サッカー日本代表に鳴り響く12年前の敗北からの警告 構造的欠陥を「自信」が覆い隠した

photo by web Sportiva

サッカー日本代表に鳴り響く12年前の敗北からの警告 構造的欠陥を「自信」が覆い隠した

6月11日(木) 6:45

提供:
日本代表・史上最強の検証(4)

かつても「史上最強」と言われ、「ワールドカップでの優勝」を標榜していた日本代表があった。当時と現在の日本代表では、何が変わり、何が変わっていないのか。過去のワールドカップの印象的な敗戦から見えてくるものがある。2014年ブラジルワールドカップが示すものとは――。

2014年ブラジルワールドカップの初戦、コートジボワール戦。

「自分たちのサッカー」

本田圭佑や長友佑都は、そんな旗印を掲げてブラジル大会に挑んでいた。当時、アルベルト・ザッケローニ監督が率いた日本代表は、アジアカップで相手をねじ伏せるようなサッカーによって優勝しただけでなく、1年前のコンフェデレーションズカップでは、強力な守備力を誇ったイタリアと点を取り合い、敗れはしたものの意気軒昂だった。

過去の受け身的だった日本代表と決別し、自分たち主体でボールをつなぎ、攻め立てるサッカーへの転換を図っていた。それ自体は、決して悪いことではない。試みとしては正しかった。しかし、チームはその自信を肥大化させていった。

「ワールドカップ優勝」

ザックジャパンでは、一部の選手がそんな大それた野望まで口にするようになった(さすがに世界を知るザッケローニはその文言を口にしなかったが)。

チームの攻撃力は確実に上がっていたが、その実態は、手数をかけすぎており、守備が疎かになる諸刃の剣だったのである。初戦のコートジボワール戦では、その過酷な現実を突きつけられることになった。

ブラジルワールドカップ初戦、コートジボワールに敗れた長友佑都ら日本代表の選手たち photo by JMPA

ブラジルワールドカップ初戦、コートジボワールに敗れた長友佑都ら日本代表の選手たち photo by JMPA



立ち上がりから、プレスがハマらない。ビルドアップにひと苦労し、結局はボールを蹴り出した。収まりどころがなく、球際での勝負で負けるとパスにもずれが出た。「自分たちのサッカー」のかけらもなかった。

しかし劣勢のなか、スローインから本田がわずかな隙をつき、相手をかわして左足で豪快に先制点を蹴り込んでいる。そこは自信家の爆発力が出たと言える。底力があることは間違いなかった。

【ザックジャパンの構造的な欠陥】だがその後も、日本はまともに形を作れず、試合の流れは変わらない。

ザックジャパンの狙いは、高い位置で攻撃を続け、枚数を懸けて押し込み、ショートパスを使って機動力で上回ることだった。端的に言えば、本田、香川真司、長友らを左サイドに集め、攻撃の枚数を増やして崩し、そこから逆サイドに振って岡崎慎司が決める、"左で作って右で仕留める"戦いを推し進めてきた。しかし、親善試合ではいざ知らず、ワールドカップの舞台ではそこまで押し込めなかった。

その結果、「攻撃こそ防御なり」だったはずの守備のほうが崩壊した。後半に入って、62分にディディエ・ドログバを投入されて一気に守備が瓦解した印象だが、実際は彼にはゴールを決められていない。構造的な欠陥が出たのだ。

64分に決められた同点弾は、攻撃に出たところで香川、本田のパス交換が乱れ、自陣でボールを失っている。この瞬間、1トップで左に流れていた大迫勇也は帰陣せず、スペースをカバーできていない。右サイドからのクロスには誰も行けず、プレッシャーをかけられなかった。そしてセンターバックの森重真人は簡単に前に入られ、ヘディングで失点を許した。

攻撃の精度は低く、守備の約束事がなく、守備の強度も足りなかった。複数のミスが連鎖していた。必然の失点だったのである。

66分の逆転弾も、香川は相手からのロングボールにもっと早く反応し、プレスバックしておくべきだった。しかし後手に回ったせいで、またもボールホルダーに制限がかけられていない。また、2列目から入り込む選手を山口蛍が見逃してフリーにしており、ドログバが前線に入った混乱もあっただろうが、単純なクロス一発で仕留められている。

香川は本来的にサイドアタッカーではなく10番タイプのパサーで、自然とトップ下のポジションをとることになった。結果的に、ポジション的な不具合が出るのは避けられなかったと言える。ザッケローニの狙いがパスサッカーに特化したことで、守備に回ったときはそのスペースが狙われていたし、カウンターの攻撃も生まれにくい構造だったのである。

【期待感はバブルに近い】その後、日本はギリシャに0-0と引き分けて生き残った。決勝トーナメント進出のためには勝利が絶対条件のコロンビア戦は、前半17分にPKで先制を許したが、前半アディショナルタイムに岡崎が同点弾を決めて追いついた。しかし、後半はハメス・ロドリゲスなど主力を投入されたことでコテンパンにされて1-4と大敗し、グループリーグ敗退が決まった。威勢がよかった「自分たちのサッカー」は完全に失敗した。

流れとしては、ジーコジャパンに似ているかもしれない。攻撃的な志向は悪くなかったが、大会前に自分たちの力を過信し、強度や守備力で劣り、あっけなく初戦でつまずく。2戦目でスコアレスドローも、3戦目は力の差を見せつけられて大会を去るパターンだ。

このブラジルワールドカップから4年後のロシアワールドカップに向けて、日本代表はセンターバックでは吉田麻也が著しい成長を見せ、酒井宏樹、長友佑都のサイドバックも盤石になった。サイドアタッカーには、ひとりで崩し、サイドにふたもできる乾貴士、原口元気が加わり、手数をかけなくても崩せる形ができた。中盤の長谷部誠が円熟期を迎え、攻守のバランスが取れたチームとなり、ベルギー戦はベスト16で散ったが、それは日本のワールドカップ史上ベストゲームだった......。

今回の森保ジャパンは、率直に言って、ロシアワールドカップの時から、停滞というよりむしろ後退しているように見える。総合的な戦力は向上しているが、チームとしての戦いが場当たり的で再現性に欠けるのだ。そもそも、相手に攻められることを想定したチーム構造だけに、ブラジルやイングランドとの戦いではそれがハマるが、スコットランドやアイスランドには勝ったものの、攻めあぐねている。

事態を改善させるために、もし森保監督が、たとえば長友の明るさや野心のようなものに「奇跡」を期待しているなら、それは無理筋だろう。

ちなみにアイスランド戦の長友の出来は、とても評価できるようなものではなかった。パスミスから危うく失点になりかけていたし、マークすべき相手から離れて真ん中に寄って決定機を招いていた。久保建英が右から中へ鬼のようなカットインでシュートに行くところでは、不必要に相手のバックラインに入って自らシュートブロックしていた。それでもほとんど批判の声が聞こえないのは、一般大衆も長友の「奇跡」を信じているからなのか。

そしてまたも「ワールドカップ優勝」という"夢"を見ている。今回はなんと監督自ら「大和魂」でそれを勝ち取る意志を表明した。期待感はもはやバブルに近い。12年前の敗北の記憶からの警告は鳴り響いている。

日本代表・史上最強の検証(1)『サッカー日本代表は「史上最強」なのかを検証 初めてのワールドカップで挑んだ3バックと何が違うか』はこちら>>

日本代表・史上最強の検証(2)『サッカー日本代表の「史上最強」を検証 大敗した2006年大会からの20年でブラジルとの「差」はどれだけ縮まったのか』はこちら>>

日本代表・史上最強の検証(3)『サッカー日本代表は「史上最強」の戦い方をできるか 結果のみを追求した南アフリカ大会・岡田ジャパンとの類似点』はこちら>>



【関連記事】
【検証3】日本代表は「史上最強」の戦い方をできるか 結果のみを追求した南アフリカ大会・岡田ジャパンとの類似点
【検証2】日本代表の「史上最強」を検証 大敗した2006年大会からの20年でブラジルとの「差」はどれだけ縮まったのか
【検証1】日本代表は「史上最強」なのかを検証 初めてのワールドカップで挑んだ3バックと何が違うか
◆林陵平×岩政大樹が語ったワールドカップ初戦の核心「キーマンは前田大然」でオランダ撃破へ
Sportiva

新着ニュース

合わせて読みたい記事

編集部のおすすめ記事

エンタメ アクセスランキング

急上昇ランキング

注目トピックス

Ameba News

注目の芸能人ブログ