内山拓也監督最新作「しびれ」が、6月26日から開催された第28回台北映画祭(台北電影節)に出品された。さらに、毎年世界で最注目すべき映像作家に焦点を当てる特集「Filmmakers in Focus」に内山監督が選出。同特集では「しびれ」のほか、これまでの長編作品「ヴァニタス」「佐々木、イン、マイマイン」「若き見知らぬ者たち」が上映され、現地でのQ&Aイベントに内山監督が登壇した。
「しびれ」は、冬の新潟を舞台に、幼少期の記憶から言葉を発することができなくなった少年・大地の20年にわたる軌跡を描いたヒューマンドラマだ。もともとファッションを学んでいた内山監督が、人生の行き詰まりを経験し、その時の感情を記録するために脚本を書き始めたことが制作のきっかけとなっている。そんな本作が持つ半自伝的な要素について、「デビュー作ではないものの、「しびれ」は自分の最も率直な感情から生まれた作品と言えます。そのため故郷である新潟での撮影を選びました」と告白。
一方で、自身の人生をそのまま映画化したわけではないと強調し、「それぞれの場面に自分の感情や実際に目にした風景を織り込み、新潟という土地を一度解体し、再構築していきました。本作にとっては、大地だけではなく、新潟という土地ももうひとりの主人公。雄大な風景が大地を飲み込むように存在し、時間とともに絶えず表情を変えていくさまを映したいと思いました」と、ロケ地への思い入れを明かした。
本作では、大地の人生を表現するため、北村匠海、榎本司、加藤庵次、穐本陽月という年代の異なる4人の俳優が一人の人物を演じる。キャスティングについて内山監督は、「外見が似ていることは重視せず、むしろ眼差しや内面からにじみ出る感情を基準に選んだ」と述懐する。その結果、スクリーンでは4人の俳優に不思議な共通性が生まれたと語る。
青年期の大地を演じた北村については、「長年俳優としてだけでなく、アーティスト活動など他分野でも経験を積んできたことが、同世代の俳優とは異なる深い眼差しにつながっており、自分が思い描く主人公像に最も近かった」と絶賛した。
一方、大地の母親・亜樹役を演じた宮沢りえの起用秘話も。「亜樹という役を宮沢さんに託したいと思っていたところ、宮沢さんが『佐々木、イン、マイマイン』を好きでいてくれて、私の作品だったら出演したいと思ってくれていたことがきっかけで実現した」という。亜樹は、圧倒的な存在感を放ち、時には間違った選択を繰り返しながらも懸命に生きる女性だが、監督は「とても無邪気で、魅力的なところがある」と表現。「日本を代表する名女優である宮沢さん自身にも、亜樹と同じような純粋さがある」と述べた。
今回が初訪台となった内山監督は、映画を独学で学ぶ過程で、エドワード・ヤン監督らの作品を通して台湾を知ったことが関心の始まりだったと明かす。この日は同監督の代表作「牯嶺街少年殺人事件」のロケ地の一つである台北植物園も訪れたといい、「いつか台湾で映画を撮れる機会があれば嬉しい。今回の旅は観光であると同時に、ロケハンでもある」と、今後の海外展開への期待を煽るコメントも飛び出した。
「しびれ」は9月25日より公開。
【作品情報】
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