駒木根葵汰が「鬼平犯科帳」一人二役への挑戦と初の悪役で見せた新たな顔「誰にどう思われようと、自分がワクワクする役を」

駒木根葵汰/撮影=岡田健/スタイリスト=矢島悠貴/ヘア&メーク=吉村健

駒木根葵汰が「鬼平犯科帳」一人二役への挑戦と初の悪役で見せた新たな顔「誰にどう思われようと、自分がワクワクする役を」

7月6日(月) 17:00

駒木根葵汰
【写真】駒木根葵汰、横顔が麗しい撮り下ろしショット

時代小説の大家・池波正太郎の代表作で、累計発行部数3000万部を超えるベストセラーを原作とした時代劇、松本幸四郎主演「鬼平犯科帳」シリーズ。その最新作となる第8弾「本所の銕(てつ)」(市川染五郎主演)および第9弾「密告」(幸四郎主演)が、2作をまとめた特別先行版として7月10日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて上映される。

「本所の銕」は、若き日の平蔵・長谷川銕三郎時代のエピソードを描くオリジナルストーリー。「密告」へと繋がる前日譚として染五郎が主演を務める。それに続く「密告」では、幸四郎演じる平蔵が自身の過去と向き合う姿が描かれる。

今回、2つの物語の鍵を握る、御家人・横山小平次/盗賊・伏屋の紋蔵の一人二役を演じ分ける、駒木根葵汰にインタビュー。人気時代劇シリーズ出演への思いから、ヒール役への挑戦、時代劇と現代劇の違いまでたっぷりと語ってもらった。

■「ポジティブな感情が大きかった」

ーーまずは、今回「鬼平犯科帳」という歴史ある時代劇作品への出演が決まったときの率直な感想と、撮影にどのような気持ちで臨んだのかを教えてください。

以前にもいくつか時代劇に携わらせていただいたことがあるのですが、自分が今生きている現代とは全く違う世界で何を思うのか、少しつかめたような気がしていました。なので、またその世界に入り込めるうれしさと、新しい挑戦になるという期待感がすごくありましたね。歴史ある作品に出演することへの緊張感はありましたが、どちらかというと「どんな現場になるんだろう」「撮影を通してどんなことを感じられるだろう」というポジティブな感情が大きかったです。

■「現代劇だったら抑えてしまうような感情を、一歩二歩先の表現に」

ーー今回は、ほぼ同年代ながら“父と子”を演じるという特殊な二役でしたが、現場で感じたことや、演じる上で意識したことを教えてください。

一人二役という、非常にぜいたくな経験でした。一つの作品の中で父と子を演じることはなかなかないかもしれない経験でもありました。正直、僕自身が二役を演じるので、見た目はどうしても全く同じになってしまいます。観ていただく方には「同じDNAが通っているんだな」と分かってもらえるだろうという、ある種の少し甘えのような部分もありました。だからこそ、現代劇だったら抑えてしまうような感情を、一歩二歩先の表現にしたり、感情の強さを出したりすることは、すごく意識しましたね。

どちらの役も、一つ間違えてしまったら生死にかかわるような時代を生きています。何をやるにしても「明日を生きるために、今日を必死に生きる」という思いは常に持っていました。「これでいいのか」と立ち止まって悩むような弱さは一切持たず、自分の意思をしっかり持って演じていましたし、常に“生か死”というシビアな感覚を持っていましたね。

■「(染五郎さんと幸四郎さんは)“火の色”が共通している」

ーー染五郎さん主演の「本所の銕」と幸四郎さん主演の「密告」、それぞれの現場の違いや、駒木根さんが本作のリリース時のコメントでおっしゃっていたお二人からの“圧力”について教えてください。

染五郎さんの現場は同世代のキャストが集まったということもあり、みんなで一緒に頑張ろうという和気あいあいとした雰囲気で、若さが前面に出たような現場でした。染五郎さんは、荒削りだけれど、強くて熱い心があるという印象でした。そこもまた銕三郎らしいんですよね。「この人には生半可な言葉や嘘は通用しないんだろうな」という強い信念をすごく感じました。

一方、幸四郎さんの現場は、周りが経験豊富な方たちばかりだったので安心感がありました。熟練の技術を持った方々ばかりだったので、「そこにどう食らいついていくか」と先輩方を見上げているような感覚でした。幸四郎さんからは、どっしりとしたオーラを強く感じ、染五郎さんにあった荒々しさが良い具合に削ぎ落とされていって、そこに気品のようなものが加わった印象です。

ーーそれは、銕三郎から平蔵への成長にも通じますね。

お二人からはやはり、「親子なんだな」と感じる部分もありました。感覚的なことなのですが、お二人が内に秘める“火の色”が共通しているような感じがしたんです。表面的なものと、内側のグツグツとしたマグマのようなものを染五郎さんからは感じました。表面的には、お二人とも黒めに近い赤という感じでしたね。ただ、幸四郎さんの方がもう少し透き通っているような感覚がありました。もちろん実際にパッと色が見えたわけではなく、あくまでも僕の感覚的なものですが(笑)。

■「台本から受け取る自分の感覚を大事に」

ーーそんな染五郎さんや幸四郎さんをはじめ、共演者から刺激を受けたエピソードはありますか?

「本所の銕」では染五郎さんがとてもストイックで、一緒に殺陣の稽古をしているときも全然休憩せずに取り組んでいたので、僕もなかなか休憩できなくて(笑)。撮影中、僕が演じる小平次が手下たちに戦わせてそれを見ているというシーンでも、染五郎さんが一生懸命立ち回りをされているのを眺めているだけなのがすごく申し訳ない気持ちになりました。その分、自分のお芝居のパートは一生懸命やろうという意識になりました。

また、「密告」で母親役だった山田真歩さんとの共演は1日だけだったのですが、顔をパチーンと叩かれるのが本当に痛くて印象に残っています(笑)。そこは観ていただいてのお楽しみですが、1日とは思えないぐらい、親子としての愛情がヒシヒシと伝わってきました。

ーー本作は、一方はオリジナルストーリー、もう一方は原作がある作品でしたが、過去の作品などは参考にしたのでしょうか?

基本的には台本から受け取る自分の感覚を大事にしているので、今回は特に観ずに台本からのインスピレーションを大切にした部分が大きかったです。

■「自分だけが画面に映ったときの迫力みたいなものを意識」

ーー今回、駒木根さんのヒール役が凄まじいと、先日行われた「鬼平犯科帳」のファンイベントでも共演者や会場から拍手が巻き起こっていました。ヒール役を演じる上で参考にした方などはいましたか?

作品を観て勉強したということは特にありませんでしたが、ヒール役をやってみたいという思いはずっと自分の中にありました。数年前は韓国のホラーミステリー作品にすごくハマっていて、特に韓国ドラマ「怪物」は、同世代の俳優の方々が出演していたこともあり、その経験の厚みや画のインパクトに圧倒されました。映画「羊たちの沈黙」にもそれを感じましたし、その時に観て圧倒されていた経験が、役に潜在的に引き出されている部分はあるのかもしれません。自分だけが画面に映ったときの迫力みたいなものは常日頃から意識しているのですが、今回もそこを意識して出していけたらと思って演じていました。

ーー具体的には、演じる上でどのようなことを意識したのでしょうか?

「本当にこういう人間がいたら嫌だな」と思う人物像をずっと想像していました。個人的に、すごく余裕がある人ってちょっと鼻につくイメージがあるんです。同世代なのにお金や時間に余裕があるとか。自分自身が必死に生きているからこその僻みのようなものもあるのかもしれないですが(笑)。そういった背景を想像しながら、あえて余裕を出すために割とのっぺりとした喋り方をしたり、薄ら笑いしたりするなどの言動を意識しました。

■「自分がワクワクする役は、進んで挑んでいきたい」

ーーヒールのイメージがつくことへの恐れはありませんでしたか?

正直、誰にどう思われてもあまり気にしない性格なので、自分がその役の出来栄えに満足できたらいいかなと思っています。ファンイベントでも「とても良かった」という声を多くいただけたので、そこは素直にうれしかったです。これからもどんな役でも挑戦していきたいと思っていますし、自分がワクワクする役は、進んで挑んでいきたいです。

ーー一方で、「密告」の紋蔵は完全なるヒールではありません。紋蔵という役はどう捉えて演じましたか?

紋蔵は始まり方がとても難しかったんです。いきなり登場するので誰も彼の素性を知りません。これまでの出来事が台本や画にもう少し描かれていると分かりやすかったのかもしれませんが、そこがなかったので、彼がどのように親に育てられ、どう生きてきたのかという過去の細かい部分は、監督と何度も話し合ってすり合わせていきました。

僕の中では、生まれながらに裕福な暮らしではなく、満足に食事もできず、母親が苦労しているのを見て、助けたい一心で最初は悪事に手を染めてしまったと解釈しています。でも、一度そういうものに手を出してしまうとなかなか戻れない。生きるためにやったことが、いつしか自分の日常になってしまった。そこから後戻りができなくなり、母親が見ていられなくなって“密告”をしてしまったのかなと。そういった彼が辿ったであろう人生については監督とはたくさん話をしましたね。

ーーその上で、紋蔵という役を生きてみて何か感じたことはありましたか?

彼に対しては自分が「こうしないと生きられないんだ」というような、ある種の救いの心を持ってしまうと、狂気や必死に生きている部分が少し濁ってしまう気がしました。だからこそ、「これをしないといけないんだ」という自分の中での使命感を強く持とうとしていました。本当は自分でも悪いことだと分かっていたのかもしれませんが、「そうしないと生きていけないから」と思うことで、そうした弱さがどんどん消えていったような気がしますね。

■「お芝居に集中しやすい環境でした」

ーー改めて「鬼平犯科帳」ならではの魅力や、愛される理由はどこにあると感じましたか?

シリーズが続いている現場特有の、圧倒的なアットホーム感ですね。どの部署もルールや進め方が分かっている上で、役者とスタッフのコンビネーションが確立されているのは、撮影において非常に重要です。役も立体的になり深みも増していくので、シリーズが第8弾、第9弾と続くこの現場は、レギュラーの方々にとってはとてもやりやすい環境なのだろうなと思います。

僕は今回初参加でヒール役というアウェイの立場でしたが、すでに皆さんの関係が築き上げられていたおかげで、僕はそこにスッと入っていくだけで、お芝居に集中しやすい環境でした。現場のスタッフの方々を含めた皆さんに助けられながら一緒に作っていった感覚があります。

ーー時代劇と現代劇、役者として現場に立つ上での違いは感じますか?

現場の雰囲気に関しては、東京と京都の違いは感じました。京都での撮影はセットも本当に昔ながらの街並みを再現した場所なので、自分がその時代にいるかのような錯覚に陥ります。そこにスッと入っていっただけなので、その分あまり難しさは感じませんでした。

あとは、スペシャリストの方々の集団という感じが強いので、撮影の進行具合がとても早かったです。撮影部や照明部など、それぞれのプロフェッショナルが集っているのでセッティングを含めて進むのが早いですし、感覚的には現代劇の2倍ぐらいのスピード感でした。衣装も、東京だと自分で着付けないといけない部分がありますが、京都では「普通はやってくれないよ」と言いながらも、職人技を持ったスタッフの方々が素早く全部やってくださるんです。それは僕が甘えているだけかもしれませんが(笑)。

■「喜びは、現代劇に比べてプラス1、2ぐらい大きくついてくる」

ーー駒木根さんが思う、現代劇にはない時代劇の面白さとは何でしょうか?

“知らない世界”だという部分が大きいですね。どうあがいても当時を直接知ることはできませんが、できるだけリアルに作り上げる映像の世界の中で嘘偽りなく生きることができれば、模擬的であってもその時代を生きたことになると思うんです。どう一生懸命生きるかは自分次第ですが、やり切った後に皆さんに「良かったよ」と言ってもらえたときの喜びは、現代劇に比べてプラス1、2ぐらい大きくついてくるのかなと感じます。

僕自身、小さい頃から祖母と一緒に時代劇を観てきましたが、やはり男たちが斬り合っているチャンバラに憧れますし、熱さがビシビシ伝わってくるのが面白いですよね。

ーー最後に、本作はまず7月に劇場公開が控えています。この作品を劇場で観る意義を教えてください。

殺陣のシーンも多いですし、僕自身も個人的に映画館で観たいと思っていたので、それが実現してとてもうれしいです。テレビとの違いはやはりスクリーンならではの迫力ですし、映画館の良さは周りのさまざまな情報を遮断できるところだと思います。この作品に100%集中できる空間で、ぜひ堪能してほしいなと。僕が出演した作品はぜひとも集中して観てほしいです!(笑)

取材・構成・文=戸塚安友奈



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