日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。〈もう夫婦じゃない〉男女と子供たちとの〈いまさら家族〉の日常。***
『きれっぱしの愛』
評点:★3.5点(5点満点)
© STILL VIVID, SNOWGLOBE, HOBAB, MANEKI FILMS, FILM I VÄST, ARTE FRANCE CINEMA
小さな営みの集積が「意味」をもたらすフリーヌル・パルマソン監督は、映画と現実を意図的に交錯させることを好む監督で、前作『ゴッドランド』では、19世紀後半のアイスランドにやってきたデンマーク人宣教師の足取りを実際に辿りながら撮影が進められた。
また監督は前作にも本作にも自分の子供たちを出演させているが、それも独自のやり方で映画と人生を交錯させようという試みなのだろう。
本作で印象的なのはさまざまな人間の営み、すなわち漁や植物の採集であるとか、あるいは料理やアート製作の過程などを静的で細かい映像の連続で描くモンタージュだ。
日常の中で埋没してしまいがちな、そういう小さな営みの集積が「意味」をもたらす(こともある)。
本作の中心にあるのは、既に別れているものの日常的に交流のある元・夫婦の関係性だが、時間と手間のかかる「錆」を活用した作品を作るアーティストの元・妻と、底引き網漁でごっそりと大量の魚を収獲する元・夫の対比は明らかだ。
元・夫はまた、元・妻に対する性的な視線もずっと引きずっているが、まさにそのことが元・妻との断絶をさらに深化させることに気づいていない。
ということを『大アマゾンの半魚人』を比喩として描いたところも面白い。
STORY:アイスランドの田舎町。芸術家のアンナは子供たちと愛犬と暮らしている。元夫マグヌスは情を断ち切れず、何かと理由をつけては家を訪ねる。気がつけば、ふたりはまるでまだ家族であるかのような日常を再び送る
監督・脚本:フリーヌル・パルマソン
出演:サーガ・ガルザルスドッティルほか
上映時間:109分
全国公開中
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