【写真】長野・安曇野を舞台にした医療ドラマに出演する福本莉子
福本莉子が主演を務めるプレミアムドラマ「勿忘草の咲く町で ~安曇野診療記~」(毎週日曜夜10:00-10:45、NHK BS※NHK BSP4Kは7月26日(日)スタート)が放送中。本作は、現役医師の小説家・夏川草介氏による同名小説が原作。長野・安曇野を舞台に、看護師と医師が「延命か看取りか」という究極の判断を迫られながらも患者一人一人と真剣に向き合う姿を描く医療ヒューマンドラマ。
福本が演じる月岡美琴は、生まれも育ちも松本で、安曇野の地域医療を支える病院で働き始めて3年目になる看護師。足腰が強く、働き者で自分にできることをひたむきに積み重ねていく前向きな性格。また、美琴と同じ病院に勤務する、花を愛する少し不器用な研修医・桂正太郎役で菅生新樹が出演する。
このたび、WEBザテレビジョンでは主演の福本にインタビューを実施。初めて看護師役に挑戦したという福本に、役作りで意識したことや作品を通して学んだこと、長野での思い出などを語ってもらった。
■役の魅力は「明るさの中に強さがある」
――本作は重いテーマと向き合う場面も多かったと思います。主演が決まったときの率直なお気持ちを教えてください。
いつか医療作品に携わりたいと思っていたので、今回初めて看護師役を演じられることがとてもうれしかったですし、お仕事ドラマにもずっと挑戦したかったので、その意味でも大変光栄でした。この作品は、一般的な医療ドラマのように患者さんが元気になって退院していく物語ではなく、“どう死に向かっていくか”をテーマにした作品でした。これまで私が見てきた医療ドラマとはまた違うテーマでしたので、映像としてどう描いていくのだろう?という思いはありました。また、台本のト書きに長野の安曇野の美しい風景描写がたくさん書かれていて、実際に長野で撮影すると聞いていたので、どんな景色が見られるのか撮影が始まる前からとてもワクワクしました。
――演じるキャラクターの魅力を教えてください。
私が演じた月岡美琴は、生まれも育ちも松本で、看護師としては3年目になります。彼女は明朗快活ですごく明るいですが自分の芯をしっかり持っていて。病院という大きな組織に不満がある中でも、自分の意見をしっかりと伝えられるような強さがある女性です。明るさの中に強さがあるというのが彼女の魅力だと思います。
■初めての看護師役で感じた一連の動作とせりふの難しさ
――役作りで苦労した点や工夫した点があれば教えてください。
今回、初めての看護師役でしたので、出演者の皆さんと実際の病院へ伺い、看護師さんたちが普段どのような仕事をされているのか見学させていただきました。質問もたくさんさせていただき、その中で日々のルーティンなどを教えていただきました。学んだことを想像しながら役作りを進めていきましたし、点滴交換などの細かな動きについては、現場に監修として来てくださっている看護師さんや医師の方にそのつど確認しながら覚えていきました。現場で一つ一つ身に染み込ませていくような感覚でした。
――看護師としての所作も学ばれたんですね。
はい、学びました。最初に覚えたのは手袋の外し方でした。普通に外すのではなく、まず片方の外側をつかんで外し、その後もう片方は内側から手を入れて外すんです。その後に消毒をする。そういう一連の流れが決まっていて、それを最初に練習しました。看護師さんは自然にやっていますが、私は身についていなかったので難しかったです。頑張って覚えました。
――医療ドラマならではの難しさもありましたか?
ありました。点滴交換をして、その後には手袋を取って消毒をしてという動きがあるので、その動作をしながらせりふを言うのはすごく難しかったです。でも、慣れてくると本当に自然にできるようになりました。
■安曇野の風景がくれた温かさ「大自然にすごく助けられた」
――美琴を演じるうえで、「延命か看取りか」というテーマにはどのようにアプローチしましたか?
台本に書かれていない日常的な声かけなどについては、現場についてくださっている看護指導の方に、「こういう時、実際はどう声をかけるんですか?」と質問をして教えていただきました。そして、普段から自然に言っているように演じることを意識しました。また、あまり暗くなりすぎないことも意識していました。新人看護師が死を目のあたりにして悩むシーンもありますが、美琴は看護師3年目です。もちろん死に慣れることはありませんし悲しいことですが、それを表に出しすぎず、将来的には主任になっていく人物でもあるので芯の強さを大切にしていました。
――実際に長野へ行ってみていかがでしたか?
空気が本当にきれいでした!夜になると星も見えて、それだけで心がホッとして、大自然にすごく助けられました。また、ふと見上げると太陽の周りに円形の虹ができていたり、雲の切れ間から差し込んだ光がスポットライトのように畑を照らしていたりして。東京ではなかなか見られない景色なので、「きれい!」と思いながら、たくさん写真を撮りました。
――安曇野の自然は、美琴の感情づくりにも影響しましたか?
第1話の冒頭に、美琴が自転車で通勤しながら出会う人に「おはようございます」と元気にあいさつするシーンがあるのですが、美琴の明るい性格が大自然の中だとさらに映える部分があったと思います。今回の舞台になっている病院は地域密着型の病院です。大きな大学病院に比べたら患者さんとの距離感も近くて、そうした温かい空気感を長野の風景が後押ししてくれていたように感じました。自然そのものがみんなを包みこんでくれるような感覚があり、とても助けられました。
■初共演の菅生新樹は「本当に明るくてフレンドリー」
――菅生さんとは初共演とのことですが、菅生さんの印象はいかがですか?
実は2人とも大阪出身で地元も近かったので、最初はその話で盛り上がりました。菅生さんは現場でも本当に明るくて誰に対してもフレンドリーで、本当に楽しそうに現場にいて、スタッフさんともたくさんお話をされていて、すごく自由な方という印象でした。現場を明るくしてくださいますし、人とのコミュニケーションがとても上手な方だと思います。正太郎という役はそこまで人付き合いが得意なタイプではないかもしれませんが、その根底にある優しさは菅生さんご本人の魅力と重なっていたと思います。まっすぐな人柄がすごく素敵だなと感じました。
――菅生さんとはどんなお話をされましたか?
昨日は何を食べましたか?とか基本的にご飯の話が多かったです(笑)。
――劇中、2人の空気感については何か相談されたりしましたか?
美琴と正太郎が廊下で初めて出会うシーンがクランクインの日の撮影だったので、本当に初対面の空気感がそのまま映っていたと思います。後半になるにつれて2人の関係性は深まっていくので、その部分は監督と相談しながら段階的に作っていきました。
■撮影の合間に長野を堪能「スーパーマーケットが本当に楽しくて」
――撮影の合間はどう過ごされていましたか?
撮影中はそこまで空き時間が多くなかったのですが、長野では早く終わった日にマネージャーさんたちとおそばを食べに行ったりしました。観光はほとんどできなかったのですが、長野県で展開しているスーパーマーケットチェーンが本当に楽しくて。オリジナルの商品を見るのがすごく好きで、ジャムをたくさん買ったり、フルーツを買っておやつにしたり、何回行ったか分からないくらい通いました(笑)。
あと、道の駅にも寄りました!わさびを買って帰り、おそばと一緒に食べました。野菜や乳製品もすごくおいしかったのでたくさん買いました。
――撮影中の印象的なエピソードを教えてください。
正太郎と2人でお花見に行くシーンや、(土村芳演じる)大滝主任と(田辺桃子演じる)サワさんと一緒に中華料理店で食事をするシーンは、病院以外でのほっこりするシーンだったので、印象に残っています。病院を離れた場所だからこそできる会話もたくさんありました。中華料理店での撮影は、実際に料理もとてもおいしかったですし、撮影後にそのお店で昼食をいただくこともありました。とてもアットホームな空気感でした。
――中華料理店のシーンは見どころの一つでもありますよね。
看護師チームの雰囲気は誰も肩肘張っていなくて本当に自然体で、主任役の土村さんが少し天然というか、ちょっと抜けていて(笑)。先輩ですが思わずツッコミたくなるような方で、私と田辺さんが和ませてもらうことも多かったです。
3人の中華料理屋さんのシーンがけっこうあるのですが、そこでは合間にみんなで「おいしい!おいしい!」と言いながらご飯を食べていました。あのシーンは看護師3人がホッと一息つける場所で、制服を着ている時とは違うそれぞれの個性が見える場所でもあります。私服姿も見られますし、病院では話せない話も出てくるので見どころの一つだと思います。
■「関西の友だちと話すときは関西弁になります」
――福本さんはプライベートで女子会などはされますか?
中学、高校時代の友だちとは今でも仲がよく、大阪に帰ることも多いので、集まって近況報告をしたりしています。
――福本さんに関西弁の印象があまりないのですが、普段は関西弁が出ることはありますか?
印象ないとよく言われます(笑)。仕事中はほとんど出ませんが、関西の友だちと話すときは関西弁になります。お芝居では標準語が多いので、イントネーションが西寄りにならないように普段から気をつけています。
■作品を通じて考えた自分にできること「人生会議」
――循環器内科指導医・谷崎譲治役として内藤剛志さん、消化器内科指導医・三島清一役として吹越満さんが出演されていますが、先輩方とのやり取りの中で学んだことがあれば教えてください。
私は正太郎ほど先生方とのシーンは多くありませんでしたが、会議のシーンなどでご一緒する機会がありました。やはり存在感が圧倒的でした。当然のことかもしれませんが、その場にいるだけで説得力があるんです。今回の作品は医療用語も多く、長いせりふもたくさんありますが、自然に聞こえる。長い説明をしているはずなのに、全く長く感じさせないんです。まっすぐな言葉として胸に入ってくる自然なお芝居は本当に勉強になりました。
――役として患者さんと向き合う中で、福本さん自身が得たものや感じたことはありましたか?
作品の中で「梓川病院では元気に退院していく患者さんと同じくらい、亡くなってしまう患者さんもいる」というせりふがあります。それくらい、この病院では“死”が日常の中にあるんです。私は普段、そういう環境からは少し離れた場所にいます。ですが、死というものは誰にも必ず訪れるものですし、自分にも、家族にも必ず起こることです。だからこそ、「もし自分だったらどうだろう」「もし家族だったらどうだろう」ということを何度も考えました。
劇中では「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」といういわゆる“人生会議”が描かれていますが、そのシーンを演じた時に「私たちにできることはまずこれなのかもしれない」と思いました。もし家族が意思疎通できなくなったらどうするのか。その前に元気なうちから将来について話し合っておくことは、誰にでもできることだと思います。この作品はそうしたことを考えるきっかけになりました。
――作品を通じて学んだことを教えてください。
今作は、90代に近い俳優の方ともご一緒する機会があり、本当に幅広い世代の方々と共演させていただきました。その中で強く感じたのは、“俳優という仕事は何歳になっても続けられるんだ”ということでした。皆さんからたくさんのパワーをいただきましたし、「頑張ってね」「これからも続けてね」という言葉もいただきました。そういう言葉にとても励まされましたし、コミュニケーションの大切さや、何歳になっても仕事への情熱を持ち続けることの素晴らしさを学んだ作品でした。
――90歳近くまで俳優を続けているかな?など、今後の展望は見えましたか?
90歳までは大変だなと思いますが、元気なうちはやっていたいなと思います。
■「自分自身や家族の将来について考えるきっかけになればうれしい」
――タイトルに「勿忘草」とあるように、花は今作の重要な存在だと思います。作品の中の花の役割、また福本さんにとって花がどのような存在か教えてください。
劇中にたくさんのお花が登場します。季節ごとに違うお花が出てきますし、患者さんそれぞれに思い入れのあるお花も登場し、毎回とても素敵なお花ばかりでした。医療の中にお花があることはすごく癒やしになっていましたし、病院にお花があるだけで空間が華やかになります。私自身も普段、お散歩をしている時に道端のお花を観察するのが好きで、そういうふうに季節のお花に触れる時間はとても心が癒やされる時間だと思っています。
――「高齢化」や「緩和ケア」など重いテーマを扱っていますが、視聴者にどのようなことが伝わればいいなと考えていますか?
この作品はメリハリがとてもはっきりしています。患者さんと向き合う場面はしっかりと向き合い、正太郎と出かけるシーンは本当に楽しい時間として描かれていて、長野の素晴らしい風景もあるので、重いテーマを扱っていても、そこまで後ろ向きな気持ちにはならないと思います。
また、患者さんごとに病状も違いますし、家族の形も違います。年齢も違います。だから、「これが正解です」という答えはないと思うんです。ある人は延命治療を望むかもしれないし、ある人は自然に見送りたいと思うかもしれない。それぞれの考え方があって、それぞれの哲学がある。だからこそ、一人一人にとって納得できる形をみんなで探していくことが大切だと思いました。その積み重ねがあるからこそ前向きに未来の医療を考えていける、そんな作品になっているのではないかと思います。
――最後に視聴者へのメッセージをお願いします。
本作は安曇野が舞台で、美しい景色はもちろん、長野の名産品や食べ物もたくさん登場します。名物のシュークリームなども出てきて、本当に長野尽くしの作品になっています。また、終末期医療や高齢者医療がテーマではありますが、決して悲観的な作品ではありません。一人一人と向き合い、対話していくことの大切さを感じられる作品です。この作品が、自分自身や家族の将来について考えるきっかけになればうれしいです。
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