ヴィム・ヴェンダース監督が、半世紀前に自ら撮った1本を市場から引き上げると発表した、と米バラエティが報じた。封印の理由は、その作品で映画デビューした女優を、撮影現場で十分に守れなかったことにあるという。
問題の作品は、1975年の西ドイツ映画「まわり道」だ。ヴェンダース監督といえば、カンヌ国際映画祭で最高賞に輝いた「パリ、テキサス」や「ベルリン・天使の詩」、近年は役所広司主演の日本映画「PERFECT DAYS」で世界的に知られる巨匠だが、「まわり道」はそのキャリアの初期に当たる1本だ。そして、のちに「テス」などで知られる女優ナスターシャ・キンスキーにとっては、これが映画デビュー作だった。
ヴェンダース監督が自作を封印するに至ったのは、この映画にキンスキーのトップレスの場面があり、彼女が撮影当時まだ13歳の少女だったからだ。キンスキーは近年、当時の自分が十分に守られなかったとして、ヴェンダース監督に公の場での対応を求め続けてきたという。
ヴェンダース監督は、自身の財団のインスタグラムで公開した声明のなかで、当時の責任を認めている。
「『まわり道』に当時関わった責任者のうち、今も存命なのは私だけだ。ナスターシャ・キンスキーは、あのとき、もっと守られるべきだった。そのことを、私はナスターシャ、君に謝りたい。言い訳も条件も、いっさいなしに」
これに対してキンスキーも、自身のインスタグラムで反応した。長い沈黙を経てようやく届いた謝罪に、複雑な思いをにじませている。
「ヴィム、こんなに長い年月が過ぎて、ようやく今になって、あなたは公の場で口を開いてくれたのですね……」
キンスキーはかつて、ドイツ紙ズートドイチェ・ツァイトゥングのインタビューでも、当時をこう振り返っていた。
「あれは私の初めての映画でした。彼は私の初めての監督で、それなのに、私を守ってはくれなかったのです」
それでも二人は、その後も仕事をともにしてきた。キンスキーはヴェンダース監督の代表作「パリ、テキサス」(1984)で忘れがたいヒロインを演じ、1993年の「時の翼にのって ファラウェイ・ソー・クロース!」にも出演している。
「まわり道」は当面、市場から姿を消すことになる。ヴェンダース監督は、ドイツ映画アカデミーやキンスキー本人を交えた「双方が納得できる解決」を探りたいとしており、作品の今後の扱いはその対話に委ねられることになるという。
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パリ、テキサス
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