巨人は交流戦で7勝3敗2分(6月8日時点、以下同)と、交流戦優勝も狙える位置にいる。チームを支える若手投手、外国人投手、田中将大や則本昂大らの働きを、篠塚和典氏はどう見ているのか。
また、300号本塁打を達成した坂本勇人や、長嶋茂雄終身名誉監督の一周忌『FOR3VER 6.3~長嶋茂雄~』のオリックス戦で代打逆転満塁ホームランを放った丸佳浩など、ベテラン野手についても聞いた。
2009年の日本シリーズ優勝パレードでファンに手を振る坂本(右)と、コーチ時代の篠塚photo by Sankei Visual
【ドラフト1位、2位のルーキーを高く評価】――開幕前の時点で篠塚さんが高く評価していた、ルーキーの竹丸和幸投手(ドラフト1位)のここまでをどう見ていますか?
篠塚和典(以下:篠塚)期待通りのピッチングじゃないですか。先発ローテーションで回っていて5勝(4敗)を挙げているわけですから。ただ、ルーキーが開幕戦で投げなければいけなかった、というのは少し寂しいですよね。
山﨑伊織が投げられないなか、戸郷翔征(2勝1敗)あたりがローテの柱として引っ張って、そこに竹丸らが続いていく形が理想ですが、なかなかそうもならない。戸郷は最近の試合ではいいピッチングをしているので、これを続けていけるかどうかですね。
――同じくルーキーの田和廉投手(ドラフト2位)は、リリーフとして22試合に登板。デビューから連続無失点の最長記録は16試合で途絶えましたが、防御率1.40とブルペンに欠かせない存在になっています。
篠塚変則右腕がブルペンにいてくれると、リリーフ陣に厚みが出るというか、アクセントになりますし貴重な存在だと思います。変則で150キロ近い真っすぐを投げますし、シンカーやスライダーもあるので右バッターは嫌でしょうね。大勢や船迫大雅、高梨雄平も変則ですし、シュートとスイーパーで左右に揺さぶる田中瑛斗や、左腕の中川皓太もいる。ブルペン陣のバリエーションは豊富です。
【則本、田中の今後に期待】――新外国人のフォレスト・ウィットリー投手は、いかがですか?1勝3敗と負けが先行しています。
篠塚彼の課題はコントロールです。強いボールを持っているのにストライク先行の投球ができず、フォアボールを出してからの失点が目立ちます。150キロ台中盤の真っすぐを投げますし、ナックルカーブもいい。ですが、「ここぞ」という場面でボールが乱れてしまいます。ただ、今の苦しい先発ピッチャー事情を考えると投げてもらわないといけません。これから勝ちを積み重ねていってほしいですね。
同じく新外国人のブライアン・マタはファームにいますが、一軍にいる外国人選手の調子が悪くなったらいつでもいけるようになっておきたいところ。急に投球が乱れる部分を改善し、いいピッチングを見せておかなければいけませんね。
――シーズン序盤で、昨年の勝利数(3勝)に並んだ田中将大投手はどう見ていますか?
篠塚先発ピッチャーが足りないので、彼にもある程度やってもらわないといけない状況です。昨年は苦しみましたが、今年は現段階では及第点じゃないですか。球速は落ちてしまっているので、技術でバッターをかわしていくというか、コントロールを重視して投げていますね。ここまではある程度、スタイルの変化に適応できたピッチングをしてくれています。
あれだけ経験豊富なピッチャーなら、バッターが振ってきそうな時に少し抜いてみたり、雰囲気を察知して投げたりすることができます。そのあたりの部分とキャッチャーのリードが、昨年よりうまく噛み合っているんでしょう。昨年に200勝を達成した試合や、今年の登板で7回1失点と好投した6月4日のオリックス戦も捕手は小林誠司でしたが、岸田行倫、大城卓三らほかのキャッチャー陣にも特長を活かすリードが求められます。
――田中投手は、日米通算200勝を達成したことでプレッシャーから解放された部分もあるでしょうか?
篠塚気持ちの問題は大いにあると思いますよ。かつてのようなピッチングが難しくなっているなかでも世間からの注目度は高く、いろいろなことを考えすぎて精神的な疲労もあったでしょうし、200勝までの"距離"をすごく遠く感じていたと思います。それが昨年の最終盤に達成できたことで、今年に向けて切り替えることができたんでしょうね。「あとは自分のピッチングをしていくだけ」という気持ちになれたと思います。
今年から加入した則本昂大にも同じことが言えます。6試合に先発してなかなか勝ちがつきませんでしたが、6月2日のオリックス戦で移籍後初勝利を挙げました。長く先発をやって、直近2年は抑えにまわり、巨人にきてまた先発に戻るとなれば、長いイニングを投げられる体にしなければいけない。実戦での感覚を取り戻すにも時間がかかったと思うんですが、これからのピッチングは少し楽になるはずです。
【300号を達成した坂本は"やはり何か持っている"】――初勝利といえば、6月3日の長嶋さんの一周忌の試合で、2019年ドラフト1位の堀田賢慎投手が東京ドームでの初勝利、今季の1勝目を挙げましたね。
篠塚彼は井上温大、竹丸和幸と同世代ですし、田中将大や則本昴大ら百戦錬磨のベテランの投球術を学んでいってほしいです。ほかにも西舘勇陽、横川凱ら25歳前後の世代が成長して、チームの戦力になってもらいたいです。
――ベテランでは、篠塚さんは坂本勇人選手の復調に期待していましたね。5月13日の広島戦で通算300号となる逆転サヨナラ3ランを放つなど、限られた出場機会のなかで一定の存在感を見せています。
篠塚300本は立派な数字です。入団当初はホームランを量産するようなバッターではなかったのですが、若いうちにレギュラーになり、4年、5年と経ていく過程で技術が上がっていきました。
まずはヒットになる確率が上がり、シーズンで20本以上を打てるようになった段階で、「ある程度ホームランの数も増えていきそうだな」とは思っていました。それと、300号をサヨナラホームランで達成するというところに、メンタルの強さと、"やはり何か持っている"選手であることを感じます。
――ヒットの延長=ホームランを意識したバッティングに見えますか?
篠塚ケースによって狙う時もあるでしょうが、勇人のバッティングの感覚だと、ヒットの延長がホームランという考え方だと思います。彼の若い頃に打撃コーチとして見ていましたが、ティーバッティングもフリーバッティングも、「崩されながらも左手1本で打つにはどうしたらいいのか」とか、いろいろなことを意識しながら細かく取り組んでいる姿勢が見えました。そうしたひとつひとつの努力が、通算成績につながっているんでしょうね。
――篠塚さんは、今の巨人は世代交代の時期とも話していましたが、試合に勝ちながら若手が成長していくことを考えると、ベテランの働きも欠かせませんね。
篠塚長嶋さんの一周忌の試合で、3点ビハインドの8回裏に代打逆転満塁ホームランを放った丸佳浩ら、底力のあるベテランに最大限の能力を発揮してもらう機会が増えれば、チームは上向いていきます。我々の時代は厳しくて、ベテランになって結果が伴わないとすぐに引退を言い渡されましたし、我慢して使ってもらえませんでした。しかし今は、ベテランの力をいかに活用できるかによって、若手の成長や、チームの浮上にもつながるといった認識が高まっている時代です。
強いチーム、強くなっていくチームは若手・中堅・ベテランがうまくかみ合っています。若手には成長を、ベテランには奮起を期待したいですね。巨人は今の時点で貯金があるわけですし、いい位置につけています。上位を走ると「今の順位を守らなきゃいけない」という受け身の姿勢が出てしまうこともありますが、上位陣は僅差で、精神的には「これからやるぞ」というモチベーションで臨めますから悪くないチーム状態だと思います。
交流戦の出来もその後のペナントレースに影響しますし、いい形で乗りきってほしいです。長嶋さんの一周忌の試合でホームランを打った丸が、ヒーローインタビューで「長嶋さんが打たせてくれた」と言っていましたが、きっと長嶋さんも天国で見てくれています。
【プロフィール】
■篠塚和典(しのづか・かずのり)
1957年7月16日生まれ、東京都出身、千葉県銚子市育ち。1975年のドラフト1位で巨人に入団し、3番などさまざまな打順で活躍。1984年、87年に首位打者を獲得するなど、主力選手としてチームの6度のリーグ優勝、3度の日本一に貢献した。1994年を最後に現役を引退して以降は、巨人で1995年~2003年、2006年~2010年と1軍打撃コーチ、1軍守備・走塁コーチ、総合コーチを歴任。2009年WBCでは打撃コーチとして、日本代表の2連覇に貢献した。
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