ければ、ボールを保持されても試合に勝つチャンスはあった。だが、先制されたことで、これも使えなくなってしまった。ヤマルを抑えることもできていなかった。

フランスはフランスらしさを発揮しきれていない。試合は常に相対的なもので、スペインがスペインらしくプレーしていたからだ。

【1対1の個、関係性を作る個】 フランスの選手個々の能力は、世界最高水準と言われている。センターバックのダヨ・ウパメカノ、ウィリアン・サリバの広範囲をカバーする守備能力は傑出していて、エムバペ、デンベレ、バルコラ、デジレ・ドゥエ、マイケル・オリーセの1対1での優位性もある。スペインで彼らに対抗できる個はヤマルしかいない。

ただ、サッカーは単純な1対1の集積ではなく、11対11の戦いなのだ。

人と人の間の関係性を作る能力において、スペインはフランスを凌駕していた。緻密なポジショニング、精密なパスによって1対1に持ち込まれずに保持し続ける。守備でも連係しながらフランスの個を封じた。つまり、単純な個対個で劣勢でも、チームとしては優勢だった。関係性を構築する個の能力では、スペインは確かにフランスを上回っていた。

それでも試合はスコアが示すより均衡していたが、1対1を作らなければならないフランスにそれができず、スペインがそれをさせなかったのだから、結果は順当と言える。

2024年欧州選手権(ユーロ)の準決勝が1-2、2025年のネーションズリーグ準決勝では4-5。そして今回の0-2。フランスは3年連続でスペインに準決勝で敗れている。

「個」を前面に出して「チーム」に敗れた。それも3回連続。「1対1の個」では「関係性を作る個」を上回れないことがはっきりした。では、フランスはどうすべきなのだろうか。

危険なのは「スペイン」になろうとすること。過去にイタリアとドイツがそれをやって、一時的に成果は出したが長期的には失敗している。スペインのいいところは見習うべきだが、それによってアイデンティティを失うと、元も子もなくなるのだ。

【1998年以来のアイデンティティ】 フランスのアイデンティティは個の強さ、特にフィジカルの優位性である。それが明確に表れるようになったのが、1998年のワールドカップ初優勝。移民系選手の台頭が要因だ。

もともと、移民系選手はいた。1958年大会で3位になった時のレイモン・コパ、ジュスト・フォンテーヌ、1980年代のミシェル・プラティニ、ジャン・ティガナ、マリユス・トレゾールなど、中心的な存在でもあった。ただ、1998年以前のフランスは技術的に優れていたが線の細いチームで、1998年以降のパワーは持っていなかった。アフリカ系選手の増加が、その違いを生んだ。

世界に先駆けて育成を組織化した結果、黒人選手が台頭した。以前もいたのだが、育成年代を担当していたレイモン・ドメネク(後の代表監督)によると、アフリカにルーツを持つ黒人選手のポジションは慣習的にDFと決められていたという。それをアタッカーにも起用するようにしたのが1990年代だった。黒人FWもいたとはいえ、優れたパワー、スピードを守備の「保険」とする傾向が強かったのだ。

マルセル・デサイー、パトリック・ヴィエラ、クロード・マケレレらのデュエルの強さで奪い取り、ティエリ・アンリやニコラ・アネルカの速さで攻め込む。強さ、速さ、高さ、運動量といったフィジカル能力を組み合わせ、攻守に強度の高いスタイルを確立していった。

それは現在のウパメカノ、マヌ・コネ、エムバペ、オリーセたちにも、そのまま受け継がれている。高い身体能力に裏打ちされた個の力は、今やブラジルを上回って世界最高水準に達している。いわばサッカーの資源国であり、その地位は当分揺るがないだろう。

今大会で足りなかったのは、ジネディーヌ・ジダンやアントワーヌ・グリーズマンが担ってきた"接続点"になる選手だが、オリーセやラヤン・シェルキが経験を積んで、さらに大きな存在になっていくはずだ。

スペイン戦で1対1を作れなかったのは、能力よりも機能性の問題だった。同数守備へ移行する手順がはっきりせず、それができた時はボールを奪えていても、できない場面は少なくなかった。ここを改善できれば、現状でもスペインに勝つことは可能だったかもしれない。

フランスの特徴からすると、1対1にしない方向性よりも、1対1にするほうへ特化するのが得策だと思う。国内にはオールコートのマンマークでチャンピオンズリーグを連覇した、パリ・サンジェルマンというクラブもある。やるべきことは、すでに決まっているのではないだろうか。



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