自分だけでなく、家族や身近な友人など周りの人にも幸せになってほしい。世の中には、そう考えて実際に手を差し伸べたりサポートしたりしている人も多いですよね。けれど場合によっては、こうした考え方が不幸を招いてしまうかもしれません。
無職の友人たちを「救いたい」と思った
片桐佑真さん(仮名・当時30代後半)は侠気のある性格。中学・高校時代は親に迷惑をかけることも多くヤンチャだった佑真さんでしたが、高校最後の年に出会った先生に影響を受けて何かを極めたいと飲食の道へ進みます。
「大学へは進学せず、修業させてくれる店を探しました。飲食の世界は想像以上につらくて、上下関係に厳しく、苦手な早起きや長時間労働も体にこたえました。手は荒れるし、仕事ができないとバカとかゴミ扱い。まだこんな職場があるのかと思うほどでした」
県外での厳しい修業を経て地元へ戻り、開業した飲食店は大繁盛。おいしくてリーズナブルな店は評判となり、市内で3店舗を経営するまでになりました。そこで佑真さんは、中学時代に仲良くしていて当時仕事に困っていた友人たちに連絡を取ります。
「飲食店で修業してくじけそうになったとき、ボロクソに言いながらも見捨てずにいてくれたオーナーや先輩方には感謝していましたし、自分が成功したら友人も引き上げたいと思っていました。だから今度は自分が友人を救いたいと連絡したんです」
感動の瞬間と順調な日々
いままでは佑真さんや本店の正社員、アルバイトでまわしていた本店以外の2店舗を、無職だった友人2人に任せることにしました。OKしてもらった以上は、とことん任せると決めていた佑真さん。仕入れに必要なお金を月頭にポンと渡すだけで、すべて丸投げ。
「雇った友人と飲みに行ったとき『俺、こんなに人から信用されたの初めて。佑真のためにも頑張るわ』などと言われたときには感動して涙したくらいです。最初のうちは俺や本店の従業員が手伝いに行っていましたが、仕入れ先や雇う人間もそれぞれの店舗に任せました」
あとは申告前に収支だけを依頼している税理士のところへ持って行けばいいと思いつつも、客の入り具合は気になっていた佑真さん。ときどき2人が店長を務める店まで車で行って、こっそり様子を見ることもありました。
「でも無駄な心配だったようで、店の前にはいつも車がいっぱい。お酒も提供する店だったので車以外のお客さんもいると考えると、かなり繁盛していると思いました。そんなとき、本店だけでなく他の2店舗にも足を運んでくれている常連客が久しぶりに来店したんです」
「とんでもない事態」が発覚
オープンからの常連客はいつものようにビールを注文し、佑真さんと楽しく雑談を交わしていました。だいぶ盛り上がったところで、神妙な面持ちで押し黙り、「ずっと言おうかどうしようか迷っていたんだけど……」と切り出しました。
「常連客は、2店舗のうち1店舗が『悲惨なことになっている』と言うんです。突っ込んで聞くと、本店から手伝いに行かなくなったあたりから、だんだんと接客や盛りつけが雑になっていき、メニューにはあるのに提供できないものも増えていったと説明してくれました」
さらには店長の友人と思われる人たちを招いて頻繁にドンチャン騒ぎをしはじめたため、ほかのお客さんたちはどんどん来なくなっていったと言います。家から近くて便利だったが「足が遠のいてしまった」と、悲しい表情を浮かべる常連客の姿を見て佑真さんは焦ります。
想像以上に深刻だった状況と末路
「すぐに問題の店へ行ったところ常連客が教えてくれた通り、店のなかは店長の友人ばかり。駐車場によく停まっていると思っていた車はすべて店長の友人が乗ってきたものでした。だとしたら売り上げはどうなっているのか、ビビリながら調べたら案の定です」
仕入れた食材やアルコールで毎晩のようにドンチャン騒ぎをしていたことが発覚。渡していた毎月のお金をすべて使い果たしていただけでなく、食材やアルコールのツケもすごい金額になっていて、家賃まで滞納していたことが判明します。
「本店ともう1店舗の売り上げで家賃やツケの分はすぐに補填できましたが、よくない噂がまわってしまったのか、それ以降は客足もイマイチ。家族や親戚にボランティアで働いて助けてもらったりもしましたが……最終的には自己破産する羽目になってしまいました。無念です」
失敗の原因は、自分が経営を丸投げしたことにあると佑真さん。誰かに手を差し伸べたり信じたりすることもときには大切ですが、すべてを任せずに適切に介入し、場合によっては厳しい態度や判断を下すことも必要かもしれません。
<文/山内良子>
【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意。
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