2月に人気店「神のエステ」が摘発されたのをはじめ、全国で違法メンズエステへの締め付けが厳しくなっている。ところが、都内の高級住宅地・目黒で違法メンエスが増えており、なかには闇民泊で営業する店もあるという。現地を歩き、違法風俗の実態に迫った!
摘発強化の裏で高級住宅地・目黒区に黒い影……
2月、1都4県で営業していたメンズエステ(以降、メンエス)「神のエステ」が風営法違反(禁止地域営業)の容疑で摘発された。メンエスは、“土建”(ユーザー間の隠語。「ド健全店」の意味)なら、特段の許可なく営業できる。だが、性的サービスを提供するには風営法上の届け出が必須なうえ、許可を得ていても禁止地域では営業できない。「神のエステ」はごく普通のマンションの一室で、年間10億円も荒稼ぎしていたという。売り上げを押し上げたのは、過激な性的サービス「裏オプション」だ。
そんな違法メンエスが、東京の高級住宅地・目黒区で増えている。なかには実態は無人管理の民泊だが、旅館業の営業許可を受けた“名ばかりホテル”や、許可さえ得ていない闇民泊で営業する店もあるというのだ。摘発を逃れるため、場所を転々とするのに都合がいいのだろう。メンエスの住所は「○○駅徒歩3分」「目黒区○○2丁目」などとボカされており、予約して初めて、「ルーム」の場所が明かされる。これも摘発対策と見ていい。
住所の情報提供を受けた記者がまず訪れたのは、都内でも屈指の人気エリア・中目黒。駅から徒歩5分ほど、大手デベロッパーが手がけた新築の高級マンションだ。本当にここでメンエスが営業しているのか。だが、店のHPにある「駅チカ」「新築高級マンション」の文言と重なる。予約の電話を入れ、住所を聞き出すとまさにここだった。闇民泊ではなかったが、こんな高級マンションにもメンエスは入り込んでいた。
この物件ほど高級ではないが、中目黒には違法メンエスが入居するマンションが多い。風俗店経営に携わり、業界事情に詳しい千葉礼音氏は、こう明かした。
「メンエスの7割は性風俗店で、大多数は住居用の賃貸マンションを借りてモグリで営業している。もちろん違法ですが、住宅街でも営業できてしまう。近年、風俗は過当競争で、風俗コンサルの指南で競合が激しい繁華街を避けて、あえて住宅街で商売する店も増えてます。さらに中華マネーが都内の不動産を買い漁っており、中国人のマンションオーナーにすれば、メンエスだろうが賃料が入ればいいので黙認している状態。こうしてメンエス営業の“許可物件”が続々と増えているのです」
「騒がないように」店が客に注意する理由
メンエス愛好者ゆえに度を越した営業を懸念し、今回、情報を提供してくれた夜神勃人氏は、実態をこう話す。
「目黒区は閑静で安全な住環境を求めて暮らす人が多いのに、引っ越したマンションにメンズエステが入っていたら、平日休日を問わず、不特定多数が深夜まで出入りする。そんなメンエス店が“施術”を行うルームが、私の知る限りでは、目黒区に少なくとも150室はあります」
住民はたまったものではない。中目黒のメンエスと同じフロアに暮らす30代の主婦は、悲痛な声を上げた。
「住居用賃貸なので店舗営業はできないのに、深夜にBGMらしき音楽や、外国人女性と男性客の話し声が漏れてきて……。小さな子供がいるので何かあったら心配ですが、事を荒立てるのも気が引けて警察には通報してません」
行政の対応はどうか。目黒区議の白川愛氏が答える。
「性的サービスが提供されていたという証拠がなければ、警察は動けない。ファミリー向けマンションの住人から『不特定多数がマンション内に出入りして不安」などの相談も寄せられているが、違法営業であっても問題が顕在化しにくいのが実情です」
メンエス側も予約の電話やSMSで「マンションの前で騒がないように」「インターホンを鳴らさず、そのまま入室してください」「入室時、セラピストと話さないように」などと客に求める店が多い。もちろん、近隣住民への配慮ではなく、通報を恐れているにすぎない。ただ皮肉にも、こうした店側の対応が、より問題を見えにくくしているのも事実だ。
祐天寺は渋谷から電車で6分と好アクセスながら、閑静な住宅街が広がる。メンエス店から聞き出した「ルーム」は、駅から徒歩5分ほどの中層マンションの一室。エントランスには「タバコのポイ捨てや騒音」を日本語、英語、中国語で注意する貼り紙があり、闇民泊の存在を窺わせる。「ルーム」の前で耳をそばだてると、男女の話し声が聞こえた。
闇民泊のエステ嬢は高密着で裏オプを誘う
次に記者が向かったのは、目黒駅から徒歩5分ほどの高級マンションだ。驚くことに、目と鼻の先に交番があるが、ここにもメンエスは侵入していた。さらに歩くこと10分、駅からは徒歩5分圏内の中層マンション。エントランス脇の植え込みの柵に、キーボックスが6つもくくりつけられている。闇民泊と見て間違いないだろう。入手したメンエスの住所とも一致する。
店に予約の電話を入れると、このマンションの部屋番号を告げられる。教えられたとおり、呼び鈴を鳴らさずに入室すると30歳前後と見られるセラピストと対面した。
「前はデリヘルにいたけど、仕事がキツいわりに稼げないから移ったの。エステはデリヘルより客層がいいし、ムリな客なら『そういうお店じゃないから』って言えば断れる(笑)。逆にいいお客さんなら、ある程度のわがままは受け入れますよ」
なぜ、メンエスに流入する女性が増えているのか。前出の千葉氏が説明する。
「他の風俗が稼げなくなったわけではないが、稼いでいるのはSNSで客を取れる女のコ。だから、SNSが苦手なコ、それに『ラクだから』コンカフェやガールズバーで働いていたコや夜職に抵抗のあるコが、健全店と言い張れるエステに鞍替えしている」
一方、闇民泊の彼女の施術は、オイルエステにしては密着度がやけに高い。30分を過ぎた頃には、記者がはいた紙パンツは切られ、彼女の乳房はあらわになっている。そして、こう囁きかけられた。
「どうスッキリしたいの?」
いわゆる「裏オプ」「個人オプション」のオファーだ。丁重に断り、このルームが闇民泊か、それとなく聞いた。
「……わかりません。でも、そういう店もあるみたい。どっちにしてもマンションで営業してるのは一緒。他の部屋には普通の人が住んでるし、騒音とか共有スペースを汚さないように、とにかく気をつけてる」
昨年6月の風営法改正でメンエスの規制が強化され、無許可営業の罰金は最大3億円に引き上げられた。今回、“名ばかりホテル”での営業実態は確認できなかったが、厳罰化がメンエスの地下化を加速させているのかもしれない。今後も注視が必要だ。
風俗業界関係者
千葉礼音氏
店舗経営、コンサルから、広告、求人、Web戦略まで、風俗業界のビジネス事情に精通。近々、自身が関わる風俗店がローンチする
メンズエステ愛好家
夜神勃人氏
都内在住の40代会社員。店舗型、マンション型、出張型とこれまで400店以上のメンエスを訪問。@yorugami_tatanaiで情報発信中
目黒区議会議員
白川愛氏
無所属無党派の改革政策集団・地域政党「自由を守る会」所属。外資系金融機関、ウォルト・ディズニー・ジャパンを経て現職(2期)
取材・撮影/山本和幸取材・文・撮影/齊藤武宏
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