メンズファッションバイヤー&ブロガーのMBです。洋服の買いつけの傍ら、「男のおしゃれ」についても執筆しています。連載第582回もよろしくお願いします。
今季GUが変わった4つのこと
高級ブランド“マルニ”の元クリエイティブ・ディレクター、フランチェスコ・リッソがGUのディレクターに就任し、今シーズン(秋)からイメージが大きく刷新されました。
今回は、GUのディレクション変更によって商品にどんな変化が起きたのか。そこを俯瞰的に語っていこうと思います。1つ言えるのは「めちゃくちゃ良くなった」ということ。もはや「ユニクロの弟分的な存在」ではないです。
1.色使いが変わった
・リバーシブルT ST
・・コットンボクシーT(5分袖)(ボーダー)PF
新作商品一覧を見ると分かる通り、色使いが大幅に変わりました。
マルニを知っている人なら、共通のイメージとして「大胆なカラーリング」があると思います。マルニは派手な色や柄を象徴的に使うことでも知られていますが、実はその肝は「違和感のある色使い」です。
例えば、土臭く無骨な軍用カラーである「カーキ」に、鮮やかな「サックスブルー」を組み合わせる。こうした発想は、日本人デザイナーにはあまり見られません。ある程度テイストをそろえ、統一感を作ることで服の完成度を上げ、複雑なディテールにも違和感を与えない。多くはそうしたアプローチを取りますが、フランチェスコ・リッソは「あえて」違和感のある色使いを意識しています。
色の選び方が神レベル
ポップアートのような派手な色使いではなく、そこに真逆の印象を持つ色を加えることで、「マルニらしさ」というべき独特の世界観を作っている。「かわいいけどカッコいい」「カッコいいけどキメすぎない」。このあたりがマルニ流です。
今回のGUでも、その感覚がいかんなく発揮されており、色使いの面白さが表れています。多色使いなのに子どもっぽく見えすぎないのは、「色の選び方が神レベル」なフランチェスコ・リッソならではでしょう。
2.シルエット/ディティールが変わった
・チノワイドストレートパンツ CL
・スリムジーンズ PF
定番商品も、パターンがかなり変わっています。
例えばワイドパンツは、ただ「太いだけ」ではありません。腰回りにフィット感を持たせるノータックを採用し、ゆるすぎない大人っぽいバランスを作っています。
独特のバランス感が新生GUの大きな魅力
GUといえば、ドカンと太いシルエットのワイドパンツが主流でしたが、今回のワイドパンツは、腰回りのフィット感と裾のルーズさを共存させた、面白みのあるものが多い。
スリムジーンズは逆に、腰回りをゆったりさせつつ、大胆にテーパードさせた、細すぎないバランスに。スリムなんだけど何かが違う。ワイドなんだけどなぜか大人っぽい! そんな独特のバランス感が、新生GUの大きな魅力です。
3.写真が変わった
これは商品そのものの話ではないですが、スタイリングを主とした商品写真に変化しました。実はこれ、ユニクロやGUとしてはかなり画期的。
ユニクロ、GU、無印良品は、「分かりやすさ」を重視しています。これは、ユニクロが「情報」にフォーカスしていることの表れだと思っています。真逆の考え方を持っている企業がZARAですが、ZARAは商品写真をイメージルックのように、動きのある見栄え重視で見せています。
これは両者の違いをよく示しています。ZARAを求めるお客さまは、「特定の何かを求める」のではなく、「何かおしゃれなものが欲しい」という漠然としたイメージでショッピングする人が多い。その裏付けとして、「型数の多さ」もZARAの特徴にあります。ZARAは他ブランドを凌駕するほど型数が多い。ユニクロのように「1品の在庫を大量に抱えて販売する」モデルではありません。
1品あたりの在庫数はユニクロよりはるかに少ない一方で、複数の型数をそろえている。だからZARAの店舗には「在庫」がほとんどなく、店頭に出ているものがほぼすべてとも言われています。特定の何かではなく、「何かおしゃれなものを」と思っているので、それでいいのです。
スタイリング重視の写真にして、「情報」をあえて捨てている
しかし、ユニクロやGUにおいては「情報」が重要です。ユニクロに来るお客さまは、オンライン・オフライン問わず、「これが欲しい」「肌着が必要だ」「防寒着が必要だ」「こういうシルエットのものが欲しい」など、イメージの解像度が高い人が多い。だからこそ、「1品あたりを大量生産して売る」ことができるわけです。「エアリズム」「ヒートテック」など、商品名を作ってイメージを統一させているのも、そのあたりが狙いでしょう。
ところが今回のGUは、スタイリング重視の写真にして、「情報」をあえて捨てています。直立したモデルの着画で分かりやすさを重視するのではなく、「イメージ」を売る方向に変えているのです。
まさに、ユニクロの弟分としての立ち位置ではなく、あえてまったく逆の方向にシフトし、「何かおしゃれなものを探しにGUを見に行く」という感覚を根付かせようとしているのだと思います。
4.スタンダードではなくなった
スタンダードな提案が少なくなりました。
これも、まさにユニクロと一緒くたに見られていた部分ですが、なんだかんだ言ってもGUはスタンダードなものをよく扱っていました。スタンダードの王者であるユニクロと、カニバっていた部分もあったはずです。
「合わせにくいけど着てみたい服」にアップデートされた
・オーバーサイズテーラードジャケット CL(オーバーサイズフィット)
しかし今回から、テーラードジャケットもオーバーサイズのものを打ち出し、ボタン位置やサイズバランスなども含めて「トレンド」に振り切っています。
パンツのシルエットなども微妙に変化し、「誰でも合わせやすい服」から、「合わせにくいけど着てみたい服」にアップデートされた感があります。
変わらないものも多い
もちろん、変わらないものも多いです。
例えば値段。これだけ色々手を加えているにも関わらず値段は据え置き。
例えば素材。シルエットやディテールは大きく変えていますが、価格との兼ね合いもあってか、素材はそのまま。なので、特別ラグジュアリーに変化したわけでも、素材の意味で「良品」になったわけでもありません。
しかしながら、見せ方、ディテール、シルエットは、まるで別物のように進化しました。GU=安いトレンド服、というイメージのままではもったいない。ぜひこの秋からのGUに、大人も挑戦してみてください。
【MB】
ファッションバイヤー。最新刊『ロードマップ』のほか、『MBの偏愛ブランド図鑑』『最速でおしゃれに見せる方法 』『最速でおしゃれに見せる方法』『幸服論――人生は服で簡単に変えられる』など関連書籍が累計200万部を突破。ブログ「Knower Mag現役メンズバイヤーが伝えるオシャレになる方法」、ユーチューブ「MBチャンネル」も話題に。年間の被服費は1000万円超! (Xアカウント:@MBKnowerMag)
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