清水邦広が語るネーションズリーグ男子と日本代表前編
7月15日、バレーボールネーションズリーグ(以下VNL)男子の日本ラウンドが開幕する。日本代表は、予選第1週の中国ラウンド、第2週のフランスラウンドを終えた時点で無傷の8連勝。ここまでの戦いについて、かつて日本代表のオポジットとして長く活躍し、SVリーグの2025-26シーズンまで現役を続けた清水邦広氏(現・大阪ブルテオンコーチ)に聞いた。
日本代表の8連勝に大きく貢献している髙橋藍photo by JVA/アフロスポーツ
【日本を引っ張っているのは髙橋】――VNL日本ラウンドが始まります。今大会、ここまでの日本代表についてはどのような印象を抱いていますか?
「開幕して中国、フランスラウンドを8連勝で終えましたが、チームが順調に仕上がっている印象です。日本が銅メダルを獲得した2023年のVNLは予選で10連勝したんですよね。その時の勢いを上回るくらい、今年はチームとして成長していますし、勢いもあると思って見ています」
――ポーランド、フランス、アメリカという世界ランキング上位国相手に勝利を収めることができた要因はなんでしょうか?
「いろいろな要因があると思うのですが、就任2年目となるロラン・ティリ監督の考え方がチームに浸透してきていることが挙げられると思います。ティリ監督が求めているのは"スマートバレーボール"。賢く、洗練されたバレーボールをするように、パナソニックパンサーズ(現大阪ブルテオン)の監督時代から僕も指導されてきました。日本代表でも同じテーマを掲げてスタートして、それが実現しつつあるのではないかと思いますね」
――それぞれの選手の成長に関してはいかがでしょうか。
「昨年度とメンバーはほぼ変わっていないのですが、そのなかでも髙橋藍選手の成長は目を見張るものがあります。パリ五輪の時には石川祐希キャプテンを中心としてチームが結束していました。もちろん、今も石川選手は中心選手ですが、今大会は髙橋選手がチームを引っ張っている印象が強いです。
髙橋選手とはSVリーグで何度も戦いました。昨シーズンはチャンピオンシップのファイナルでも、僕たち大阪ブルテオンと髙橋選手が所属していたサントリーサンバーズ大阪が対戦。結果的には僕たちが勝って優勝することができましたが、レギュラーラウンドからずっと彼の存在感の大きさを感じていました。
相手からすれば脅威です。サントリーには世界ナンバーワンのオポジット、ドミトリー・ムセルスキー選手が在籍していましたが(昨シーズン限りで現役を引退)、それでも僕は、サントリーで一番怖いのは髙橋選手だと思っていました。代表でもその怖さは健在です」
【髙橋のオフェンス面での進化】――髙橋選手の怖さは、具体的にどういった部分でしょうか?
「高いレシーブ力は、東京五輪やパリ五輪でも証明されています。そのディフェンス力に加えて、年を追うごとに攻撃力もアップしているんです。特に、ポイントを取る嗅覚が研ぎ澄まされてきていることが大きいですね。
強打だけではなく、たとえばトスのタイミングが合わずに難しい体勢でスパイクを打たなくてはいけない時も、どうすれば得点を取れるかを知っています。相手ブロックを見て、わざとタイミングをずらして打ったり、相手コートのレシーバーがいないところに落としたりといった選択がとっさにできる。彼がよく見せる、右手でフェイクをかけて、左手でボールを落とすプレーもそうです。
おそらく世界の名だたるプレーヤーを見て、そのプレーを自分のものにし、さらにアレンジを加えているんでしょう。想像力を働かせて、自分の持ち味にしていく姿は対戦相手からすると本当に怖いです」
――髙橋選手はブロック力の評価も上がっていますね。
「そうですね。世界のアウトサイドヒッターのなかでは小柄なほうですが(188cm)、手の出し方や跳ぶタイミングが素晴らしいです。相手スパイカーはブロックが最も低いところを狙って打とうとするので、対日本では、ミドルブロッカーよりもアウトサイドヒッターのいるコースを狙われることが多い。でも髙橋選手は、手の出し方や跳ぶタイミングがいいので、ブロックタッチを取ったり、時にはシャットアウトで得点も奪えます。
すべてのプレーで成長を見せている髙橋選手ですが、特に顕著なのはサーブ。今年は『ひと味違うな』と感じています。昨年度の代表では、もう少しショートサーブが多かったのですが、今年はかなりハードヒットのサーブが増えている印象です。相手がセットポイントを取っていようが、関係なく攻めのサーブを打つ。そこに進化を感じています。トータルでの彼の成長が、日本の8連勝につながっていると思います」
――ティリ監督が掲げる"スマートバレーボール"を日本代表が体現できるようになったのも、髙橋選手の存在が大きいでしょうか?
「そうですね。ティリ監督は、チームの軸となる存在を作ることを大切にします。今までであれば石川選手がチームの絶対的な軸でした。彼以外の選手も、全員が『自分がチームを支えるんだ』という心意気でコートに立っていると思うのですが、あくまで外から見た印象では、今のチームでその心意気を一番感じるのが髙橋選手です。髙橋選手の成長と活躍があったからこそ、ここまで無傷で勝ち進むことができていると感じています」
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【プロフィール】
清水邦広(しみず・くにひろ)
所属:大阪ブルテオン
1986年8月11日生まれ、福井県出身。身長192cm、オポジット。福井工大福井高校時代に春高バレーに出場するなど活躍。東海大学在学中の2007年に日本代表に選出され、翌年の北京五輪に出場した。2009年にパナソニックパンサーズ(現・大阪ブルテオン)に入団後、多くの個人タイトルを獲得するなど、チームを何度も優勝に導いてきた。2021年には東京五輪に出場し、日本代表のベスト8進出に貢献した。2025-26シーズン限りで現役を引退し、大阪ブルテオンのコーチングスタッフに就任した。
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