上田慎一郎監督の縦型連続シネマ「恋する地球人」、劇場特別版として12月公開が決定!「ついに『カメ止め』を乗り越えた作品」

「恋する地球人劇場特別版」

上田慎一郎監督の縦型連続シネマ「恋する地球人」、劇場特別版として12月公開が決定!「ついに『カメ止め』を乗り越えた作品」

7月16日(木) 18:00

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上田慎一郎が監督・脚本を手がけ、SNS上で配信された縦型連続シネマ「恋する地球人」が、映画鑑賞に最適な形に再編集した“劇場特別版”として公開されることが決定した。公開は12月、新宿武蔵野館、池袋HUMAXシネマズほか全国で予定。取材に応じた上田監督は「やっと『カメラを止めるな!』を乗り越えられた気がする。これは劇場公開しなければと思った」と確かな手応えを示している。(取材・文・写真/内田涼)

●縦型連続シネマ「恋する地球人」とは?

「恋する地球人」(全30話)はKDDIとPICOREが共同制作し、25年11月25日からTikTok、X、Instagram、YouTube ShortsなどのSNS上で同時配信を開始。1話約2~3分のエピソードが30日間連続で配信され、同12月27日に最終回を迎えた。

平成12年の海沿いの町。高校生の晋平は、同じクラスの舞の携帯番号を手に入れるために映画制作を宣言。ヒロインは舞、主役に演劇部のデパルマ先輩を迎え、オタクのノベル、不良の和樹、転校生のエリーゼらと協力し合い、恋愛SF映画「恋する地球人」の撮影を開始し、次第に自主映画の制作にのめり込んでいくが……。

配信が開始されると“日めくり感覚”で進む物語に対し、視聴者から「これはちょっとエモすぎんか」「謎が解けてきておもしろい!」「ストーリー何回も裏切られる」「え?まだ新しい展開があったの?」「もう泣き疲れてます」「どこまでも切なくて愛が詰まりまくっている」など、感情を揺さぶられるコメントが多く寄せられた。

●画角、上映時間だけじゃない!劇場版はここが違う

劇場版は30分割の連続シネマをつないで1作品にし、劇場鑑賞に最適な構成、演出、間合い、テンポに再編集。単に全30話をつなぎ合わせるのではなく、1本の長編映画として鑑賞できる作品になっている。

SNS版で「9:16」だった画角は、スクリーン鑑賞に合わせて「3:4」と少し横幅を広げた画角に。作品の長さもSNS版が76分だったのに対し、劇場版は101分に変更。SNS版にはなかった新規シーンやセリフも追加され、全体的に芝居の間合いをじっくりとっていることも大きな特徴だ。

劇伴、主題歌、音響効果、カラーグレーディングも一新されている。こうした劇場鑑賞への最適化によって、大枠のストーリーは同じでありながら、鑑賞の感触が大きく異なる仕上がりとなった。

●「恋する地球人」は記憶と記録をめぐる物語

自主映画の制作にのめり込む高校生・晋平が主人公になった本作について、上田監督は「私小説的な部分もあります。僕も中学の頃からハンディカムで、仲間と映画作りをしていましたから」と語る。

その後、物語は41歳になった晋平が若年性のアルツハイマー型認知症となった映画監督であることを明らかにする。それは「恋する地球人」が記憶と記録をめぐる物語であることを印象付ける。以降は高校時代と現在、そして晋平の認知世界がクロスオーバーし、後半に向かってさまざまな伏線も張り巡らされていく。

「1話2~3分で全30話なので、脚本のページ数に換算すると長編映画1本分ですね。SNS版の時は、毎日更新だったので各話に“明日も見てもらうため”のフックが29回必要で……。それが大変といえば大変でしたね。配信が始まってからは、視聴者の皆さんの反応も見ながら、先々の話の編集をしていました」

縦型の映像については「ポートレイト写真や肖像画は縦構図が多いですよね。縦構図は1人の人間を撮るのに適した画角なんです。また、映し出される登場人物に対して、親近感を抱きやすい、感情移入しやすい画角であるとも思います」といい、「映像の歴史においては、縦型構図はまだ参考資料が少ないので、撮影の山本さん(山本周平)は、版画家の川瀬巴水の風景画などを見て研究もしてくれていましたね。前例が少ないからこその難しさもあるのですが、だからこそ楽しくもありました」と振り返る。

●「映画館でみんなと一緒に観てもらうと、全く違う体験になる」

最終話の配信を待たずに早くも複数の映画館から、劇場公開についての問い合わせがあり、上田監督自身も「全30話を出し切る前には、劇場公開したいと思っていた」と語る。視聴者からも、劇場公開を求める声が多く寄せられ、背中を押されたという。

SNS版からの具体的な変更点については前述した通りだが、上田監督には演出意図をより深掘りしてもらった。「先ほどお話しした“明日も見てもらうため”のフックは、劇場版では必要ないので、逆にカットしたりもしています。それとSNS版は、ほぼずっと音楽が鳴っているのですが、その辺りも劇場版では抑制しています。息つく暇もないSNS版に比べると、余白や余韻の増えた劇場版では、観客に考えたり感じたりしてもらえる時間が増えていると思います」

何より、観客が同じ空間で「恋する地球人」という作品を共有することこそが、劇場公開の醍醐味だ。「SNS版は、基本的には個人のデバイスで、1人で見ていたと思うんですよ。でも劇場特別版は映画館で他の観客と一緒に観る。まずそこでSNS版とは全く違う体験になる。どんな反応がいただけるのか、今からとても楽しみですね」と作り手として、そして1人の映画ファンとして期待を寄せる。

●「『カメ止め』を乗り越えられた」大きな自信と確かな手応え

劇場やファンの要望に加えて、「自分の想像以上のものができてしまった。ぜひ、自分のフィルモグラフィーとしてしっかり記録したいと思った」という大きな自信と確かな手応えが、「恋する地球人」の劇場公開を後押しした。

「やっと『カメラを止めるな!』を乗り越えられたと思ったんですよ。『カメ止め』以降の作品も、その時々のベストを尽くして作っていましたが、どこかでまだ『カメ止め』の存在に縛られていた気もするんです。でも『恋する地球人』では、やっと『カメラを止めるな!』を乗り越えられた気がする。だから劇場公開しなければとも思った。すでに自分にとって、大切な作品になっています」

何より「恋する地球人」には、頼もしい声援を送るファンがすでに数多く存在している。「そうなんですよ。劇場公開を前に、大規模な試写会を行っているような状態でスタートできるのは心強いですね。先ほどもお話ししましたが、視聴者の皆さんのフィードバックも反映されているので、作り手だけでなく、観てくれた方々も含めて“みんなで作った”感覚がありますね」。この冬、「恋する地球人劇場特別版」が「カメ止め」超えの“記憶に残る”旋風を巻き起こすのか、ぜひ注目したい。

【作品情報】
恋する地球人劇場特別版

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