Netflixドラマ『地獄に堕ちるわよ』の大ヒットによって、改めて世間からの注目が集まる占いビジネス。
その華やかな表舞台の裏には、人々の不安を煽り、泥沼の依存へと引きずり込む“黒い噂”が常につきまといます。
元プロ占い師で『占い師ぶっちゃけ話元プロが明かす業界の黒い実態』(清談社Publico刊)の著者である
まねまね氏
に、現代のSNSやAIを悪用したり、違法に情報を入手する“闇落ち占い師”のあくどい手口と、騙されないための対処法について取材しました(前後編/前編はこちら)。
業界にはびこるあまりに黒い実態
ーーまねまねさんが最近見聞きした中で、とくに深刻だと感じた被害ケースはありますか?
まねまね氏:
最近は減りましたが、歩道の端にぽつんと座っているタイプの占い師がいましたよね。
あの路上占い師に数百万規模で詐欺られた、あるお母さんの相談が非常に深刻でした。
その方は、お子さんが大病を患ってしまっていたんです。精神的に限界を迎えていたとき、道に佇む占い師から「あなた、悪い気が出てるね。無料で相談に乗るよ」と声をかけられたそうです。
いつもの冷静な状態なら絶対に引っかからない普通のお母さんなのですが、当時は「とにかく誰でもいいから話を聞いてほしかった」と。
ーーいかにも怪しい誘い文句ですが、藁をも掴む思いだったのですね。
まねまね氏:
実際に占ってもらったら、かなり当たっており、相談者が身近にいないお母さんは感動したそうです。
すっかり心を許したところで、占い師がこう切り出しました。
「私は占い師なので病気は治せない。でも、知り合いのすごい霊媒師さんなら、何とかできるかもしれない」と。
ーー「自分には治せない」と一度引いてみせることで、次に紹介される霊媒師への信頼度を上げさせているのでしょうか。
まねまね氏:
疲れで思考力が著しく落ちていたお母さんは、紹介された霊媒師を信じ込み、息子のために祈祷をお願いしてしまいました。その総額は、確か500万〜600万円にものぼったそうです。
でも当然、息子さんの病気は治りません。おかしいと思っていたら親戚に「それ騙されているんじゃない?」と言われ、ようやく事の重大さに気づいたそうです。
病院や不動産会社にスパイを送り込む占い師
ーーなぜ、深い悩みを抱えている人にピンポイントで声をかけられるのでしょうか?
まねまね氏:
闇深いのですが、宗教や占い団体は不動産や病院にスパイを送り込んでいるんです。
厳密に言うとスパイというより、そこで働いている人にちょっとお金を渡すと、悲しいかな、個人情報をくれちゃうんです。
それで得た情報でターゲットを定め、対象者が通りかかる道に佇んで声をかけるという、あまりに姑息かつ残忍な手法です。
ーー衝撃ですね。スパイを送り込む先に病院が選ばれるのはなんとなく理解できますが、不動産も対象になるのですか。
まねまね氏:
不動産関係は業界柄、人の出入りが激しく、退職者が多いんです。やめる日にピッとUSBで顧客リストを抜いて、名簿屋に1個500円ほどで売る。
今年の1月にも、教員が生徒数十名の個人情報を闇金に売ったと報道されていましたね。学校の先生でもやってしまうくらい、お金をもらえるならと個人情報を受け渡してしまう人がいるのも事実です。
ーー辛い環境に身を置いている方こそ“エセ占い”には用心する必要があるということですね。
現代は“霊感商法戦国時代”に
まねまね氏:
しかも恐ろしいことに、こうした被害は路上占いの時代よりも、今のほうが圧倒的に増えています。
霊感商法戦国時代と言ってもいいかもしれません。
ネットを開けば、あらゆるところにプチ細木数子のような人間がいて、悪さを働いている。それほど身近なところまで占いの被害は溢れているんです。
ーー現代のネット社会では、一体どのようにして被害が拡大しているのでしょうか?
まねまね氏:
近頃はAIの発達により「有名占い師の誰々みたいな文章を作って」と指示したら、鑑定文が数秒でできあがるようになりました。これを、SNSで5000円とか3000円で販売するんですよ。
その後に機密性の高いチャットアプリに誘導して「あなたは悪いものがついている」などと言って今度は50万、100万とお金を取るのが流行っています。
ーーSNSやAIの普及によって、騙す側のハードルが下がっているのですね。
占いをやめられない人たち
ーーまねまねさんの元に訪れる占い被害者の方たちが占いから抜けるまでに、どういった苦労があるのでしょうか?
まねまね氏:
一番多いケースは、奥さんが占いにハマってしまったので説得してほしいという、旦那さんからの相談です。
個人的には、宗教とかカルトでなければ趣味として楽しめばいいと思います。
しかし、気づいたら子どものために貯蓄してた数百万というお金を全部使っていたというようなケースは少なくありません。
ーーそこまでいってしまうと、家族としては一刻も早く目を覚まさせたいですよね。説得するうえで何が一番の壁になるのですか?
まねまね氏:
騙されているとは分かっているけれど、占いがやめられないんです。
たとえば「今月は天中殺だから動いちゃダメだ」「今年は大殺界だから悪いことが起きるんだ」という言葉が、どうしても頭から離れなくなってしまう。他人に何を言われようが、最終的には「自分で自分を洗脳しちゃっている状態」なんです。
こうなってしまうと周囲がいくら正論で説得しようとも、なかなか届かなくなってしまいます。
ーー家族の苦労は計り知れませんね。
まねまね氏:
家族が占いに騙されていると気づくこと自体、難しいケースもあります。被害者の方たちは騙されたことに気づいても「恥ずかしい」という気持ちが強く、誰にも相談しないことが多い。
詐欺師からしてみれば一番ありがたいことですよね。周囲に知られず、孤立したまま依存し続けてくれるわけですから。
あいつらの動きを止めることは無理なので、自分で見抜いて自分で守るしかありません。
占いに騙されないためには「日記」が必要?
ーー私たちが占い沼にハマらないよう、今からできる自己防衛策はあるのでしょうか?
まねまね氏:
いい占い師を探そうとするのではなく、騙されない相談者になってほしいです。占い依存にならないためには「鑑定料は30分〜1時間あたり5000円以内」「不安を煽る占い師からは距離を置く」あたりを気をつけてほしいです。
あとは、内省するクセをつけることですね。
ーー具体的にはどういったことでしょうか?
まねまね氏:
占いにハマってしまう人って、相談相手がいないんですよ。子育てや親の介護の悩みなど、とにかく相談相手がいない。
誰かに話を聞いてほしくて、占いに頼りたくなったら、チラシの裏にでも感情をバーって書き出してみてほしいです。世界で一番自分のことを知っているのは、自分だからです。
ーー自分の手で言葉にすることで、冷静さを取り戻そうということですね。
まねまね氏:
占いに100万以上使っちゃった人に、日記を書くようにアドバイスをしたんです。その方は1年間日記を書き続け、その後、某有名占い師さんの本と見比べたそうです。
その本には、365日分の日ごとの運勢が書かれているのですが、「全然当たってないじゃん!」と、そこでようやく本人が気づいたんです。
ーー自分で検証して自分で気づけたのですね。
占いを賢く使えるように
ーー人々がうまく“内省”できるようになれば、占いは不要になるのでしょうか。
まねまね氏:
占い師は「お客さんの悩み相談を受ける」のが仕事で、それは決して不要ではないと思います。内省だけでは解決できない問題ももちろんある。
ですから、占い師を万能の神様のように崇めるのではなく、ただの「話を聞くのが上手な人」として、エンタメ感覚で適度な距離を保って付き合う。
それこそが相談者にとっても、そして占い師にとっても、一番健全な関係なのだと思います。
ーー当たる・当たらないに一喜一憂して人生の手綱を占い師に渡してしまうのではなく、自分の足で立つためのエンタメとして賢く消費する。それこそが、私たちが悪質な占いから身を守り、自分らしく生きるための最大の防衛策ですね。
<取材・文/松浦さとみ>
【松浦さとみ】
韓国のじめっとしたアングラ情報を嗅ぎ回ることに生きがいを感じるライター。新卒入社した会社を4年で辞め、コロナ禍で唯一国境が開かれていた韓国へ留学し、韓国の魅力に気づく。珍スポットやオタク文化、韓国のリアルを探るのが趣味。ギャルやゴスロリなどのサブカルチャーにも関心があり、日本文化の逆輸入現象は見逃せないテーマのひとつ。X:@bleu_perfume
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