【漫画】本編を読む
かつては純粋に憧れていた先輩漫画家を、今や自身のゴーストライターに仕立てた後輩。けれど歯車は狂い、再逆転の時を迎え――。
WEB発のインディーズ漫画は、今やアマチュアのみならずプロの漫画家も数多く発表するようになった。「日本、ここ行け Walker」グランプリを受賞したぴのこ堂(@pinokodoaonoshu)さんがAmazon Kindleの無料電子書籍などで発表している「Black Lily 黒百合短編集」もそうした作品の1つだ。
女性同士の想いをテーマにした“百合”を題材とした「Black Lily 黒百合短編集」。なかでも、師匠とアシスタントの間柄が逆転し、人気漫画家にのし上がった後輩漫画家と、彼女の先輩アシスタント兼ゴーストライターとして働く先輩漫画家との関係を描く「交換」シリーズは、プロとして長いキャリアを持つぴのこ堂さんゆえの説得力あふれる描写と、互いの強い感情が交錯する二人の姿に引き込まれる作品。「漫画家漫画をいつか描いてみたかった」というぴのこ堂さんに、同作の制作秘話を訊いた。
■1番思い入れが強い作品!
「『百合』と『ミステリー』はとても相性がいいのではないか」――そんな発想から、「Black Lily 黒百合短編集」は、5ページ完結でどんでん返しを描く実験的なシリーズとして始まったそうだ。
「瞳」「秘密」に続く3作目では、「最後だから今まで一番描きたいけど描けなかった『漫画家とアシスタント』という関係にしようと思いました」と着想を明かす。当初は短編として完結する予定だったが、「交換」は長編へ発展した。ぴのこ堂さんは「1番思い入れが強かったので、30ページと決めずに自分が納得いくまで描ききってみようと思いました」と振り返る。
自身も漫画家であることから、「自分の分身のようなキャラクターが些細なことで苦しんだり憎しみを抱いたりするところは、若いころの自分と重なって複雑な気持ちになります」と吐露。一方で、「昔の自分を励ましたいという気持ちにもなります」と胸の内を明かしてくれた。
また今作では、登場人物のモノローグを交えた表現にも挑戦したというぴのこ堂さん。これまでは主人公の視点を中心に描いてきたものの、長編となったことで脇役の内面も自然と描かれるようになったそうだ。「人は他人にも自分を投影して、勘違いや思い過ごしであっても自分というものを作っているのかな」と感じているほか、「自分には無理、と思っていた手法でも挑戦してみるといろいろと発見があって楽しいです」と語る。
最後に、「愛が束縛、嫉妬、憎しみに変わりつつも、また愛に戻るような…。そんなラストを描くことができれば感無量です」と作品への思いを寄せた。それぞれの思いが交錯する本作、揺れ動く感情の先に待つ結末に注目したい。
取材協力:ぴのこ堂(@pinokodoaonoshu)
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