ビル・スカルスガルドが感じとった「デッドマンズ・ワイヤー」と“今”との繋がり【インタビュー】

「デッドマンズ・ワイヤー」7月17日日本公開

ビル・スカルスガルドが感じとった「デッドマンズ・ワイヤー」と“今”との繋がり【インタビュー】

6月25日(木) 17:00

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ガス・バン・サント監督最新作「デッドマンズ・ワイヤー」が7月17日に日本公開される。このほど、主演を務めたビル・スカルスガルドのオフィシャルインタビューを独占入手。同じ作の魅力を余すところなく語り、最後には6月25日に迫ったサッカーW杯・日本VSスウェーデン戦にも触れている。

【「デッドマンズ・ワイヤー」概要】

1977年にアメリカ・インディアナポリスで発生した実際の事件をもとに描いたクライムスリラー。不動産投資会社メリディアン・モーゲージ社に財産をだまし取られたと主張する男トニー(スカルスガルド)は、同社に押し入り、社長の息子で同社役員のディックを人質に取る。トニーは自分と人質の首をショットガンとワイヤーで結びつけ、動けば発砲される仕組みの「デッドマンズ・ワイヤー」を用いて立てこもり、警察も手出しできない状況を作り出す。現場からメディア出演を行うなど異例の行動を続ける中、世論は彼を非難する声と同情する声に分かれていく。膠着状態を打開しようと警察が突入に備える中、ついにトニーと社長が電話で話すことになるが……。

――出演を決めた理由について

「デッドマンズ・ワイヤー」のオファーを受けたのは、いろいろな要素が組み合わさった結果でした。しばらく仕事をしていなくて少し休みを取っていましが、ようやく少し息をつけるようになり自分が何をしたいのかを考えていたところでした。偶然にもその頃、70年代の映画をたくさん観ていて、ジョン・カサベテスの作品やシドニー・ルメットの作品を観ていました。そこにこの作品の話が届いて、「これはまさに自分が探していたものだ」と思いました。テンポが速く、人物を中心に進む作品だったからです。

もちろん脚本を読んでみると、脚本も素晴らしかった。そしてガス・バン・サントと仕事ができる機会でもあったので、「今の自分にとって、これはすべての条件がぴったり合っている」と感じました。だからやりたいと思ったんです。さらに、このキャラクターはとても複雑で、少し怖さを感じる役でもありました。私は役に少し怖さを感じるとき、それはやるべきだという良いサインだと思っています。怖さがあると同時にワクワクしますし、やる気にもつながるからです。そういったことがすべて理由でした。

――役作りついて

実在したトニー・キリシスとは年齢も見た目も自分とは全く異なる人物ですが、まずやったのは実在の彼を調べることでした。実際の彼の映像や音声がたくさん残っていたので、私にとっての主なインスピレーション源になりました。まずは彼の話し方を研究することから始めました。彼はかなり独特な話し方をして、少し奇妙な感じでした。私たちが劇中で言っている台詞の多くは、彼が実際に言った言葉そのものでもありました。ですから、本物の彼の声を聞き、声を探り、彼を研究しました。

それと同時に、その人物の心理を理解しようとしました。実際の事件は大きく報道されたので、彼の心理状態や、その背景にあったかもしれない要因について、精神科医たちが分析している記事もいくつか見つけることができました。その後、最終的にはデイカー(・モンゴメリー)とガス(・バン・サント)と一緒に座って、映画全体のリハーサルを行い、その二人と一緒に作品の形を見つけていきました。

――監督の演出について

彼は指図しすぎないタイプの監督なのは知っていました。というのも、父のステランが「グッド・ウィル・ハンティング旅立ち」で彼と仕事をしていたからです。この話が来たとき、私が「ガス・バン・サントと仕事をすることを考えている」と父に言うと、父はすぐに「やれ、とにかくやれ」と言いました。父は彼と仕事をすることが本当に好きだったし、人としても彼を好きだったのだと思います。父からも、ガスはあまり細かく演出するタイプではなく、まず俳優にやらせて、もう一テイク、さらにもう一テイクと重ね、必要があれば優しくどちらかの方向へ導く、という感じだと聞いていました。実際の現場でもその通りでした。

ガスは私にも、そして他の俳優の演技にも、大きな信頼を置いてくれていると感じました。彼は自分の映画に誰を起用するかについて非常に慎重に選ぶ人だと思います。そのうえで私を信頼してくれていると感じられたことで、私自身も自分を信頼できるようになりました。それは良いことでした。ガスの演出はとても穏やかです。小さな指示はあるかもしれませんが、基本的には「素晴らしい、もう一度やろう、もう一度」といった感じです。今回は多くの場面で何テイクも重ねる時間はありませんでしたが、彼は「撮れた」と分かると、そこで次へ進むんです。何かを無理に押しつけようとはしません。彼はとても好奇心があり、創造的な人だと思いますが、映画を無理やり何かにしようとはしない。むしろ、映画そのものが自分で探っていくのを穏やかに見守っているような感じです。

だからガスの現場には、とてもクリエイティブな空気があります。彼自身はとても落ち着いているのですが、全員で一緒に映画を発見していくような感覚があるんです。それは本当に素晴らしく、かなり特別なことでもあります。特に若い監督は何でもコントロールしようとしがちなので、それにはそれだけ安心感と自信のある監督が必要です。私には、ガスが作品そのものに形を作らせているように感じられました。それは素晴らしいプロセスでした。

――19日間というタイトな撮影について

ケンタッキー州のルイビルで撮影しましたが、現場にいたスタッフ全員がそこにいることを本当に楽しみにしているように感じました。誰もがガス・バン・サントと仕事をすることを楽しみにしていて、この物語を語ることにも興奮していました。だから素晴らしいクルーでしたし、少人数のクルーだと、現場はずっと親密になります。みんなが自分たちのやっていることに興奮し、そこにいることを楽しんでいると感じました。本当に素晴らしいクルーで、現場全体の士気もとても良かったです。それはこの映画で特に印象に残った点だと思います。

そして撮影期間は19日間という短さだったので、かなり慌ただしかったです。カメラのセッティングを待つ時間はほとんどありませんでした。手持ちカメラが2台あって、現場に入るとすぐにシーンに入る、という感じでした。俳優としては、それはとても良かったです。通常は、必要なエネルギーを保つことに多くの時間を費やします。セットアップの合間に1時間半待つこともあり、今やっているシーンに必要な精神状態を維持するのは本当に難しいんです。でも今回は、待ち時間が少なく、とにかく演じる時間が多かった。それがとても楽しかったです。寒かったですね。私たちは幸運にも、大雪の時期にルイビルに入ることになりました。通り一面が6フィートほどの雪で覆われていて、ルイビルではかなり珍しいことだと思います。でもそれが、1977年の実際の事件の記録映像と完璧に合っていました。その時も雪が降った直後だったんです。

そういう意味で、この映画はある種、祝福されていたように感じました。映画の神様が私たちに微笑んでくれていたようでした。私たちにはそれが本当に必要でした。19日間の撮影で、とても早く、とても野心的で、小さなインディペンデント映画でしたから。総じて、本当に素晴らしい経験でした。

――メディアの姿勢や、報道を見た世間の反応は今の世の中で起きていることと通じるものがあるのでは?

これは、社会から取り残された一人の男の物語だと思います。彼には本当にチャンスがなかった。彼は人生を通じて働いてきた人で、少しずつお金を貯め、それをこの物件に投資しました。しかし彼は、システムにだまされたと感じるわけです。より大きな構図、より広いテーマとしては、階級の問題、そして社会が、あなたがどこから来たかによって、あなたに不利にも有利にも働くということだと思います。もちろんそれは残念なことですが、ますます現代にも通じる問題になっています。

そして「小さな人間」が「もうたくさんだ、これ以上は受け入れない」と言い、自分の手で行動を起こすという感覚があります。だからこれは、20年前よりも今の社会にもっと意味のある物語かもしれないと思います。私たちは制度への信頼を失いつつある時代に向かっているように感じますし、人々は不満を抱き、怒っています。生活費は高騰し、金利も高い。

こうしたことは70年代後半にも起きていました。世界では戦争があり、人々に軽視されている、圧迫されている、追い詰められていると感じさせる要因がたくさんあります。そして最終的に、それは怒りになり、怒りは暴力に変わることがあります。実際にそれを目にしています。ルイジ・マンジオーネの件や暗殺未遂、市民の不安定化などが起こっています。ですから、70年代後半と現在の間には、多くの類似点を見出すことができます。

――最後に。いよいよW杯で日本とスウェーデンが対戦しますね。

きっと楽しみな試合になりますね。日本は本当にとても良いチームです。スウェーデン中が日本戦をとても心配してナーバスになっていると思います。日本にもスウェーデンにも幸運を。私は両方を応援しています。

【作品情報】
デッドマンズ・ワイヤー

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