“透明なあいつ”はどうやって生まれた?「インビジブルハーフ」注目の特殊メイクアーティスト・快歩のこだわり

「インビジブルハーフ」

“透明なあいつ”はどうやって生まれた?「インビジブルハーフ」注目の特殊メイクアーティスト・快歩のこだわり

7月2日(木) 8:00

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スマホに触れている時だけ見える透明な怪物に狙われた少女の物語を描いた青春ホラー「インビジブルハーフ」(7月31日公開/愛媛先行公開中)。同作は、「1999展」の共同企画や西野七瀬らが出演した短編映画「インフルエンサーゴースト」などで注目を集めた西山将貴による初の長編映画だ。

【動画】「インビジブルハーフ」予告編

同作のストーリーに欠かせないのは“透明なあいつ”――これを造形したのは、業界内外から注目されている若手の特殊メイクアーティスト・快歩。本記事では、快歩と西山監督がこだわりぬいた“透明な怪物”を徹底解説する。

●世界を変える顔にも選ばれた特殊メイクアーティスト・快歩とは?

「インビジブルハーフ」の特殊造形を担当したのは、さまざまな人気アーティストのミュージックビデオで特殊メイクを手掛け、ポップな色使いと見たこともない生き物や妖怪がうごめく、独特な世界観が話題の快歩だ。「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2024」の「世界を変える30歳未満30人」にも選ばれ、浅野忠信が監督した短編映画「男と鳥」でもインパクトのある衣装と特殊メイクを担当。自身の作品の個展も開催するなど、一般的な「特殊メイク」のイメージとは異なる新たな可能性を提示し、いま業界内外から熱く注目されている若手の特殊メイクアーティストだ。

小学生時代から100円ショップの紙粘土でひたすら何かをつくっていた快歩は、父が買ってきた水木しげるの漫画「墓場の鬼太郎」に衝撃を受け、妖怪のようなファンタジーの世界に魅了された。ティム・バートンやヤン・シュバンクマイエルの映画で特殊メイクを知り、高校卒業後、特殊メイクのスクール「Amazing School JUR」で特殊メイク、特殊造形の基礎を学んだ。

卒業後、自身の感性を表現できるよう1人で製作を続けていたところ、「KingGnu」のチームの目に留まり、オファーを受ける。18年11月にリリースされた「It’s a small world」のMVで特殊メイクを手掛けたことをきっかけに、数々のアーティストのMVやライブ、映画などで活躍。特殊メイクを軸にグラフィック、アートディレクション等を 手掛けるようになった。

「インビジブルハーフ」には共同プロデューサーの鈴木龍を通じて参加。快歩はCGの製作段階の映像をみて“これは面白くなりそう”と思い、監督である西山と年齢が近いこともあり、本作への参加を決意。作品のキモとなる“透明なあいつ”に対する西山の想いを快歩はどのように受け止め、形作っていったのだろうか。

●もう一人の主役“透明なあいつ”へのこだわりポイント~コンセプトと顔の造形~

本作のもう一人の主役である“透明なあいつ”を創り出すにあたり、西山監督が目指したのは、透明人間という古典的なイメージをもつ怪物を、現代的な物語の中で成立させることだった。同作の核心部には、“匿名性の恐ろしさ”と、誰かに見られているという“視線”がテーマとして描かれているが、透明な”あいつ”にはその2つが巧みに落とし込まれている。

捨て垢などでよく用いられる、SNSの初期アイコンである人型のシルエットを“匿名性”のモチーフにし、包帯で覆うことで匿名性を強調。さらにその内側に実体を持たない“匿名の怪物”を表現している。もう1つのテーマである”視線”をあえて封じるかのように、怪物の目は針で縫い止められたデザインになっているのだ。

西山監督は快歩にラフコンセプトを渡し、それをもとに”見えない視線の怪物”というコンセプトで、快歩がブラッシュアップしたという。普段はカラフルな色彩と独特なデザインが特徴的な快歩は渡されたラフコンセプトをみて“ミイラ男だ”と思ったとのこと。しかし快歩はミイラ男にみせないために「包帯の下にある “見えない” 存在を強く意識しました。重なりや歪みの中に輪郭とリアリティを仕込みました」と語る。

つまり、包帯の下に透明な人がいることを想像して、このクリーチャーをデザインしたのだ。包帯から浮き出る顔のパーツが強調されていることによって、ないはずの視線を感じ、画面上には見えていないときでも存在感を放ち続ける。またライティングや場面によって、顔が違うようにみえるよう意識した。能面などを参考にしながら、自身の特殊メイクの技術を掛け合わせたデザインとなっている。快歩は「眉毛や瞳があると情報がどんどん増えるから、表現できる幅は増えるが、それが無い分、立体の凹凸をできるだけ意識した」と語っている。

西山監督と快歩は怪物のデザインについて、過度のセッションをかわさず、お互いの信頼関係のもとデザインしていった。快歩は「キャラクターのデザインに自由度を持たせてくれる監督だったからこそ、成立したと思う」と語っており、お互いの感覚を信じて託し合ったからこそ、匿名性と恐怖をまとった唯一無二の怪物が誕生したのだ。

●もう一人の主役“透明なあいつ”へのこだわりポイント~“あいつ”の衣装~

この怪物は衣装もこだわりぬかれている。快歩は古着や汚れている衣装を集め、それをつぎはぎし、エイジングをかけて製作し、ただ汚したわけではなく、使い古した感じを表現したという。

「衣装の細部の質感にこだわり、存在の気配を積み重ねました」

怪物が着ているボロボロの衣装は、包帯で覆われている顔との相性もよく、見えていないときですら存在感を感じとれる。主人公たちが着ている制服の要素も取り入れたというとおり、継ぎだらけの衣装なのに制服のような雰囲気も漂う。この怪物は主人公たちと同じ高校生なのか、はたまた全くの別物なのか…。衣装からも漂う得体の知れない不気味さは、怪物の匿名性に一役買っている要素なのかもしれない。

主人公がスマホに触れている時だけ姿を現し、手を離せばどこにいるか分からない。しかし、確実に近くに存在し、その視線を感じ取ることができる。往年の怪奇映画で活躍した「透明人間」とは違い、日常性を残しながら、不気味でどこか不快さや違和感を感じるデザインとなった。

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インビジブルハーフ

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