推し活を発信するはずのSNSが、いつしか“かわいい自分”を競い合う場に……。「ホビ垢」と呼ばれるアカウント文化の裏では、細すぎる体形への執着、整形願望、容姿いじり、そして承認欲求に突き動かされた過酷な自分磨きが渦巻いている。かわいい写真を撮るために服を買い、バイトを掛け持ちし、ときには他人を利用してでも“映え”を手に入れようとする。キラキラした推し活の陰で進行する、若い女性たちの“かわいさ依存”の実態を追った。
SNSで「ホビ垢」と呼ばれる人々が急増
白くて細い体、ツヤツヤの巻き髪、さりげなく写る推しグッズ……。今、SNSで「ホビ垢」と呼ばれる人々が増えている。主に推し活について発信するアカウントだが、投稿内容は趣味の共有よりも“かわいい自分”を演出することに注力しているのが特徴だ。
Xで多くのフォロワーを持つホビ垢の女性が語る。
「ホビ垢はホビーアカウントの略で、推し活について発信するSNSから派生した文化です。推し活とSNSがセットで発展していくにつれて、ライブに行った様子や推しのパネルと一緒に撮影した写真などを載せる人が増えていき、徐々に『推し活をする自分自身を中心に投稿するのもアリ』という雰囲気に変わっていきました。そして、従来の推し活アカウントよりも、かわいい自分自身を前面に出して推し活を楽しむ人のアカウントが『ホビ垢』と呼ばれるようになったんです」
“かわいさ”への異常な執着が渦巻く世界
一見キラキラして見えるホビ垢の世界だが、その内側では“かわいさ”への異常な執着が渦巻いている。
「大部分は楽しく活動していますが、かわいい写真を撮るためだけに人を利用するコが一部いるんです。『かわいい』と有名なアカウントのコをしつこく誘い続けて、納得いく写真が撮れた瞬間にブロック。本当は仲良くする気もないのに友達になりたいかのように話しかけ、かわいい写真が撮れたら即切り捨て。私の友達が実際にそれをやられて、ひどく傷ついていました」
その執着は、自分の体形や見た目への強迫的なこだわりとも深く結びついている。
「骨っぽくカリッとした体形こそが“かわいい”という価値観があって、加工でどうにでもできるはずなのに、それでも本当に痩せることをやめられないコがいる。撮影の日だけ好きなものを食べて、それ以外はほとんど何も食べない。裏垢では毎日のように『整形したい』『もっと痩せないと終わり』という投稿が流れてくる。かわいくなることへの強迫観念が、どんどん膨らんでいく感じがします」
歪んだ執着が他人への攻撃行為に繫がることも
その歪んだ執着は、他人への攻撃行為にも繫がるという。
「界隈内での容姿批判が度を越していると感じる時もあります。嫌いなホビ垢のコに対して、鍵垢で『加工しても脚の歪みは隠せてない』と晒したり、『リアルで見かけたけど全然かわいくなかった』と仲間内で笑いものにしたり。ちょっと顔を出せば『歯列矯正したら?』『整形考えたら?』なんてリプが普通に飛んでくることもたまにあります」
SNSで理想の自分をつくり上げる一方で、現実では思いのほかギリギリの生活を送っている女性も多いそうだ。
「洋服を買ったり、アフタヌーンティーに行ったりなど、かわいい写真を撮るのにはすごくお金がかかります。ホビ垢界隈の人は学生が多いので、大学に通いながらバイトを週5でかけ持ちして、服は一度着たらメルカリで売る。それで2〜3週間に1回、かわいい写真を撮るために奮発するんです。なかには、ホビ垢をやるお金を稼ぐために、夜職で働いているコもいると聞きます」
「フォロワーといいねが増えれば承認欲求が満たされる」
そこまでして手に入れたいものとは何なのか。
「フォロワーといいねが増えれば承認欲求が満たされる。かわいい自分でいられる時間が、現実のつらさを忘れさせてくれる。でも結局、どれだけ加工してどれだけフォロワーが増えても、終わりがない。『もっとかわいくならないと』という強迫観念から抜け出せなくなっているコがいるような気がして、ただの趣味の話じゃないなと感じます」
日常のストレスから解放されるために始めた推し活やホビ垢。しかしその世界は今、増大するルッキズムと承認欲求が絡み合い、一部の女性たちを“かわいさという名の呪縛”で縛り続けている。
※2026年6月16日号より
取材・文/週刊SPA!編集部
【関連記事】
・
「体重は32kgなのに、食費は月100万円超え」YouTube“大食い動画”がきっかけで過食症になった元モデルの告白・
深夜2時の行列には“小学生連れ”の家族も…ボンボンドロップシール異常流行の実態。29歳女性は「仕事にも集中できず、夫も『いい加減にしろ!』と…」・
親に勘当され、会社も辞めて上京…28歳女性がヌードモデルになったワケ「卒アルの撮影でも逃げ回るぐらい写真は苦手でした」・
「寝る前のドカ食い」をやめられない27歳女性。6年間で体重は30kg増加、若くして糖尿病に・
「斜視あるある」がSNSで大反響。「目、どこ向いてんの?」蔑まれたコンプレックスを自ら発信する理由