F1第9戦イギリスGPレビュー(前編)
曲がらない。とにかく曲がらない。
本来ならF1マシンならではの強烈なダウンフォースを効かせ、グイグイと曲がっていくはずの高速コーナーで、アストンマーティン・ホンダのドライバーたちは曲がらないマシンにフラストレーションを募らせていた。
マシンを安定して走らせることに苦戦するストロールphoto by BOOZY
コーナーの途中でステアリングをフルロックまで切り込み、なんとか曲げようとする姿は、まるでレースゲームのよう。いかに現実離れした状況なのかを、ありありと伝えていた。
タイヤのグリップ限界を超えてステアリングを切ったとしても、マシンは曲がらない。ただ横に滑っていくだけで、むしろロスが発生する。
それでも、そうでもしなければ走っていられないほど、ひどい状況だったということだ。
イギリスGP決勝、6回のトラックリミット違反で合計15秒の加算ペナルティを余儀なくされたランス・ストロールは、あきれたように語った。
「アンダーステアがひどくて、マシンが壊れたような状態だったから、マシンをコース内に留めておくことすら難しかった。毎ラップ、毎コーナーでマシンの挙動がかなり違っていたから、トラックリミットを守るのも難しくて......。とにかく厳しいレースだったよ」
壊れたような状態というのは、「ダメージを負っているわけではなく、空力的に破綻している、という意味だよ。いろんな問題を抱えながら走っているということだ」と、ストロールはストレートな表現で語った。
時速200kmオーバーの高速コーナーが連続するシルバーストンだからこそ、AMR26の空力的な厳しさがより克明に浮き彫りになった。
曲がらなければ、アクセルも踏めない。これはコーナーでのタイムロスにつながるだけでなく、ストレートでのロスにもつながる。
なおかつアクセルが安定して踏めなければ、どこでどれだけエネルギーを使い、どこでどれだけリチャージ(発電)するかというエネルギーマネジメントの最適解も違ってくる。事前のシミュレーションどおりの空力性能が出なければ、エネルギーマネジメントにも影響が出てきてしまうのだ。
【土曜午前は驚異的なアンダーステア】ホンダの折原伸太郎トラックサイド・ゼネラルマネジャー兼チーフエンジニア(GM)はこう語る。
「まさに、そこが難しいところです。特にこういう中速・高速コーナー、エアロを効かせて抜けていくところが多いと、『シミュレーターではこうだったんだけど、実際に走ってみると(想定と違って)こうだ』というところがあります。
加えて、スプリント週末でフリー走行が1回しかないので、そこにうまく合わせ込むのがけっこうチャレンジングでした。そのなかで最適化はできたと思いますが、シミュレーションとサーキットの相関が難しいサーキットです」
1回のフリー走行のみで臨まなければならないスプリント予選では、どのマシンも完璧とは言えない状態で走ることになる。SQ1を突破できないアストンマーティン勢としては、たった2回のアタックラップで金曜の走行を終えることになる。
土曜午前に行なわれたスプリントレースでの驚異的なアンダーステアを受けて、アストンマーティンは午後の予選に向けてセットアップを再び調整した。それでなんとか改善を果たすことができ、ドライバーたちは予選で好印象を語るようになったが......。
◆つづく>>
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