LCC化するANA大改革の着地点。反発覚悟の強硬策で乱気流に猛突進?

「SFC会員の選別」「新運賃体系」 「関空からの大規模撤退」…… 過去最高益達成の陰で 顧客離れを危惧する声も!!

LCC化するANA大改革の着地点。反発覚悟の強硬策で乱気流に猛突進?

6月2日(火) 6:40

提供:
  「SFC会員の選別」「新運賃体系」  「関空からの大規模撤退」...... 過去最高益達成の陰で 顧客離れを危惧する声も!!

「SFC会員の選別」「新運賃体系」 「関空からの大規模撤退」...... 過去最高益達成の陰で 顧客離れを危惧する声も!!





ANAの一連の改革が波紋を呼んでいる。過去最高益の追い風に乗り、反発覚悟のフルスロットルで"大改革"へと邁進する「青き翼」が目指す新たな地平とは!?

【グループ全体で進む低コスト化路線】ANAホールディングスが4月末に発表した2026年3月期通期連結決算は、売上高2兆5392億円、当期純利益1690億円と過去最高を記録した。

しかし、好業績の裏で同社が打ち出したのは、会員制度の厳しい見直しだった。

ゴールデンウイークを控えた4月23日、ANA(全日本空輸)は上級会員制度「スーパーフライヤーズカード(SFC)」の改定を発表。これは搭乗に応じて加算されるポイントを一定数ためたマイレージ会員のみが加入できるクレジットカードを保有することで、専用ラウンジの利用や優先チェックインなどの優遇を受けられるサービスだ。

だが、新基準では28年4月から「関連決済額が年間300万円」の条件が加わり、達成度に応じて会員が二分される。未達成の場合、ANAラウンジの無償利用ができなくなるほか、海外提携航空会社での優遇資格「スターアライアンス・ゴールドメンバー」の対象からも外れてしまう。

ライバルのJALが24年から同様の制度を見直した際は既存会員の権利を維持したのに対し、ANAの改定は既存会員にも適用される。この対応差もあり、SFC会員の間には落胆の声が広がっている。

4月からANAの新社長に平澤寿一氏(左)が就任。「世界でのプレゼンスをいっそう高める」として改革を推進

4月からANAの新社長に平澤寿一氏(左)が就任。「世界でのプレゼンスをいっそう高める」として改革を推進





一方、ANAが5月19日搭乗分から導入した国内線の新運賃体系(シンプル、スタンダード、フレックス)についても、疑問の声が上がっていた。

従来の運賃体系は「早く買うほど安い」という仕組みが基本だったが、新体系では価格と手荷物などのサービス内容が連動する仕組みへと再編された。

このうち最安値の運賃(シンプル)が「搭乗24時間前まで座席指定ができない」「無料預け入れ手荷物は23㎏1個まで」という制約を設けたことから、利用者の間では「LCC(格安航空会社)のようだ」との指摘が出た。

同社は3月末、関西国際空港を発着する国内線の主要路線をグループ内LCCのPeachへ移管し、自社運航路線の縮小を進めたばかり。今回の新運賃導入は、路線の枠組みだけでなく、実際のサービス内容についてもグループ全体で低コスト化を進める戦略の一環とみられる。



【羽田-那覇間がJALの約3分の1に】では実際、シンプル運賃の使い勝手はどうなのか。新運賃体系の導入初日、東京・羽田空港から沖縄・那覇空港まで実際に搭乗し、検証した。

まず予約段階で驚いたのが、シンプル運賃の安さ。約1週間前に予約した羽田-那覇間の最安値は1万3230円。これは直前運賃としては異例の安さだ。同日のJALの最安値(3万8278円)と比べても約3分の1と、座席指定や手荷物の制限を考慮しても破格だ。

導入初日、ダイナミックプライシングの影響でANAの羽田-那覇間の運賃は1万3230円という"驚安"に

導入初日、ダイナミックプライシングの影響でANAの羽田-那覇間の運賃は1万3230円という"驚安"に





さて当日、空港で荷物を預ける。現場のスタッフに新運賃体系の初日で混乱はないか聞くと、「シンプル導入の初日で、トラブルも想定してましたが、自分の前の時間帯の担当も含め、預け入れはスムーズ」とのこと。

利用客の間にも新ルールの理解が浸透しているのだろうか。だが、その期待は搭乗ゲートで半分覆される。

ANAの機内に持ち込める手荷物の規定は、運賃にかかわらず「手荷物1個+身の回り品1個(合計10㎏以内)、合計2個まで」とされているが、手荷物を複数抱えた乗客もそのまま通過していく様子が目立った。

このように機内への持ち込みルールが曖昧なままの場合、預け入れ手荷物枠(23㎏2個まで無料)のためにあえて高い上位運賃を選びルールどおりに荷物を預けた利用客が、相対的に損をすることになってしまうだろう。今後、運用は厳格化されるのだろうか。

LCCに比べ、機内の手荷物持ち込みの運用が緩かったANA。今後の厳格化と、それに伴う現場の混乱が予想される

LCCに比べ、機内の手荷物持ち込みの運用が緩かったANA。今後の厳格化と、それに伴う現場の混乱が予想される





この日の機内の搭乗率は、おおむね75%ほど。ただ平日の便で、家族連れが少なかったこともあり、見る限りでは「シンプル利用だったため、親子がバラバラ」という事態は発生していないようだ。

シンプルで購入時に座席指定不可の件について客室乗務員に聞くと、「今日は空席が多く大丈夫でしたが、週末や夏休みの繁忙期はどうなるか......」と、不安が見てとれた。

価格の安さや現在のルールの運用状況を勘案すると、座席指定を重視しないひとり旅などであれば、あえてこの最安運賃を選ぶのもアリだと感じられる初日のフライトだった。

【疑問が残る制度設計】ではなぜANAは、SFC改革と新運賃導入という強硬策に踏み切ったのか。国内外のエアライン事情に詳しいAll About旅行ガイドのシカマアキ氏は次のように分析する。



「そもそもSFCは、飛行機に頻繁に搭乗する利用客向けの会員制度でした。



しかし、コロナ禍でマイルおよびプレミアムポイントの2倍キャンペーンがたびたび行なわれ、さらにはテレビの〝マイル修行企画〟などで広く知られるようになります。そしてJALがひと足先に制度を変更したため、インフルエンサーが『修行するならANA一択』とあおったこともあり、会員が一気に増えました。

結果、空港ラウンジの混雑が顕著になり、上位顧客から不満が出るようになります。さらに、スター・アライアンスゴールドメンバーの資格で海外の提携航空会社のラウンジを利用する会員が急増し、一部の利用状況が提携各社からも問題視されていたようです」

今回、SFC制度が大改定される一因となったANAラウンジ。この日は平日ということもありガラガラだった

今回、SFC制度が大改定される一因となったANAラウンジ。この日は平日ということもありガラガラだった





顧客の選別を決済額で行なう形だが、この施策には課題も残る。

「300万円以上の決済が可能でも、他社カードと比較して『ANAカードで決済するメリットがそこまであるのか』という声は少なくありません。

また、海外出張が多く、会社の規定でエコノミークラスを利用するため、現地でのラウンジ利用をこの資格に頼っていた層は、今後はANAを選ばなくなる可能性もある。

決済額だけでなく、実際の搭乗頻度も含めた制度設計が必要だったように思います」

シンプル運賃については、どう評価する?

「欧米では運賃ごとのサービス分離が一般的で、安価な運賃では上級会員でもラウンジが使えないなど、明確に差異化されています。ANAはそうしたグローバルスタンダードを目指したのでしょう。

ただ、日本では価格によってあからさまにサービスを制限する手法は受け入れられづらい側面もあります。

また、オンラインチェックイン時まで座席指定できない仕様には疑問が残ります。これでは子連れはスタンダード以上を買わざるをえません。

LCCの多くは追加料金を支払えば事前座席指定が可能ですし、ZIPAIRのように子連れ(6歳以下)への座席指定の配慮を行なう会社もある。そのあたりは対応があってもいいところです。

席が離れた乗客への苦情対応を現場が個別に行なうことになれば、定時運航に影響が出る恐れもあります」



機内に規定を超えた手荷物を持ち込むことを実質的に容認すれば、スタンダード以上を選ぶ理由は減るが......。

「当初から持ち込みルールに厳しかったLCCと異なり、これまで緩かった運用を急に厳格化するのは容易ではありません。細かくチェックすれば現場の負担が増え、これも飛行機の遅延につながりかねない。難しい問題です」

【今回の大改革は欧米型への試金石?】不満を抱く顧客の離反は織り込み済みなのだろうか。

「ANAには昔から『取りあえずやってみる』という社風があります。今回のSFC改定も実施まで猶予期間がありますから、利用客の動向次第では見直しや調整が行なわれる可能性もある。

座席指定の仕様も繁忙期のトラブル原因となれば、事前指定のオプション化などの対応がありえます。ともあれ、欧米型のモデルが日本の市場でどこまで定着するかにかかっています」



シンプルの激安運賃は今後も続くのか。

「初日の異例の安さは、残席数に応じて価格が変動するダイナミックプライシングのアルゴリズムが一時的に過激に作動したためと考えられます。

その後はシステム上の補正が入っているようですが、それでも依然として破格の運賃が散見されるのは確か。制約を割り切れる利用者にとって、魅力的な選択肢であることに変わりはありません」

手厚いサービスを期待する層には厳しい改定だが、制限を許容できる利用客にとっては、新運賃が新たな選択肢になることも事実。

今回の全方位にわたる合理化は、欧米型の低コストモデルが日本の消費者に定着するかどうかの試金石と言えそうだ。顧客の離反リスクを抱えながらかじを切ったANAの戦略が、どのように受け入れられていくのか注目される。

*データは5月25日時点の予定です。価格はすべて税込

取材・文・撮影/植村祐介写真/共同通信社

【関連記事】
【写真】SFC制度が大改定される一因となったANAラウンジ
■離島インフラを襲ったJAL"マイル修行僧"問題の深層
■往復ほぼ3万円!不安すぎる「激安中華系航空」タイ・バンコク便搭乗記
■やっぱり夏休みは海外に行きたい!「円高国」狙い撃ち海外旅行!!
■超級インフレをポイント還元で乗り切る「日常生活最強クレカ」活用テクニック
週プレNEWS

生活 新着ニュース

合わせて読みたい記事

編集部のおすすめ記事

エンタメ アクセスランキング

急上昇ランキング

注目トピックス

Ameba News

注目の芸能人ブログ