【画像】『北斗の拳』が好きすぎる小沼則義が語る、昭和版へのリスペクト
最新の3DCG技術と豪華キャスト陣で令和に蘇った完全新作テレビアニメ『北斗の拳 -FIST OF THE NORTH STAR-』(TOKYO MX・BS11ほかで放送中、Prime Videoで配信中。アニメーション制作:トムス・エンタテインメント/第7スタジオ)。いよいよ最終話となる第14話の放送を目前に控え、その重厚なドラマを牽引しているのが“音”の力だ。今回は、本作のサウンドデザインとキャストディレクションを統括する小沼則義音響監督を直撃。武内駿輔(ケンシロウ役)との10年先を見据えた役作りから、実力派声優陣が本気で挑む“北斗ギャグ”、そして昭和版へのリスペクトを込めたSE(効果音)の秘密まで、熱き音響制作の舞台裏をたっぷりと語ってもらった。
■「後世に残すべき遺産」を令和にリデザインする、音響チームの重圧と覚悟
――令和の完全新作として『北斗の拳』の音響制作がスタートした際、まずはどのような心境でしたか?
小沼正直なところ、最初にオファーを受けた時には「僕より適任がいるんじゃないか?」と迷ったんです。でも、それで断ってしまうには、あまりにも『北斗の拳』が好きすぎて(笑)。とはいえ、やはりプレッシャーは凄まじかったですね。アフレコ初日の朝などは深夜3時に目が覚めてしまって、スタジオに向かうのをためらうほど(笑)。いつも「多くの人の人生の支えになった作品だぞ。覚悟できてるのか?」って自問自答していました。
――小沼さんご自身と『北斗の拳』との出会いはいつ頃だったのでしょうか。
小沼僕は今年44歳なので、年齢的には『ドラゴンボール』や『スラムダンク』の世代なんですけど、友達の家に行くと当たり前のようにコミックスが置いてあったんです。最初は1つの面白いバトル漫画として楽しんでいました。その後、大人になってから遊技機の『北斗の拳』に触れた時に「ちゃんとストーリーを最初から見てみよう」と思い、改めて原作を読み直したんです。そうしたら、人間の「生きる」ということの本質に目を向けた、ハードなヒューマンドラマなんだと気づいて、そこからドハマりしていきました。
――当時のアニメやゲームなど、みんなの心にそれぞれの「正解の音」がある作品です。令和版のサウンドコンセプトはどのように設計されたのでしょうか。
小沼『北斗の拳』は後世に残すべき作品であり、伝統芸能のように受け継いでいかなければならない難しさがあります。全く新しい音にしてしまうと視聴者は違和感を覚えますから。そこで、音響効果の上野励さんには、「昔のイメージへのリスペクトを持ちつつ、現代的にリデザインしてほしい」とお願いしました。上野さんは、昔の6ミリオープンリールテープや古いシンセサイザーまで用意して、当時の効果音がどう作られていたかを研究し、現代のリアリティを持った音に再解釈してくれました。「ザッザッ」というケンシロウの足音や、秘孔を突く音など、非常に真摯に向き合ってくれています。フォーリーアーティスト(映像に合わせ、足音や生活音などの効果音を作る専門家)の渡邊雅文さんの力も大きく、CG特有の情報量にマッチした音作りをしてくださっていますね。
――林ゆうきさんによる劇伴と、ロックな歌モノの融合も最高にカッコいいです!
小沼林さんはエモーショナルで盛り上がる曲を作るのが素晴らしい作家さんです。昔のアニメって、バトルで“勝ち確”の時に主題歌の「愛をとりもどせ!!」が流れるという「型」がありましたよね。なので今回も、第1話でケンシロウが北斗百裂拳を放つ時に流れるメインフレーズを主軸にして、視聴者が「キター!」と思えるような刷り込みを意識しています。全体として、ハードな世界観に合わせた、重たくてゴージャスなサウンドに仕上がったと思います。
■10年先を見据えたケンシロウ役・武内駿輔の抜擢と、二人三脚の役作り
――キャストについてですが、ケンシロウ役に武内駿輔さんを抜擢された理由を教えてください。
小沼じつは、オーディションではすでに技術的に完成されている30代、40代の候補の方もいらっしゃったんです。でも、ケンシロウは絶望から立ち上がり、救世主として覚醒していくキャラクターですよね。それに、もし最後までアニメ化するとなれば今後10年がかりのプロジェクトになるかもしれない。であれば、武内さんの役者としての伸び代を信じて、ケンシロウとともに成長して「無想転生」を体得して欲しいなと(笑)。そんな気持ちで若い武内さんを起用しました。
――芝居の方向性については、武内さんとはどのようなやり取りをされましたか?
小沼当初、武内さんのケンシロウ像は生き生きとしすぎている部分がありました。一方で、我々がイメージしている初期のケンシロウは、もっと絶望していて生気がない。武内さんには、理想のケンシロウ像は時間をかけて作っていこうと話して、チューニングしてもらいました。話数を積み重ねていくうちに、武内さんの発する声が自然とケンシロウだと感じるような、そんな長期的な視点で考えています。武内さんの成長とケンシロウの成長をお互いに重ね合わせながらアフレコを進められたのは、今回の非常に大きい化学反応だと思っています。
■実力派声優陣が本気で挑む“北斗ギャグ”と、血の通った悪役たちの悲哀
――また本作は、悪役たちの断末魔や命乞いの芝居もリアルで素晴らしいですよね。
小沼『北斗の拳』の雑魚といえば、千葉繁さんが築き上げた「ヒャッハー!」の伝統がありますよね(笑)。引き継ぎたいとは思いつつ、若手の新人さんに任せるのは荷が重い。だからこそ、力のある人を呼ぼうと思い、福島潤さんと間宮康弘さんという実力派のお二人に「端役の格じゃないのは分かってるけど、信用できる人にしか頼めないから」とお願いして暴れてもらいました。お二人が「俺は今日こう死のうと思うけど、どう?」と雑魚同士で相談しながら、最高のアドリブを連発してくれています。
――第2話で、斧でやられた敵の「オーノー!」というアドリブ断末魔も話題になりました。
小沼我々は「北斗ギャグ」と呼んでいたんですが、このハードボイルドな世界観で不条理ギャグをやるのって、めちゃくちゃ怖いんですよ。でも、そこはみんなで勇気を持って全力でやろうぜって。悪役みんなで腹を括って演じてくれました。
――定番の「あべし」や「ひでぶ」はどうされたんですか?
小沼これは伝統芸能ですから、一言一句変えずにいこうと決めていました。遊技版などで長くザコを演じられている山崎たくみさんをお呼びして、「あべし」だけを言って帰っていただきました(笑)。北斗の拳の音響チームとして、一度は山崎さんにご挨拶しなくてはいけないなと。
――(笑)。ハート役の茶風林さんや、ジャッカル役の松山鷹志さんの怪演も光っていましたね。
小沼茶風林さんが実に絶妙なラインの芝居をしてくださったことで、以降、現場のキャスト陣のネジが少しずつ外れていきました(笑)。ジャッカル役の松山鷹志さんは、自分の声がどう聞こえるかなんて一切考えず、大汗をかいて本物のゲスを熱演してくれました。今回の敵のキャスティングは、今の声優ファンを意識するというより、本当にいいと思う人を呼ぶという硬派なキャスティングなんです。本当に敵役の皆さんに助けられた作品だなと感謝しています。
■第4話・第5話で決まった“腹の括り”と、さらに激化する今後の展望
――第1クールを終えて、音響チームとして「腹が括れた」と感じた瞬間はどこでしょうか?
小沼お芝居という面では、先ほど話したハートの茶風林さんの存在が大きかったですね。演出という意味では、これは作画も含めての話ですが、第5話のケンシロウとシンのバトルです。二人が飛び蹴りで交錯するシーンで、背景が大爆発するじゃないですか。あれ、どこが爆発しているのかよく分からないんですよね(笑)。視聴者が「んなわけあるか!」ってツッコミたくなる描写を全力でやろうという覚悟がここで決まりましたね。
――では最後に、今後に向けた見どころをお聞かせください。
小沼まずは最終話を思う存分に楽しんでいただきたいです。さらにこの先は、名だたる宿敵たちが続々と登場します。ケンシロウもさらに精神的にタフになり、救世主としての輝きを増していくので、武内さんの芝居の変化にもぜひ期待してください。音響も作画も芝居も、どんどん良くなっていっているなと確信していますので、ぜひ最後まで応援をよろしくお願いします!
――熱いお言葉、ありがとうございました!
◆取材・文=岡本大介
【関連記事】
・
【動画】『北斗の拳 -FIST OF THE NORTH STAR-』PV第1弾
・
【写真】ケンシロウと対峙するマッド軍曹
・
ケンシロウとレイの闘いがついに決着最終話「最後に笑う者」あらすじ&スモールワールズTOKYOコラボ情報公開<北斗の拳>
・
<北斗の拳>中村悠一演じる、美しき復讐者レイの登場に「圧倒的な強者感」と反響
・
<北斗の拳>悪魔の化身・デビルリバース降臨、ジャッカル役・松山鷹志の熱演に反響も