【写真】大河ドラマ「豊臣兄弟!」第27回“本能寺の変”より
仲野太賀が主演を務める大河ドラマ「豊臣兄弟!」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)。八津弘幸が脚本を務める本作は、天下一の補佐役とも称される豊臣秀長(小一郎/仲野太賀)を主人公に、強い絆で天下統一という偉業を成し遂げた豊臣秀吉(池松壮亮)・秀長兄弟の奇跡をダイナミックに描く波乱万丈のエンターテインメントドラマ。第27回(7/12放送)では、「本能寺の変」という物語最大の転換点を迎え、小栗旬演じる織田信長の最期は鮮烈な印象を残した。
WEBザテレビジョンでは、小栗旬にインタビューを実施。信長を演じた思い、そして「本能寺の変」について語ってもらった。
■ピュアで真っすぐな豊臣兄弟と共に作り上げた織田信長
――物語が進むにつれて変化していく信長と小一郎・秀吉との関係性を、小栗さんはどのように捉えていらっしゃいましたか?
どこから話したらいいか迷いますが、本作の信長は、基本的には“豊臣兄弟”を演じるのが“太賀くんだから”“池松くんだから”ということが、大きなベースになっています。彼らのとてもピュアで真っすぐな姿勢を現場で見せてもらい、彼らが作る豊臣兄弟と共に今作の織田信長というキャラクターが出来上がっていったと思っています。豊臣兄弟との関係性の変化については、もちろん時代的なことを考えれば、もっといろんな武将たちが織田信長を取り巻いていたとは思いますが、あくまでこの『豊臣兄弟!』という世界においては、彼ら二人が信長にとってはなくてはならない存在にどんどんなっていきました。
――信長にとって、小一郎と秀吉はそれぞれどのような存在だったのでしょうか。
信長の中で、自分に欠けている部分、自分にはない感覚を非常に強く持っているのが秀吉でした。普通ならこうだろう、という想像を、彼は軽く超えてくる。そんな秀吉を見る機会が増えるにつれて、信長の中で「こいつはちょっと大事な駒として置いておかなければいけない」という思いがどんどん増えていったのだと思います。
――秀吉のミスや命に背くことを予見しながらも、信頼を置いていた信長の心境とは?
例えば比叡山延暦寺の時に、本来犠牲にならなくていい人間たちを殺せという命令に秀吉は背くだろうな、とは思ってはいるんですよね。「じゃあ背いた時に、どういう形でこちらを納得させるんだ」というところまで考えた上で、信長は話をしています。そもそも信長にとっては、足利義昭(尾上右近)と自分との間で揺れている明智光秀(要潤)がどういう行動をとるのか、「君の忠誠心を見せてくれ」と試そうとしている局面にしゃしゃり出てきたのが秀吉で(笑)。秀吉が取るであろう行動は予見しつつも、信長の立場として、彼を簡単に許してしまうと他への示しがつかないということが大いにあっただろうと。そういう部分で、許すに許せないということが何度か続いていったと思います。
■孤独な“破壊神”となった信長を支えた秀吉という“最後の光”
――今作における織田信長のキャラクター像は、どのように膨らませていきましたか?
今作では描かれていませんが、若かりし頃、彼が“うつけ”と呼ばれていた時代は、彼も明るい世の中を作りたかったのだと僕は想像しているんです。もっと経済的に豊かで、いろいろな貿易がなされていくような世の中をイメージして進んでいったのだと。ですが、信長の生きた時代では、彼の考えはなかなか周囲に理解されなかった。そのことが彼を破壊の方向に進ませたのだと思います。同じビジョンを持てる人間があまりに少ない状況の中で、「蹴散らすしかない」という選択をしたら、気がついた時には自分が“破壊神”になってしまっていた。それは彼にとっては予期せぬことというよりは、そうせざるを得なかったことだと思うんです。そんな中、自分の横で、いつまでも「人々を喜ばせたい」「明るい未来を見たい」と言っている秀吉の存在は大きかったと思いますし、そばに置いておきたい家臣だったと思います。自分の判断や考えが狂わないための最後の指針、そして最後の光だった。そういうふうに見えていたのではないかなと思いながら、信長を演じていました。
――では、小一郎に対してはどのような視線を向けていたのでしょうか。
秀吉の横でいろいろと知恵を絞って動く小一郎は、出会った時には秀吉よりも確実に使える存在だと認識をしていたと思いますが、途中からだんだん鬱陶しくなってくるんですよね(笑)。ああ言えばこう言う、という感覚だったと思います。少し疎ましい存在ではあるけれども、小一郎が兄を心配し、なんとか兄を助けたいと奮闘する姿を見ることは、信長にとっては傷をえぐられる瞬間でもあり、自分が作ることができなかった世界を突きつけられるという側面もあったと思います。
■“破壊神”としての魅力、そして池松壮亮との会話で出てきた「GOD」の概念
――信長を演じられて、彼の生き方や考え方で共感できる部分はありましたか?
信長はちょっとやりすぎなところがいっぱいあるので(笑)、現代を生きている自分からすると、理解できないことの方が圧倒的に多いです。ただ、織田信長という人物がなぜここまで人々を魅了するのかと、池松くんと話したことがあって。その中で、池松君が「GOD」の頭文字を、Generate(創造)、Operate(維持・運営)、Destroy(破壊)と解釈する説がある、と言っていたんです。僕は、信長は“破壊神”であることを決めた人だと思っていて。だから、池松くんから、信長のような破壊神(Destroy)がいて、そのあとに創造(Generate)した秀吉がいて、最終的に維持(Operate)していった徳川家康がいるんじゃないか、そして「実は昔から破壊神が一番人気があるんですよね」と聞いて、非常に納得しました。やはり人間は、自分ができないことをしている人に魅力を感じてしまうのかなと。
秀吉たちに対しても、自分は破壊し続けるから、次の“創造”や“維持”はもうお前たちに任せる、という気持ちだったと思うんですよね。本来彼が思い描いていたであろう“新しい世”からどんどん離れつつあるときに、軌道修正してくれる新たな考え方を持っているのが秀吉。そして信長は、もし自分がいなくなった先で秀吉が台頭した場合には、本来の夢をもう一度見られるのではないかと思っていたのではないかと。そのために、自らが“破壊神”でいることを選択する姿には、共感できる部分がありました。
■光秀に向けた「お前じゃない」に込めた本音
――第26回の秀吉と2人きりで話すシーンは印象的でした。
僕は今回の織田信長は、第25回あたりから引退を考えていたと思っているんです。そして自分が引退した場合、誰に後を任せられるのだろうと考えていた時に、秀吉が第26回で「殿と一緒に新しい世の中を作りたい、そして人々を喜ばせたい」と言った。その言葉を聞いた時に、これだけ無理難題を押し付けられ、嫌なことをさせられても、まだ「人を喜ばせたい」と言っている秀吉になら任せられるかもしれないという境地にたどり着きました。
ちなみに第27回で、幻の明智光秀に対して「お前じゃない」と言ったのは、アドリブです。光秀と向き合った時に、心の中から出た言葉として言わせていただきました。この物語の信長は、もしも殺しに来たのが秀吉で、「あなたが死んでくれないと次の世の中が来ません」とでも言ってくれたら、「喜んで君に席を譲るよ」と思ったはず。なのに、気難しい光秀がやって来たので(笑)、本当に「お前じゃない」と、許せなかったですね。その境地にたどり着けたことは、『豊臣兄弟!』で作り上げていった織田信長として、最初から最後まで1本筋が通ったなというふうに感じています。
■裏切られ続けた一生死の瞬間に見つめた己の弱さと最後の救い
――浅井長政(中島歩)の裏切りなど、次々に信じたい人から裏切られ、本能寺の変を迎えます。
さまざまな文献を読むと、信長は裏切られた回数がかなり多い人なんですよね。疑心暗鬼になるだろうし、人を信じるということが難しくなっただろうと思います。家督争いをした弟の信勝(中沢元紀)もそうですし、長政、松永久秀(竹中直人)、荒木村重(トータス松本)もそうです。ですが、信長は何度も彼らを許そうとしている。僕としては、信長が修羅のような人だったとは思えなくて、きちんと交渉材料と言い分があれば許した人だという気がしています。その中で、秀吉がどう見ても自分のことを裏切らなさそうだと思えたのはものすごく心強かったと思いますし、「秀吉と兄弟になれたとしたら、俺の人生も違ったのではないか」と思った瞬間もあったのではないかと思います。
――そして迎える本能寺の変、最期の瞬間の心理はどうだったのでしょうか。
秀吉が殺しに来てくれたとしたら、信長の中では1番気持ちのいい人生の幕引きになれたと思います。でも最後に死を覚悟した瞬間、信勝や長政といった自身が勝手に作った幻影、精算したかったトラウマが目の前に現れてきて、「なんて俺は弱い存在だったのだろう」と思ったのではないでしょうか。ですが、僕の感情の部分でいうと、ただ、信勝に“我らの一生、ろくなものではござりませんでしたな”と言われる場面は、監督ともお話をさせていただき、“お前はそう思っているかもしれないけれど、俺は違う。未来を託せる人間(秀吉)が俺には一人できたから、もう余裕でここで死んでいってやるよ”という気持ちでラストを迎えました。
■“本物の火”に囲まれた本能寺の変
――今作における「本能寺の変」はどのようなものになりましたか?
これまでに描かれてきた本能寺の変は、セットでの撮影が多かったと思いますが、ラストシーンはロケで撮影しました。さらに今回は本物の火を使って撮影しており、やはり画の迫力が違いましたね。
――本能寺での信長の描写について、脚本家の八津(弘幸)さんと何かお話しされましたか?
八津さんに、「1度は思いっきり逃げようと思いたい」という話をさせていただきました。というのも、織田信長は逃げ足がものすごく速かった、と読んだことがあったので、自分の中でどうして本能寺では逃げられなかったのか謎だったんです。
これは僕の考えですが、“もう疲れてしまった”ということだと思っていて。これ以上、逃げた先に一体何があるのだろうと、彼の中では終着点が見えてしまった。引退してのんびり余生過ごすと言っても、恨みを買いすぎているので、常にいつ殺されるかわからない不安の中で生き抜かなければいけないですしね。疲れてしまった、それが一番だったのではないかと自分なりに解釈しています。
――今作ならではの本能寺の幕引きになりましたか?
できれば僕としては、逃げようとしたけれど、逃げるのも諦めて、無様に死んでいくといった形を取りたかった。結果としては折衷案のような形になったかと思いますが、しっかりとこの物語に則った上で、小一郎と秀吉に対するメッセージを残して散っていけたので、「豊臣兄弟!」らしい本能寺の変が描けたのではないかと思っています。
■「傾いてる」SNSの反響への本音
――劇中で信長の首が傾いている時に、SNS上で「小栗さんが傾いてる」「怖い」と大きな話題になっていましたが、ご存じでしたか?
認識はしております(笑)。身分が高くなればなるほど、ズバっと座っているという描かれ方が多いと思うのですが、だとしたら「文句を言う人がいないくらい偉いなら、どんな姿でいてもいいのではないか」と考えたのが始まりでした。それを大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022年)でもやっていたので、“小栗旬が傾くとやばい”みたいな話になっていますね(笑)。逆に今回は後半にかけてはあまり傾いてないかもしれないです。信長に威厳が出てきてからは、「今度は傾かないようにしようかな」と思い、真っすぐ座っている姿も増え、「傾くのが期待されているなら、期待されていない方でいこう」という選択肢をしました(笑)。
■共演者から受け取った“ギフト”の大きさ
――改めて、仲野さん、池松さんからはどのようなインスピレーションを受けましたか?
太賀くんと池松くんは、きっとこういうお芝居になるのではないかなと思っていることを軽々と超えてくるお芝居を見せてくれるので、彼らに引っ張ってもらった場面も本当に多いです。秀吉を演じているときの池松くんは、少し怖さを感じるような、狂気性を感じる瞬間があって、ただただ明るいだけじゃない秀吉でした。太賀くん演じる小一郎と向き合っている時も、なにか得体の知れない優しさみたいなものを非常に感じる瞬間がありました。第27回まで演じてきた中で、二人が間違いなく信長を愛しているという姿をずっと見せてくれたので、そのおかげで「君たちがずっと僕のことを愛してくれているなら、僕も愛されているというつもりでやる」と思いながら臨むことができました。
――ご自身の演技を再発見するような瞬間や、新たな気づきはありましたか?
そこはやはり共演者に引き出してもらっているものが多いです。俳優同士では“ギフト”という言い方をすることがあるのですが、もしも自分の織田信長が魅力的に映っているのだとしたら、ギフトをくださる俳優さんが多かったということが大きいと思います。太賀くんや池松くんと芝居をしていると、心が震える瞬間が非常に多くて。信長を演じる中では、琴線に触れるようなことがあったとしても、反応しないようにしなければいけなかったりもするので、そこは葛藤もありつつ楽しめました。
――今作での経験は小栗さんにとってどのようなものになりましたか?
大河ドラマというものは、出演するたびになじみのスタッフさんがどんどん増えていき、「おかえり」と受け入れてくださるすごくすてきな場所だと思います。同時に、やはり大河は大変だなと改めて思いました(笑)。ですが、一度ちゃんとした織田信長を演じてみたかったので、今回その夢が叶ってよかったなと思っています。僕の中で、織田信長はものすごく強い存在というイメージがありましたが、信長も人間であり、ものすごく大きな葛藤や迷いがある中で生きているて、僕らと何も変わらない存在が偉大になりすぎてしまったのだと感じることができました。そして今回の経験が、自分を俳優としてさらにたくましくしてくれるだろうと思っています。
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