円熟味を放つ80年代の貴重な3公演が今蘇る――昭和の歌姫・美空ひばりの歌声が“不死鳥”のように生き続ける理由

美空ひばりコンサート「'81 歌声はひばりと共に」(新宿コマ劇場)/(C)ひばりプロダクション

円熟味を放つ80年代の貴重な3公演が今蘇る――昭和の歌姫・美空ひばりの歌声が“不死鳥”のように生き続ける理由

6月19日(金) 18:00

美空ひばりコンサート「'81 歌声はひばりと共に」(新宿コマ劇場)
【写真】白×金のヨーロッパ風衣装に身を包むスター・美空ひばり

「歌、それは私の命。歌、それは私の涙。歌、それは私の喜び。歌える心の人生にはあの時の人それぞれの思い出が命果てるとも歌は永遠に生きているのです」ーー。昭和の歌謡界を象徴する歌姫・美空ひばり。彼女の歌は、昭和から平成へと時を超え、令和の今でもまだ愛され続けている。彼女の歌はなぜ“不死鳥”のように生き続けるのか。平成生まれの筆者が、6月21日(日)夜6時30分よりCSホームドラマチャンネルにて放送される特集「不死鳥・美空ひばり 永遠の歌声 コンサートセレクション」を基に、勝手に紐解いていきたい。

まず先に言っておきたいが、筆者は特段音楽に詳しいわけではない。おそらく最も平均に近い音楽の知識量と好きさ具合だろう。だが、そんな筆者ですら“美空ひばり”の名前はもちろん、彼女が歌に愛され歌を愛した歌謡界の神のような存在であることは小学生の頃にはすでに知っていた。つまり、美空ひばりという存在は、音楽の趣味や時代を超えて、私のような普通の平成人間にも当たり前のように届くほどの圧倒的な魅力を持っているのだと、身をもって実感させられる。

■円熟味を放つ1980年代――母の死を乗り越え、節目を刻んだ貴重な3公演

同特集では、美空ひばりが最も円熟味を放った1980年代の貴重な公演・歌唱映像より、81年、83年、86年のコンサート「歌声はひばりと共に」の3公演が3カ月連続でオンエアされる。「歌声はひばりと共に」は、新宿コマ劇場、梅田コマ劇場で毎年開催され、多くのファンから愛されていた伝説のコンサートだ。

まずは81年、美空ひばり芸能生活35周年の年に行われ、母親亡き後、自らを奮い立たせた彼女のパワフルなパフォーマンスが観客を熱狂させたコンサート。次にCS初放送となる 83年、新宿コマ劇場連続出演20周年記念として公演され、演歌からポップスまで完璧に歌いこなした彼女の多面的な魅力が詰め込まれたコンサート。そしてこちらもCS初放送となる86年、デビュー当時のヒット曲から当時の最新ヒット曲「愛燦燦」までが網羅された、美空ひばり芸能生活40年記念コンサートが続く。

■ブレも乱れもない。体の内側から癒やされる唯一無二の“生の歌声”

どのコンサートも、当たり前だが聴き心地が素晴らしく、心が満たされるような幸福と凪を与えてくれる。何と言っても驚いたのは、彼女の体から発せられる、“声”と“音”のバリエーションがあまりに豊かなことだ。艶やかで美しい高音から、男性のような魅惑的な低音まで、あまりに自然に滑らかにその体から紡ぎ出す。もちろん、一切のブレも乱れもない。1時間終始、“精密機械のように完璧だが人間味溢れる”という矛盾があまりに心地良い歌を届けてくれる。

さらに、歌声の“生感”も圧巻としか言いようがない。瑞々しくてツヤッツヤで、伸びやかで優美、逞しくて凛とした…いくら単語を並べても表現できない上質な快のすべてが凝縮されたような唯一無二の声音。スッと心の奥にまで染み込んできて、体の内側からぽわぽわと癒やして、穏やかさと安心感を与えてくれる不思議な魅力がある。

■大ベテランが見せる少女のような瞳と、お茶目なユーモア

そして何より、本人が本当に楽しそうに、幸せそうに目を輝かせて歌うのである。すでにキャリアも完全に構築し、大ベテランであるはずの美空ひばりが、一曲いっ曲を大切に、宝物のように歌い上げていく。その姿だけでも、チープな言葉だが、正直胸がいっぱいになる。歌を愛する彼女から幸福を分け与えてもらえるような、そんな偉大なエネルギーが存在するのだ。

そんな彼女はユーモアも忘れない。歌い終わりでは恒例の「どうも、ありがとうございました。拍手をしてくださったお客様、特にありがとうございました」を茶目っけたっぷりに口にし、続けて「今、拍手をしてくださった方は必ずこのレコードを買っていただけると信じております。ずいぶん売れるようですね、今日は」と流れるようなセールストークで会場を柔らかな笑い声で包み込む。

冒頭もまた、「'81 歌声はひばりと共に」での美空ひばりの言葉である。彼女は「歌、それは私の命。歌、それは私の涙。歌、それは私の喜び」と言ったが、ファンもまた「美空ひばりの歌、それは私の命。美空ひばりの歌、それは私の涙。美空ひばりの歌、それは私の喜び」であったに違いない。環境も時代も超えて、私たちの中にもずっと、美空ひばりの歌は永遠に生きている。

構成・文=戸塚安友奈



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