二宮和也、映画から受け取ったのは「好きなことを信じる」こと“失敗”との出合いも「人生には必要」

「シークレットシネマ」アンバサダーを務める二宮和也

二宮和也、映画から受け取ったのは「好きなことを信じる」こと“失敗”との出合いも「人生には必要」

6月18日(木) 12:00

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映画を愛するアンバサダーが“人生の1本”として選んだ映画を、劇場に足を運んだ観客には当日までタイトルを伏せたまま上映するという新たな試み「シークレットシネマ」が6月25日に開催される。

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劇場での偶然の出会い、大スクリーンで映画を観る楽しさを体験してほしいという思いから発案された「シークレットシネマ」。企画の“肝”とも言えるアンバサダーの任を担うのは二宮和也だ。

日本のみならずハリウッド作品も含め、数々の話題作に出演してきた二宮が“人生の1本”にどんな作品を選んだのか…はイベント当日のお楽しみだが、開催を前に二宮が改めて映画、そして劇場への思いを語ってくれた。(取材・文/黒豆直樹)

●「シークレットシネマ」上映作品はどういう基準で選んだ?

――今回、「シークレットシネマ」のアンバサダーを引き受けることになっての心境を聞かせてください。

映画に携わっている人間であれば断れないだろうなと。すごい企画だなと思いました。

――映画館に足を運んでもらうための企画という点で共鳴する部分も?

そうですね、いろんなデバイスで映画を見られる時代になったからこそ、逆に僕は映画館の価値が出てきたんじゃないかと感じているので、それを良い形で共有できるといいなと思いました。

――二宮さんが選んだ作品がタイトルを伏せたまま上映されることになりますが、この企画のアイディアに関してはどのように感じていますか?

そりゃ、イヤなもんですよ(苦笑)。恥ずかしいじゃないですか。こうやって表に出ている人間として、ちょっとでも偏差値を高く見られたいというか、「センスあるね」みたいなことを言われたいじゃないですか? 「へぇ、あんなエラそうなこと言ってて、そんな感じなんだ?」みたいなことにもなりかねないので…(苦笑)。

――好きな映画から、その人が見えてくる部分もあるかと思いますが、どのような基準で選考を?

どちらかというと万人受けする作品というより、一夜限りで内容がわからない中で一発勝負で見ていただくので、エッジが効いていた方が面白いかなと思い、そういう作品を選ばせていただきました。

単純に僕が自分で見て、面白かったと感じた作品を見てもらいたいというのもありましたし、(面白さに関しては)間違いない作品です。いろいろと考えた末に、真面目にたどり着いた作品ですし、楽しんでいただけたらいいなと思っています。

●映画館で映画を見ることの意義や価値「前後の時間も含めての体験だなと思います」

――先ほど、いまの時代だからこそ「映画館の価値が高まっている」という言葉がありましたが、二宮さんは映画館で映画を見ることの意義や価値をどのように感じていますか?

その時間、空いている人、その作品をちょうど見たい人たちが、同じ場所に集まって一斉に見るって、ある意味で過酷なことだと思うんです。トイレに行きたくても(上映は)止まらないし、飲み物を買いに行こうとしても止まらない、すごく過酷な状況で見るわけですよ。 映画館という場所で、話をしたこともなければ、飲み交わしたり、ご飯を一緒に食べたこともない人間たちが同じタイミングで笑ったり、感動したりする。そういう経験ってなかなかなくて、会ったことない人たちと2時間、同じ方向を見ているってすごく特殊じゃないですか。

ある種の共犯関係というか、「これを見た」という関係性ができて、SNSで「良かった」とか「悪かった」とか共有もできたりする。それは、本当にいいなぁって思います。

「携帯を見ちゃダメですよ」とか「騒いじゃダメですよ」といった、ある程度のルールがあった方が、人間は集中して見られるし、何年か経った後で、その時の状況を思い出したりすることもある。思い出として、経験として、蓄積することができる良い場所なのかなと思いますね。

――作品の内容以上に「誰とどんなシチュエーションで見たか?」ということのほうが思い出として残ることもあるし、映画を見る前後も含めて“体験“として楽しめるという部分もありますね。

そうなんですよ。僕自身も経験ありますけど、公開されてもう何週か経っていて、(劇場も空いていて)落ち着いて見られるだろうと思って行ったら、空いた劇場でなぜか隣に人がいて(笑)、「なんでその席を選んだ?」って気になって映画に集中できなかったり(苦笑)。

そういうことも含めて、おうちで見るのとはまた違う体験ができるんですよね。舞台挨拶や映画祭は、まさにそういう体験ですよね。

仲間や友達と映画に行くというのは、その前後の時間も含めての体験だなと思います。見終わって、映画のことを話したり。

満員の劇場で見るというのも、実は貴重で、人気の作品でもそれなりに空席はあるものだし、満席の回で見られる機会というのは多くはないんですよ。それは、家でひとりで見る、家族で見るというのとはまた違うものだと思いますし、極端な話、「鬼滅の刃」はよく知らないけど、連日満員だと聞いて行っちゃうとか。内容云々というより、空間自体を味わうという経験は人生の中で貴重で楽しいものだと思います。

●二宮和也、映画にまつわる思い出出演作は「観客と一緒に見る」

――二宮さん自身の子どもの頃の映画館体験の思い出をお聞かせください。

小っちゃい頃は、よく行ってましたね。僕が子どもの頃は、まだ指定席ではなかったので、通路の階段とかに座って、子どもたちが「ドラゴンボール」を見るみたいな感じで。

――初めて映画館で見た映画は覚えていますか?

「東映まんがまつり」とかアニメ2本立てとかそういうのだった気がします。親がね、とにかく楽なんですよ(笑)。夏休みとか、涼しい屋内で2時間くらい休めるので。僕らは楽しんでいましたけど、親は隣で寝てたんじゃないかな(笑)。

――ちなみに普段、ご自身が出演する映画を見に行くことはあるんですか?

あります。というか、僕はそこでしかスクリーンで見るタイミングがないということも多いです。あんまり試写会に行くタイプでもないですし、完成披露などのタイミングでも見られなかったりするので。公開されてから、観客として見に行くというのがほとんどです。

――周りに気づかれることはないんですか?

気づかれないですね。そのへんのことは僕はすごいです(笑)。1回も気づかれたことはないです。

――自分が出ている作品を観客と一緒に見るという体験はどうですか?

ある意味でそれが、映画が生まれる瞬間でもあるのかなと思いますし、リアクションとかを共有したいという思いはありますね。

――今回の「シークレットシネマ」というプロジェクトは、若い世代のスタッフが中心となって企画されたものですが、若い人たちの発想、取り組みに刺激を受けるところもありますか?

もうね、“おじさん”になってくると、なかなか自分から動かなくなってくる…(苦笑)。若い人たちに「動いてください」って言われないと、動かない世代になってきたんだなっていうのはありますし、若い世代に頑張っていただかないと、なかなか人々が映画館に行くのが難しい時代が来るのかなと思っていたんですけれども…。とはいえ、さっきも言いましたが、(映画館に人が)戻ってきているという感じはしているんですよね。

――2025年の日本の映画総興行収入は史上最高の2744億5200万円を記録しました。

もちろん、興行収入だけじゃないですけど、そうは言っても、興行収入だけでも取れているので、戻ってきていると言っていいんじゃないかなと思います。

それこそ、山田洋次さんがよく言っているのが「映画というカルチャー、エンターテインメントに関しては、まだ誕生から1世紀しか経っていないんだから、1世紀で文化が根付くはずがないんだ」ということ。これからもずっとインフレし続けて、ずっと上がっていくものだろうと。なおかつ、こんなにいろんな人たちが世代をつないで、文化としてつくっていくもので、下がっていくものはない。これから、どんどんすごいスピードでインフレしていって、いろんなもの、いろんな人が出てくるから、(二宮たちは)頑張んなきゃいけない世代ですねって、よく言われました。

●二宮和也にとって「映画」とは?“失敗”との出合いも「人生には必要だ」

――改めて、二宮さんにとっての「映画」というメディアの価値というものをお聞きできればと思います。

山田さんは「文化」とおっしゃってくださっているけど、「娯楽」ですよね、映画って。あってもなくてもいいものだけど、じゃあどちらを選ぶかと言われたら、ある方を選ぶ。絶対にみんなの中に覚えている作品というのが1本か2本、あるものだと思います。そういう意味で“支え”になるものなんだろうと思います。

先週も今週も来週も、面白い作品が次々と公開されるわけで、本当に世の中にはたくさんの映画があるんです。その中で、自分が見て「つまんないな」と思える作品に出合うことも人生で必要なことだと思っていて(笑)。自分の趣味や方向性を知る上でも大切なことで、どうしてもみなさん“良い出合い”を念頭に置かれていると思うんですけど、そんな良い出合いばかりのはずもなくて、推し活で見に行った作品ですら「なんだこれ?」という出合いがありますからね。お金払っているこっちが気を遣ってしまうような(苦笑)。

でもそれも重要なことで、それこそ仲間内で見て、話が盛り上がるのは案外、そっちの作品だったりするんです。良いものは良いんですよ。でも良くないものは本当に良くない(笑)。そこで得られるものもあるし、確かめておくべきだし、僕の感覚では、みんながそこまで「つまんない」と言ってる作品は配信になると見ないですね(笑)。だから映画館に行くしかない。

映画館でそういう作品を見て「これはどういうこと?」となって、じゃあこの座組で他にどんな作品をつくったんだ? とそこで配信の力を借りて、ひとつ前の作品を見たり、そうやって広がっていったりするんです。

――“タイパ”、“コスパ”の時代と言われ、「失敗したくない」という感覚が強い中で、ある意味で真逆の方向の提案と言えるかもしれません。

そうかもしれません。たしかにタイパもコスパも悪いです。実費を削って…(苦笑)。でも、僕らが若い頃って、それこそポスターに書いてる1行、2行のコピーを信じて見に行くしかなかったんですよね。

――チラシや予告編を見ると、ムチャクチャ面白そうな作品が実際に見ると…みたいな?

そうそう。「おいおい、嘘だろ!」みたいな(笑)。でも、それはお勉強代でもあったし、すごく豊かだったんだなと思います。コスパやタイパを優先していくというのは、実利はあるんだけど、豊かではなくて。でもそれは、昔からそういうもので、単に(コスパやタイパを突き詰めることができる)技術がなかっただけで、その技術があるのが、いまの流れなのかなって。

だから今回、選ばせていただいた作品も、ある意味で、お客さんが「我慢する」瞬間もある作品なのかなと思います。それがないと、単に「良いものを見せられて終わっちゃったな」となっちゃう。そうじゃなくて余白を感じてもらえる作品だと思います。そういうものが大事だと教わった世代なんですよね。

●「映画」から受け取ったことは?「“好きなことを信じる”ということ」

――今回の「シークレットシネマ」を発展させて、もし二宮さんが映画館館長に就任したとしたら、どんな特集上映を実施したいですか? 特定の監督や俳優の特集、「こういう人向け」など、なんでも構いません。映画館を盛り上げる企画があればお願いします。

例えば「30年前の●月●日に公開された映画を見る」とか、企画として無限にできますよね? それはなんか面白いなと思います。

――先ほどからお話を伺っていると“偶然性“みたいなものに面白さを感じてらっしゃるような…。

学校の社会科見学で新聞社に行った時に、自分の誕生日の新聞を見られたりするじゃないですか? 「俺が生まれた日ってこんなことが起きてたんだ!」とか。そこまで大事件やなじみのあるニュースがあるわけじゃないけど、自分の誕生日だから許されるみたいな(笑)。

僕は、いまだに映画が金曜日に公開されることにさえ、慣れない世代なんですけど(笑)、映画を取り巻く環境も常に変わっていますよね。これだけいろんなものが変わっていく中で、変わらない“時間”という括りで縛ってみるのは、面白いかなと思いますね。

――これまで蜷川幸雄さんからクリント・イーストウッドまで、様々な監督と作品を共にしてきましたが、ご自身のキャリアに映画が及ぼした影響についてお聞きできればと思います。

「好きなことを信じる」ということでしょうね。 そうやって信じるということがいかに大変なことなのかを先輩方は実証していると思います。

先ほど、山田さんの「映画は1世紀そこらで衰退する産業じゃないし、文化じゃないんだ」という言葉がありましたけど、クリントもよく言っていたのが「映画が好きだから撮っているんじゃなくて、自分が好きなものを撮っていたら、それが映画になったんだ」って。あの人が(撮影が)早いと言われるゆえんはそこにあって、映画を撮っているんじゃなくて、好きなものを撮っているだけだから、気づいたら終わっちゃうんですよね。「僕はつなぐのが得意だったから、つないでみたら映画になっただけだ」って。

僕はこの言葉、もし自分が監督をやることになったらこれ絶対に言おうと思ってます(笑)。 かっこいいです。それぐらい、好きなものに愚直に向き合って続けていく――。それこそ蜷川さんだって、死ぬまでやっていたし、山田さんもクリントも、絶対にやめるタイミングはどこかであったと思うんですよ。でも、そこでやめなかったのは、別に責任感とかじゃなくて、ただ好きだったんだろうなと思います。儲かったとか、儲からなかったとか、しんどかったとか、そういうのはあんまりなくて、「撮っていいよ」って言われて、それが好きで、撮れていた人生なんだろうなと。そんな簡単なこと――いや、それが実は一番難しいんじゃないかと思います。

それが諸先輩方に教えていただいたことというか、出るのも、つくるのも、見るのもそう「楽しかった」というのを、日々積み重ねていくのが一番大事なのかなと思います。

【「シークレットシネマ」6月25日(木)開催】

日本映画製作者連盟、外国映画輸入配給協会、モーションピクチャー・アソシエーション(MPA)、そして全国興行生活衛生同業組合連合会の4団体で構成される「映画館に行こう!実行委員会」。その主導のもと、映画界の未来を担う若手メンバーが集結し、「一人でも多くの方に、改めて映画館へ足を運んでほしい!」という願いを込めて本プロジェクトが始動。あえて作品を知らずに劇場へ行く「偶然の出会い」を通して、普段あまり映画館へ行く習慣がない方や、常に新しいエンターテインメントを探している方々へ、劇場の大きなスクリーンと特別な空間でしか味わえないワクワクする体験を提案する。当日はアンバサダーが映画への熱い思いを語るトークショーも開催され、その模様は全国の劇場へリアルタイムで生中継される。

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ヘアメイク:金山貴成、スタイリスト:福田春美
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